聖域の主!気が付けば家が聖域と呼ばれていた⁉

ナイム

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第一章 聖域の主

愚者達の歩み

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 数多の種族が生きる大陸の中央にある高い山々が連なり、深い森林で囲われている場所こそが聖域と呼ばれる世界の禁足地。
 だが長い年月の中で恐怖は薄れ、宝が眠ると言う噂から欲を刺激され行動に出る者が現れ始めた。

 もっとも大半の者は周囲の森林に住まう魔物達に追い立てられ生きて帰ることすらできないのだが、中には一定以上の実力を持つ集団も存在した。

「おい!そっちは問題ないな‼」

「問題ないっすよ~こんなところでやられる奴なんていやしませんよ」

「はっはっはっ‼違いないっ」

 そして現在進行形で森林の半ばを攻略しているのは20人ほどの男の武装集団だった。
 身に付けるのは使い込まれた鎧で武器なども様々、個人の実力も突出して強い者がいる訳ではなかったが連携が秀逸で魔物の群れを相手に無傷で完勝していた。
 ただ森林では絶え間なく魔物が襲ってくるので満足に休憩すら取れないためか、疲労がにじみ出ている者が多く居た。

「一旦、休憩するぞ」

 リーダーの男が全体に聞こえるように言うと集団は各々で座って何かを食べる者、ただ水を飲むだけで済ませる者など休息をとった。
 そんな仲間達の様子を見ながらリーダーの男は周囲の警戒をしながら数人で話し合いをしていた。

「今のところ順調そうだが何か気になることはあったか?」

「特にはないですねぇ」

「同じくなんにも」

「しいて言えば、噂ほどの危険性は感じないんで拍子抜けしたくらいですかねぇ?」

「そりゃちげぇねぇ‼」

「「「「はっはっはっはっはっ!!!!」」」」

 ここに来るまでに大した強敵に遭遇することもなく進んで来れていた男達は楽しそうに笑っていた。
 しかし1人だけリーダーの男だけは楽しそうに笑いながら、聞いていた噂との違いに強い違和感を感じていた。

(噂だと『誰一人として戻ってきていない』ってことだったはずだがなぁ?ここへ向かった手奴等も俺等以上に強い奴も少なくない、そいつらも帰ってきていないって考えると…これだけで終わらねぇ~ってことだろうな)

 そこまで考えて仲間達を見るといまだに楽観的にヘラヘラしている奴等ばかり、と言うかリーダーを除いた全員が慢心している。今回戦った魔物達も個人で戦えば殺されていたのは男たちの方だった。
 だというのに『誰も死なずに勝てた』と言うことで根拠のない自信に満ち溢れてしまっていた。
 しかも目的地まで半分の距離にしか来れていない現状でだ。これから行く先には、今まで戦っていた魔物は当然としてより強い魔物も居るのは確実なのだ。

 そんな緩んだ空気のままだと危険だと判断して強制的に引き締める事にした。

「お前ら、緊張しないのはいいが…緩めろとは言ってねぇぞ?」

「「「「「っ!?」」」」」

 短く言葉を放つと同時にリーダーから放たれるプレッシャーによって話し合っていた者達以外、近くで休憩していた者達までもが息を呑み動きを止める。

「わかったか?」


「「「「「は、はい!」」」」」

 全員が声をそろえて怯えたように返事をする。
 その声に満足したのかリーダーは放っていたプレッシャーを解いて静かに目を閉じ休息を取り始めた。
 しばらくすると、緊張状態から解放された男達は静かに息を吐きだし各々急速に戻ったが、先ほどまでのような気の緩みは何処にも存在しなかった。
 男達の中には武器の手入れなどをする者も現れたほどだ。

 そして休息は20分ほどで終わりとなった。

「よし、行くぞ‼」

「「「「「おう‼」」」」」

 休息して体力も回復した男達はリーダーの号令に元気よく返した。
 リーダーも満足げに頷くと自分達の進む先には望む財宝があると信じて聖域を目指し奥へと進んだ。後に続く男達も自信に満ち溢れ、それでいて警戒を緩めることなく最良の結果になると信じ先へと進む。

 しかし彼等は噂の真偽をちゃんと確認するべきだった。
 確かに『誰1人も帰らなかった』とは言われているが『死んだ』とは言われていなかった。だから彼等は無意識に死ぬことはない!と思い込んでいた。
 世の中、そんなに甘くないことを知っていながら目の前の甘い夢に浸ってしまった。
 ゆえに彼等は自ら地獄へと繋がる場所へと歩み続けるのだった…

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