荒野のオオカミと砂漠のキツネ

Haruki

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送ったり探られたり

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ロバートは、定期的にリサのいる廃村に食料やその他生活必需品を届けていた。

しかし、その目立った行為は彼が目をつけられる原因となってしまった。

ある日の夕方
午前中はしきりに雨が降っていてが、夕方ごろには空はすっかり晴れ渡っていた。

「フム… 奴は頻繁にバイクで出かけるが、なぜだと思う」

帝国空軍少佐のロジャーは部下にそう尋ねた。
奴とはもちろんロバートのことを指している。

「さあ、私にも」

「怪しいとは思わないか?」

「…ただ走りたい気分なだけなのでは?」

「それも考えられるが、毎週水曜日のこの時刻になると決まって奴はバイクでどこかへ行こうとするのだ、ここまで周期的な動きには何かあると思ってな…」

部下はしばらく考え込んだ末にこう言った。

「ならば本人に直接聞けば良いのでは?」

「いいやダメだな、奴が警戒してしまう」

ちょうどその時、ロバートがバイクに跨りゲートから空軍基地の外へ出た。

「よし… 行ったか、後を追うぞ」

「彼をですか!?」

「側車付き二輪車ならあそこに停めてある。今すぐここへ持って来るんだ」

部下が走って車両用格納庫から側車付きのバイクを持って来た。

「しかし、後ろを走ったら気づかれてしまうのでは?」

「なあに、直接後を追うのではない、奴の残した『痕』を追うんだ、行くぞ」

少佐が側車に乗り込み、バイクが走り出した。
午前中の雨でぬかるんだ未舗装の道には、ロバートのバイクが通った際に残した真新しいタイヤ痕がくっきりと残っていた。

「やはり綺麗に痕が残っているな、予想通りだ」

バイクは水たまりの水を勢いよく跳ね除けながら通過した。

しばらく道なりに真っ直ぐ走ると、タイヤ痕は右折していた。
そこでバイクを止める様に指示した。

「ここを右に曲がったのか… おい、ここを右折すると何があるのだ?」

「はい、元は林業の拠点だった様です。切った木材を一時的に保管する目的や、林業に携わるキツネが住んでいたとかで…」

「なんだとっ! キツネが住んでいるのか!」

「だから昔の話ですよ、今は廃村になって誰も住んでいないです」

「では奴はなぜ廃村に用があるのだ?」

「さて…、分かりませんね」

日はすっかり落ちてしまい、バイクのライトだけが辺りを照らしている。

「ロバートと鉢合わせする訳にはいかん、一旦引くぞ」

バイクはUターンして、元の道を辿って行った。
そのエンジン音は、森の中を進むロバートにも届いていた。

「エンジン音か… 少し遠いな」

彼は特にそのまま気にせずに荷物を運ぶことにした。

家の前に着いてから扉をノックすると
中からは、珍しく髪を結んでいるリサが現れた。
その姿ももちろん可愛らしかった。

「いつも通りほら、食料とその他の日用品だ」

「いつもありがとね」

ドアから少しだけ中を覗き込むと、リサの兄がいるのも見えた。
ロバートはリサと少し話しをしてから、帰路についた。

バイクに跨り空軍基地へ戻る途中、辺りが暗かったからなのか
彼がロジャー少佐の残したタイヤ痕には最後まで気付くことは無かった。


そして、次の水曜日
この日は朝から晴れ渡っていて、清々しい天気だった。

ロバートはいつもの様に街で食料と前回頼まれた日用品を買った。
キツネ族が皆いなくなってしまったので、今ではオオカミだけが街中を歩いている。

家主を失った大勢の家が売りに出されており、街のそこら中で売家の張り紙が貼ってある。

キツネ族がいなくなって、安全が確保されたためなのか
大量の一般市民のオオカミ族がこの地に引っ越して来ている。

ロバートはバイクに買ったものを乗せると、荷物が落ちないようにサイドカーにカバーを掛けたのであった。
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