荒野のオオカミと砂漠のキツネ

Haruki

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空飛ぶオオカミ

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オオカミ族はオオカミ族を愛する。 
またキツネ族も同様にキツネ族と恋に落ちる。 

キツネ族とオオカミ族とで国が分裂している今、 
これは当たり前のことであった。 
逆に異族間、すなわち国を挟んでの恋は難しかった。 

…もちろん例外は存在する。 

竜が唸る様な低い音を響かせ、双発の旅客機が滑走路へゆっくりと舞い降りた。 

機体はゆっくりと駐機場まで進んでから停止した。 
ドアが開くと、キツネ族の乗客がぞろぞろとタラップを降りてくる。

溢れんばかりのお客を乗せたバスは、ターミナルの建物の方へ向かって走り去った。 

ここヒラリー空港はキツネ族の国、ヴォルペ共和国の北東部に位置する。 

この旅客機の機長を務めたロバートは、機体内部のチェックを一通り終えると、周りを見渡しながらタラップを降りると、思いっきり伸びをした。 

「ヒラリー空港か…ここに来るのは1ヶ月ぶりだな」 

そして、パスポート関連の色々とゴタゴタした手続きを済ますと、空港施設を後にした。 

ここヒラリーの町はヴォルペ共和国中の会社の工場が立ち並んでおり、国内の工業の中心地と言える。

もっとも空港周辺はホテルや、ビルなどが立ち並んでいるが、 
郊外は機械系の工場で埋め尽くされている。 

ロバートはその郊外へ向かってサンドイッチ片手にぶらぶらと歩いていく
工場からは金属同士の擦れる音が絶え間なく賑やかに響いている。 

ロバートには気になることがあった。 

それはキツネ族とオオカミ族とで国同士の関係がピリついていることだった。 
戦争になるんじゃないかと言う噂は、ロバートは少なからず耳にしていた。 
同じパイロット仲間の間でも噂になっていた。 
現実にならないと良いが… 

それだけが心配であった。 

空港からかなり歩いて、一軒の宿屋に着いた。 
ドアを開けるとリンリンとベルが鳴り、愛想が良い主人が出迎えてくれた。  

「やあ親父さん」  

「おおロバートじゃあないか、1ヶ月ぶりだなぁ……今夜は泊まってくのか?」 

「ええ、明日の昼のチャペル空港行きの便に乗務するので…」  

「そうかそうか…今夜はゆっくり休んでおくと良い」 

「どうも」 

鍵を受け取って2階の部屋へとあがろうとしたロバートを主人が呼び止めた。 

「娘のリサが、ずーっとアンタに会いたがってたんだ、後で話を聞いてやってくれないか?」 

「ああ、分かりました」 

ロバートはそれだけ言うと2階へ上がった。 

鍵を差し込むとドアノブを回し、部屋へと入った。 
嗅ぎ慣れた木特有の香りが漂う、その見慣れた部屋は 
いつも通りきっちりと片付けられている。 

荷物を置いて、大の字になってベッドに寝そべった。 

(今回も長いフライトだった…) 

操縦桿を握っている腕も疲れるが、最も疲れるのが心である。 
集中力を極限まで高める必要があるこの仕事は、精神力の消耗が激しいのだ。
 
遥か遠くの方でドアをノックする音が聞こえた様な気がした。 
 
「ロバート、ロバートなの?? 部屋に入ってもいい?」 

「…ああ、俺だよ……、鍵はかけてないからどうぞ」 

ロバートは、ベッドの上で上半身だけ起こした。 
リサがドアを開けて入ってきた。 

「あ、随分と疲れてる様ね、じゃあ後で出直すわ」 

「すまないな、夕方までゆっくりさせてくれ…」 

「分かったわ、じゃ、またあとでね」 

そう言い終えると、ロバートは再びベッドに横になった。 

ロバートは夢を見た。 

夢の中で、ロバートは旅客機でなく、爆撃機のパイロットだった。 
辺りを見回すと、飛んでいる機体は自身が乗る機体だけであった。 
ふと上を見上げると、上空から敵機の群れが現れ、ロバートの乗る機体へ襲い掛かった。 
爆撃機は炎に包まれた。 

しかし体は動かない、それどころか指一本動かすことができない 

操縦席にも徐々に火の手が迫ってくる。 

足の先から毛皮と肉がじわじわと焼かれていく… 

手足は動かせないだけに、その感触がやけに生々しく感じられた。 

「うあぁあぁぁ…!」 

ロバートは悪夢から覚め、ベッドから跳ね起きた。 
ただの夢だったことを確かめるように、全身を手で触って無事であることを確かめた。 

「なんだ… ただの夢か」 

ふと時計に目をやると、間もなく5時になろうとしていた。 
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