2 / 3
第一章 聖域の主
愚者達の歩み
しおりを挟む
数多の種族が生きる大陸の中央にある高い山々が連なり、深い森林で囲われている場所こそが聖域と呼ばれる世界の禁足地。
だが長い年月の中で恐怖は薄れ、宝が眠ると言う噂から欲を刺激され行動に出る者が現れ始めた。
もっとも大半の者は周囲の森林に住まう魔物達に追い立てられ生きて帰ることすらできないのだが、中には一定以上の実力を持つ集団も存在した。
「おい!そっちは問題ないな‼」
「問題ないっすよ~こんなところでやられる奴なんていやしませんよ」
「はっはっはっ‼違いないっ」
そして現在進行形で森林の半ばを攻略しているのは20人ほどの男の武装集団だった。
身に付けるのは使い込まれた鎧で武器なども様々、個人の実力も突出して強い者がいる訳ではなかったが連携が秀逸で魔物の群れを相手に無傷で完勝していた。
ただ森林では絶え間なく魔物が襲ってくるので満足に休憩すら取れないためか、疲労がにじみ出ている者が多く居た。
「一旦、休憩するぞ」
リーダーの男が全体に聞こえるように言うと集団は各々で座って何かを食べる者、ただ水を飲むだけで済ませる者など休息をとった。
そんな仲間達の様子を見ながらリーダーの男は周囲の警戒をしながら数人で話し合いをしていた。
「今のところ順調そうだが何か気になることはあったか?」
「特にはないですねぇ」
「同じくなんにも」
「しいて言えば、噂ほどの危険性は感じないんで拍子抜けしたくらいですかねぇ?」
「そりゃちげぇねぇ‼」
「「「「はっはっはっはっはっ!!!!」」」」
ここに来るまでに大した強敵に遭遇することもなく進んで来れていた男達は楽しそうに笑っていた。
しかし1人だけリーダーの男だけは楽しそうに笑いながら、聞いていた噂との違いに強い違和感を感じていた。
(噂だと『誰一人として戻ってきていない』ってことだったはずだがなぁ?ここへ向かった手奴等も俺等以上に強い奴も少なくない、そいつらも帰ってきていないって考えると…これだけで終わらねぇ~ってことだろうな)
そこまで考えて仲間達を見るといまだに楽観的にヘラヘラしている奴等ばかり、と言うかリーダーを除いた全員が慢心している。今回戦った魔物達も個人で戦えば殺されていたのは男たちの方だった。
だというのに『誰も死なずに勝てた』と言うことで根拠のない自信に満ち溢れてしまっていた。
しかも目的地まで半分の距離にしか来れていない現状でだ。これから行く先には、今まで戦っていた魔物は当然としてより強い魔物も居るのは確実なのだ。
そんな緩んだ空気のままだと危険だと判断して強制的に引き締める事にした。
「お前ら、緊張しないのはいいが…緩めろとは言ってねぇぞ?」
「「「「「っ!?」」」」」
短く言葉を放つと同時にリーダーから放たれるプレッシャーによって話し合っていた者達以外、近くで休憩していた者達までもが息を呑み動きを止める。
「わかったか?」
「「「「「は、はい!」」」」」
全員が声をそろえて怯えたように返事をする。
その声に満足したのかリーダーは放っていたプレッシャーを解いて静かに目を閉じ休息を取り始めた。
しばらくすると、緊張状態から解放された男達は静かに息を吐きだし各々急速に戻ったが、先ほどまでのような気の緩みは何処にも存在しなかった。
男達の中には武器の手入れなどをする者も現れたほどだ。
そして休息は20分ほどで終わりとなった。
「よし、行くぞ‼」
「「「「「おう‼」」」」」
休息して体力も回復した男達はリーダーの号令に元気よく返した。
リーダーも満足げに頷くと自分達の進む先には望む財宝があると信じて聖域を目指し奥へと進んだ。後に続く男達も自信に満ち溢れ、それでいて警戒を緩めることなく最良の結果になると信じ先へと進む。
しかし彼等は噂の真偽をちゃんと確認するべきだった。
確かに『誰1人も帰らなかった』とは言われているが『死んだ』とは言われていなかった。だから彼等は無意識に死ぬことはない!と思い込んでいた。
世の中、そんなに甘くないことを知っていながら目の前の甘い夢に浸ってしまった。
ゆえに彼等は自ら地獄へと繋がる場所へと歩み続けるのだった…
だが長い年月の中で恐怖は薄れ、宝が眠ると言う噂から欲を刺激され行動に出る者が現れ始めた。
