荒野のオオカミと砂漠のキツネ

Haruki

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夕暮れ時に

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ロバートはリサを連れて海岸を訪れた。 

海岸の近くにある海の家へ立ち寄った。 

「ああ、釣り竿を2本を借りたいんだが… あと釣り餌も」 

ロバートがそう言って財布を取り出そうとしたが 

「代金はまけといてやるよ、二人で楽しんできな」 

「えぇぇ?! 店長!?」 

もう一人の店員が驚きのあまり叫んだが、
店主気にしていないようで、快く道具を渡してくれた。

ロバートは道具を受け取ると、リサのほうへ戻った。 
そして岩場に腰を下ろすと、 
リサにも釣竿を渡した。 

「あら、ありがとう」 

それからリサはしばらく黙っていたが、唐突にロバートに話しかけた。 

「ねえロバート、あなたの国と戦争になるって…本当なの?」 

ロバートは黙ったままうつむいた。 

「俺にも分からない、これからどうなるのか…」 

「そうよね…」 

リサは夕日に染まる水面に目を移した。

「ねえ、もし…できるのなら、あなたの国へ行きたい」 

「無茶言うな、ルナ帝国はキツネ族をあまり歓迎してないんだ、今日の便の客だって、全員ルナ帝国から逃げてきたキツネ族さ」 

「もっと平和なら、一緒に暮らすこともできたのかな…」 

「一緒に暮らすか…そうだなぁ、結婚して、家買って、それから…」 

「ふふっ」 

リサが小さく笑った。 

「別に変なことじゃないだろ、一緒に住むってんならこれくらいは考えておくもんだろ??」 

「変ってわけじゃないけど…」 

二人で顔を見合わせて笑い合った。 
戦争ムードで国内は暗い雰囲気だったため、久しく笑っていなかったロバートの笑顔は少しぎこちなかった。 

「やっぱりあなたは昔と変わらないわね」 

そう言ってリサがロバートの肩にもたれかかった。 
ロバートの尻尾がピンと真っ直ぐになる。 

「そ、そうかぁ?」 

「…2年前のあの時のこと覚えてる?」 

「ああ、もちろん覚えてるさ、俺が初めてこの空港に来た時だったな…確か、空港周辺のホテルが全部埋まってて、雨の中ここまで歩いて来たんだっけかな」 

「そうそう、あの時…ずぶ濡れのあなたが急に飛び込んできて、雨の様子を見に行こうとした私と偶然ぶつかって…その時何か運命を感じたのよ」 

「そうか…あれからもう2年も経つのか」 

ロバートはそう呟くと、夕日に染まる遠くの空を眺めた。 

そこから少し離れた海の家で、店主と店員が夕日に染まる二人のシルエットを眺めている。 

「良いよなぁ、ああいうカップル」 

店主が夕日に向かってボソッと呟いた。 

「荒野のオオカミ、砂漠のキツネ、こんなことわざがあるくらいですからね…荒野と砂漠、オオカミとキツネ…似た者同士は相性がいいんでしょうね」 

「おいおい、荒野のオオカミは一人ぼっちにに使う言葉だぞ」 

その時ロバートのウキが沈んだ。 

「お、かかったぞ」 

釣竿が持って行かれそうなほど重い 
急いで水中から引き上げると、大物がかかっていた。 

「わぁ~、すごい大物じゃない! 今夜はこの魚の煮物ね… じゃ、この魚持って先に戻るわね、晩の支度しなくちゃならないから…」 

リサが名残惜しそうにそう言った。 

「いいやリサ、その必要はないぞ」 

リサがハッと振り返ると、そこには宿屋の主人、いや、リサの父親が立っていた。 

「お父さん、どうして…いつからここにいたの?」 

「いや、せっかくの雰囲気を壊したくなかったから、遠目に見守ってただけだ。その魚、こっちで調理しといてやるから…その、だな、二人の時間は貴重だろ?」 

リサは父親の気遣いを素直に受け取り、魚を手渡した。 

「じゃあ、飯ができたら呼ぶよ」 

「は~い」 

リサが手を振りながらそう返事した。 
主人は左足を若干引きずりながら、宿屋の方へ戻って行った。 

すでに夕日は水平線近くでくすぶっており、頭上が星で満たされていく… 

ロバートとリサは釣竿を返すと
今にも降ってきそうな星空の下、二人で砂浜に寝転んだ。 

「綺麗な星空ね」 

「ああ、ルナじゃこんな綺麗な星空なかなか見れないな」 

リサはロバートの方に顔を向けた。 

「あなたの国は今どうなってるの?」 

「…皆、戦争だ、戦争だと騒いでるよ」

「早くあなたの国との関係が良くなってくれると良いけど…」 

その頃、海の家に店長は店を閉めて帰りの支度をしていた。 
その間店員は、うらやましそうに彼らのほうを眺めていた。 

「俺も彼女欲しいよぉ…」 

「黙りな! せっかくのムードをぶち壊したらどうするんだ!!」 

店長がそう言って頭を小突いた。
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