荒野のオオカミと砂漠のキツネ

Haruki

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索敵

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そして、夕方がやって来た。

「奴があの場所へ行く理由を今日こそ突き止めるぞ」

「…でも、どうやってですか?」

「なあに簡単なことさ、奴が山に入ったら後をつければ良い」

「…まあそうですね、でもなぜ彼にあそこまでこだわるんですか」

「なぜかって? …奴は以前、キツネ族と親しく接していたからだ、私の予想が正しいのならば、奴はあの森にキツネ族を匿っている… だから奴が到着するよりも前に、向こうで待ち伏せしていなければならない」

ロジャー少佐は張り切ってそう言った。
そしてロバートよりも一足先に、部下と共にバイクに乗り込んで基地を出発した。

「もしキツネ族がいたらどうするんですか?」

「見つけ次第一人残らず始末する」

「…やはり皆殺しですか」

「ああ、仲間はずれを作ったら可哀想だろ?」

その顔には殺気が満ち溢れている。

「…あと、ロバート…彼はどういったご処分を?」

「まあ本当ならば、軍法会議にかけたいところだが… 抵抗する様ならば殺しても構わないだろう」

そうこうしているうちに、バイクは例の森の入り口に到着した。

「バイクはそこ辺りに草木を掛けて上手い感じに隠しておくんだ」

ロジャー少佐は、部下が戻って来てから道の脇に一緒に姿を隠した。
やがて日は落ち、辺りは完全に静寂に包まれた。
月明かりが二人を真上から微かに照らしている。

「本当に彼は今日も来るんですかね?」

「ああ、当然だ… シッ、静かに」

その時、遠くの道で動く光の点が見えた、
ロバートのバイクだ。

光の点は徐々にこちらに近づいて来て、やがて目の前で止まった。
なにも知らないロバートが、バイクから荷物を下ろしている。

「よし… 後を追うぞ」

ロジャー少佐が小声でそう指示した。
荷物を抱えたロバートは、そのまま森の中に入って行った。
その後を、ゆっくりと二人が追った。

「後をつけるのはいいですけど、この後どうするんです?」

「まあ見ておけ」

ロバートの後を追っているうちに、ついに家が見えて来た。
窓からは光がこぼれ出て入る。

(見ろ、光だ! あそこにキツネ族が住んでるに違いない!)

ロジャー少佐は興奮して叫びそうになったが、その感情を必死に抑えた。

「よし、これで分かった。奴を捕まえるぞ」

ロジャー少佐は駆け足で、ロバートに近づいた。
もちろん重い荷物を抱えた彼はまだ気付いていない。

「ロバート君、こんなところで一体なにを運んでいるんだい?」

ロジャー少佐はそう言いながら、ロバートに腹に膝蹴りを喰らわせた。
そして悶絶しながら地面にうずくまる彼の頭を蹴り飛ばした。

「押さえつけて口と両腕と足をしっかり縛っておけ、良いな?」

少佐はそう言言い残し、自身はリサ達の家に向かった。
扉の前に立ち、ドアを適当にノックした。

扉が開き、いつも通りリサが現れた。

「ロバート… じゃない!!?」

「おやおや、誰が出てくるのかと思えばキツネ族のお嬢さんではないですか… こんなところにも隠れていたとは全く驚いた」

彼はそう話しかけながら、彼の気迫のあまり恐怖でその場で動けずただ震えることしか出来ない彼女の胸に深々とナイフを突き刺した。

状況を理解したリアドが、刺されてよろけながら倒れたリサの後ろからマシンガンで応戦した。

しかしリアドが現れた瞬間に、ロジャー少佐は咄嗟にドアの影に身を隠した。
突然姿が見えなくなった彼を探る様に、リアドは四方八方に銃弾をばら撒いた。

「どこ行きやがった!? このオオカミ野郎が!!」

「フンッ、キツネの若造が… 調子に乗るんじゃあないぞ!」

マシンガンが弾切れになったタイミングで、ロジャー少佐はドアの影から飛び出しリアドに飛びかかった。

いきなり飛びかかってきた彼に対して、リアドはマシンガンを相手に投げつけて咄嗟に背中に隠してあった拳銃を取り出そうとしたが、

ズボンのベルトに引っ掛かり、取り出せなかった。

ロジャー少佐はそんな彼に飛びかかり、その顔を鋭い爪で引っ掻いた。
完全に体勢が崩れた彼の首筋に噛みついた。
リアドはジタバタと暴れて必死に抵抗したが、それは相手の胸に軽い切り傷をつけた程度だった。