もっとも大半の者は周囲の森林に住まう魔物達に追い立てられ生きて帰ることすらできないのだが、中には一定以上の実力を持つ集団も存在した。
「おい!そっちは問題ないな‼」
「問題ないっすよ~こんなところでやられる奴なんていやしませんよ」
「はっはっはっ‼違いないっ」
そして現在進行形で森林の半ばを攻略しているのは20人ほどの男の武装集団だった。
身に付けるのは使い込まれた鎧で武器なども様々、個人の実力も突出して強い者がいる訳ではなかったが連携が秀逸で魔物の群れを相手に無傷で完勝していた。
ただ森林では絶え間なく魔物が襲ってくるので満足に休憩すら取れないためか、疲労がにじみ出ている者が多く居た。
「一旦、休憩するぞ」
リーダーの男が全体に聞こえるように言うと集団は各々で座って何かを食べる者、ただ水を飲むだけで済ませる者など休息をとった。
そんな仲間達の様子を見ながらリーダーの男は周囲の警戒をしながら数人で話し合いをしていた。
「今のところ順調そうだが何か気になることはあったか?」
「特にはないですねぇ」
「同じくなんにも」
「しいて言えば、噂ほどの危険性は感じないんで拍子抜けしたくらいですかねぇ?」
「そりゃちげぇねぇ‼」
「「「「はっはっはっはっはっ!!!!」」」」
ここに来るまでに大した強敵に遭遇することもなく進んで来れていた男達は楽しそうに笑っていた。
しかし1人だけリーダーの男だけは楽しそうに笑いながら、聞いていた噂との違いに強い違和感を感じていた。
(噂だと『誰一人として戻ってきていない』ってことだったはずだがなぁ?ここへ向かった手奴等も俺等以上に強い奴も少なくない、そいつらも帰ってきていないって考えると…これだけで終わらねぇ~ってことだろうな)
そこまで考えて仲間達を見るといまだに楽観的にヘラヘラしている奴等ばかり、と言うかリーダーを除いた全員が慢心している。今回戦った魔物達も個人で戦えば殺されていたのは男たちの方だった。
だというのに『誰も死なずに勝てた』と言うことで根拠のない自信に満ち溢れてしまっていた。
しかも目的地まで半分の距離にしか来れていない現状でだ。これから行く先には、今まで戦っていた魔物は当然としてより強い魔物も居るのは確実なのだ。
そんな緩んだ空気のままだと危険だと判断して強制的に引き締める事にした。
「お前ら、緊張しないのはいいが…緩めろとは言ってねぇぞ?」
「「「「「っ!?」」」」」
短く言葉を放つと同時にリーダーから放たれるプレッシャーによって話し合っていた者達以外、近くで休憩していた者達までもが息を呑み動きを止める。
「わかったか?」
「「「「「は、はい!」」」」」
全員が声をそろえて怯えたように返事をする。
その声に満足したのかリーダーは放っていたプレッシャーを解いて静かに目を閉じ休息を取り始めた。
しばらくすると、緊張状態から解放された男達は静かに息を吐きだし各々急速に戻ったが、先ほどまでのような気の緩みは何処にも存在しなかった。
男達の中には武器の手入れなどをする者も現れたほどだ。
そして休息は20分ほどで終わりとなった。
「よし、行くぞ‼」
「「「「「おう‼」」」」」
休息して体力も回復した男達はリーダーの号令に元気よく返した。
リーダーも満足げに頷くと自分達の進む先には望む財宝があると信じて聖域を目指し奥へと進んだ。後に続く男達も自信に満ち溢れ、それでいて警戒を緩めることなく最良の結果になると信じ先へと進む。
しかし彼等は噂の真偽をちゃんと確認するべきだった。
確かに『誰1人も帰らなかった』とは言われているが『死んだ』とは言われていなかった。だから彼等は無意識に死ぬことはない!と思い込んでいた。
世の中、そんなに甘くないことを知っていながら目の前の甘い夢に浸ってしまった。
ゆえに彼等は自ら地獄へと繋がる場所へと歩み続けるのだった…
10
あなたにおすすめの小説
勇者の隣に住んでいただけの村人の話。
カモミール
ファンタジー
とある村に住んでいた英雄にあこがれて勇者を目指すレオという少年がいた。
だが、勇者に選ばれたのはレオの幼馴染である少女ソフィだった。
その事実にレオは打ちのめされ、自堕落な生活を送ることになる。