ロバートを縛り終えた部下が戻って来た。

「…もう終わったんですか??」

「ああ、2人しか居なかった」

ロジャー少佐はそう言って口周りにべっとりとついた血を拭った。

「え? じゃあもう1人はどこです?」

「なにっ!?」

見ると、先程刺したはずのリサが居なくなっている。

「おい! キツネ族の女を見なかったか??」

「いいえ、見てません!」

「…いつのまに奥の部屋に隠れたのか…?」

ふとドアを眺める、あの時も開け放たれていたはずだ。

「よし奥の部屋を調べてこい、俺は外を調べる」

部下にそう命令し、ロジャー少佐は家の外へ飛び出した。
そしてその部下は、家の奥の部屋にあるドアに向かった。

その頃リサは、自身が生み出した狐火を頼りにロバートの元へ向かっていた。
狐火が自動で生命反応を追う習性を利用し、彼の生命反応を探ろうとしたのだ。

フラフラした足取りで、どうにかロバートの元へ辿り着いた。
彼が縛られていることを確認するや否や、
彼女は彼の縄を解く為
自身の胸に突き刺さっているナイフを引き抜いた。
激痛と共に血がドバッと溢れたが、覚悟の上だ。

次第に薄れていく意識の中、必死に彼の縄を切った。
足の縄を解き終えて、気絶している彼を起こそうとした。

「起きて… 起きて! ねえ…お願い」

ふと後ろを振り返ると、先ほどのオオカミが近づいて来ている。
手には銃を構えている。

「…起きて!」

彼女は、最後の力を振り絞って彼の腕を切りつけた。
腕の激痛で、ロバートは目覚めた。

「ふむ、ようやく目覚めたか… 」

彼がふと周りを見回すと、リサが横たわっていた。

「良かった……」

彼女は掠れる声でそう呟いた。

「テメエ、俺のリサになんてことを!!」

ロバートはロジャー少佐に飛びかかった。
飛びかかった彼の鋭い爪が、ロジャー少佐の顔に深い切り傷をつけた。
しかし、反撃としてロジャー少佐の蹴りを再びまともに食らってしまい、ロバートは吹き飛ばされた。
ロジャー少佐の顔にできた傷口からゆっくりと血が滲んでいる。

「ロバート君! 君は今怒りで本能的に動いている。しかし、本能的に動いている時にキツネ族の血の匂いを嗅いだらどうなるか君は理解しているのかい?」

ふわっとほのかに漂ってくる血の香り、
それを嗅いだ瞬間
突如として頭の中がビリビリとした感触に襲われた。
倒れているリサが気になってしょうがない、いや、襲い掛かりたい
そんな感情がぐるぐると渦巻いて…

「君が始末してくれるなら、私はただ眺めるだけとするか」

体が勝手にリサの方へ向かってしまう

「…ロバート、…私よ!」

「無駄だ、いくら喚いたって本能には響かないさ」

ロジャー少佐が冷酷に言い放った。

「…やめて……お願いよ」

彼にはまるで聞こえていない様で、徐々に距離が詰まっていく
リサは迫ってくる彼のその目を見つめた。
ロバートがリサ向けていたのは、獲物を睨みつけるかの様な鋭い視線だった。

リサは、よく分からないオオカミに殺されるよりも、ロバートに殺される方が幸せだと思った。

迫ってくる彼の目には、かつての面影は無かった。

(ああ、もうあの優しかったロバートは居なくなっちゃったんだ…)

彼女の頭の中には、彼との思い出がゆっくりと鮮明に流れていた。
それからそっと目を閉じて、この現実を受け入れることにした。
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