だがそんなある日、勇者となったソフィが死んだという知らせが届き…?
才能のない村びとである少年が、幼馴染で、好きな人でもあった勇者の少女を救うために勇気を出す物語。
収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。
追放される理由はよく分からなかった。
彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。
結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。
しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。
たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。
ケイトは彼らを失いたくなかった。
勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。
しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。
「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」
これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~
aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」
勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......?
お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
「餌代の無駄」と追放されたテイマー、家族(ペット)が装備に祝福を与えていた。辺境で美少女化する家族とスローライフ
天音ねる(旧:えんとっぷ)
ファンタジー
【祝:男性HOT18位】Sランクパーティ『紅蓮の剣』で、戦闘力のない「生産系テイマー」として雑用をこなす心優しい青年、レイン。
彼の育てる愛らしい魔物たちが、実はパーティの装備に【神の祝福】を与え、その強さの根源となっていることに誰も気づかず、仲間からは「餌代ばかりかかる寄生虫」と蔑まれていた。
「お前はもういらない」
ついに理不尽な追放宣告を受けるレイン。
だが、彼と魔物たちがパーティを去った瞬間、最強だったはずの勇者の聖剣はただの鉄クズに成り果てた。祝福を失った彼らは、格下のモンスターに惨敗を喫する。
――彼らはまだ、自分たちが捨てたものが、どれほど偉大な宝だったのかを知らない。
一方、レインは愛する魔物たち(スライム、ゴブリン、コカトリス、マンドラゴラ)との穏やかな生活を求め、人里離れた辺境の地で新たな暮らしを始める。
生活のためにギルドへ持ち込んだ素材は、実は大陸の歴史を塗り替えるほどの「神話級」のアイテムばかりだった!?
彼の元にはエルフやドワーフが集い、静かな湖畔の廃屋は、いつしか世界が注目する「聖域」へと姿を変えていく。
そして、レインはまだ知らない。
夜な夜な、彼が寝静まった後、愛らしい魔物たちが【美少女】の姿となり、
「れーんは、きょーも優しかったの! だからぽるん、いーっぱいきらきらジェル、あげたんだよー!」
「わ、私、今日もちゃんと硬い石、置けました…! レイン様、これがあれば、きっともう危ない目に遭いませんよね…?」
と、彼を巡って秘密のお茶会を繰り広げていることを。
そして、彼が築く穏やかな理想郷が、やがて大国の巨大な陰謀に巻き込まれていく運命にあることを――。
理不尽に全てを奪われた心優しいテイマーが、健気な“家族”と共に、やがて世界を動かす主となる。
王道追放ざまぁ × 成り上がりスローライフ × 人外ハーモニー!
HOT男性49位(2025年9月3日0時47分)
→37位(2025年9月3日5時59分)→18位(2025年9月5日10時16分)
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる