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第1章 世界樹の巫女と護衛
第1章 第3話 灯る希望
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「落ち着け、リィナ。深呼吸だ。」
耳に馴染んだ低い声と共に、ふわりと温かなブランケットのようなものが肩に掛けられる。
ふうっと息が抜けて、肩の緊張がゆるむ。いつの間にか、息が止まっていたみたいだ。口元にまで力が入っていて、歯を食いしばっていたことにも今さら気づく。
もう一度、大きく息を吐き出す。緊張も、いっしょに吐き出していく。
「大丈夫だ。何をすればいいのかは、俺が教えていく。心配はいらない」
見上げた義兄さんの眼差しには労りが含まれていて、注がれるほどに、私も体温を取り戻していくのを感じる。
何度か深呼吸を繰り返し、ようやく視線をレオニス殿下へと戻す。
そっと、ブランケットの端を握りしめた。小刻みに指先が震え始める。
「……あの。その前に、一つだけ、聞いていいですか」
指から伝わる震えは喉まで達して、声は掠れてしまう。耳元で心臓の音が跳ねる。掠れそうな声よりも大きい。
――聞くのが怖い。けれど、聞かなければ、気持ちが決められない。
レオニス殿下が小首を傾げ、無言で続きを促す。
「私たち、元の世界では……もう、死んじゃってるんですか?」
心臓が痛い。早い。
鼓膜を突き破るほどの音が鳴る。
ーーこんなんで、殿下の返事なんて聞こえるの?
殿下は驚いたように微かに目を見開き、それからふっと、優しく笑った。その表情に、僅かだけ、手の力が抜ける。
「死んではいないよ。君たちは“向こう側”では、ただいなくなっただけだ」
その言葉は、しっかりと耳に届いた。
「……いなくなった、だけ?」
きゅっと、小さく心臓が縮む。
――じゃあ、あっちの皆はどう思ってるんだろう。いなくなっちゃったこと。
部屋の中を漂っていた光の粒たちが、儚げに、どこか窓の外へ流されていく。
「身体はこの世界に転移した。まだ、魂の線は途切れていない」
そう言って、殿下は窓の外を見つめた。
外にも、淡い光の粒が飛び交っている。
――あの光は、私たちの世界にも繋がっているのかな?
話とは関係もないことを、とりとめもなく、ぼんやりと思う。
「先代の巫女と護衛も、かつて“行き来”していた。この世界と、君たちの世界を、ね。
世界樹の力が弱っている今は“来る”ことしかできなかったけれど……魔素の循環が元に戻れば、“帰る”こともできるはずだよ」
“行き来”――その言葉が、妙にくっきりと胸に残る。
ふと、ベッドの脇に目をやると、見慣れない部屋の中に、馴染んだものがぽつりと置かれているのに気づいた。
殿下の言葉を反芻しながら、それをじっと見つめる。
「ああ、それか。転移の時に手に持っていたから、一緒に持って来られたようだな。……よかったな。」
「うん。良かった。」
義兄さんにそう返しながら、本物かどうか確かめるように、手に取る。
見慣れた位置に、小さな傷。
何度も磨いてきたけど、所々に残る変色。
軽く振ると、しゃんしゃんと軽やかで涼やかな音が鳴る。道標のように。
――ちゃんと、お母さんの形見の、神楽鈴……だ。
鈴の音とともに、身体の中心がすうっと開いて、光があふれてくるような感覚が広がった。
「やります。その、祈りを捧げる儀式っていうの……」
さっきよりもお腹に力が入って、しっかりとした声が出た。なんとか、決意はできた。
私を取り囲んでいた金色の光が、霧散していく。
――そうだ。私に“できる”って言うなら、やる。
そして、義兄さんと一緒に、元の世界に還ってみせる。
耳に馴染んだ低い声と共に、ふわりと温かなブランケットのようなものが肩に掛けられる。
ふうっと息が抜けて、肩の緊張がゆるむ。いつの間にか、息が止まっていたみたいだ。口元にまで力が入っていて、歯を食いしばっていたことにも今さら気づく。
もう一度、大きく息を吐き出す。緊張も、いっしょに吐き出していく。
「大丈夫だ。何をすればいいのかは、俺が教えていく。心配はいらない」
見上げた義兄さんの眼差しには労りが含まれていて、注がれるほどに、私も体温を取り戻していくのを感じる。
何度か深呼吸を繰り返し、ようやく視線をレオニス殿下へと戻す。
そっと、ブランケットの端を握りしめた。小刻みに指先が震え始める。
「……あの。その前に、一つだけ、聞いていいですか」
指から伝わる震えは喉まで達して、声は掠れてしまう。耳元で心臓の音が跳ねる。掠れそうな声よりも大きい。
――聞くのが怖い。けれど、聞かなければ、気持ちが決められない。
レオニス殿下が小首を傾げ、無言で続きを促す。
「私たち、元の世界では……もう、死んじゃってるんですか?」
心臓が痛い。早い。
鼓膜を突き破るほどの音が鳴る。
ーーこんなんで、殿下の返事なんて聞こえるの?
殿下は驚いたように微かに目を見開き、それからふっと、優しく笑った。その表情に、僅かだけ、手の力が抜ける。
「死んではいないよ。君たちは“向こう側”では、ただいなくなっただけだ」
その言葉は、しっかりと耳に届いた。
「……いなくなった、だけ?」
きゅっと、小さく心臓が縮む。
――じゃあ、あっちの皆はどう思ってるんだろう。いなくなっちゃったこと。
部屋の中を漂っていた光の粒たちが、儚げに、どこか窓の外へ流されていく。
「身体はこの世界に転移した。まだ、魂の線は途切れていない」
そう言って、殿下は窓の外を見つめた。
外にも、淡い光の粒が飛び交っている。
――あの光は、私たちの世界にも繋がっているのかな?
話とは関係もないことを、とりとめもなく、ぼんやりと思う。
「先代の巫女と護衛も、かつて“行き来”していた。この世界と、君たちの世界を、ね。
世界樹の力が弱っている今は“来る”ことしかできなかったけれど……魔素の循環が元に戻れば、“帰る”こともできるはずだよ」
“行き来”――その言葉が、妙にくっきりと胸に残る。
ふと、ベッドの脇に目をやると、見慣れない部屋の中に、馴染んだものがぽつりと置かれているのに気づいた。
殿下の言葉を反芻しながら、それをじっと見つめる。
「ああ、それか。転移の時に手に持っていたから、一緒に持って来られたようだな。……よかったな。」
「うん。良かった。」
義兄さんにそう返しながら、本物かどうか確かめるように、手に取る。
見慣れた位置に、小さな傷。
何度も磨いてきたけど、所々に残る変色。
軽く振ると、しゃんしゃんと軽やかで涼やかな音が鳴る。道標のように。
――ちゃんと、お母さんの形見の、神楽鈴……だ。
鈴の音とともに、身体の中心がすうっと開いて、光があふれてくるような感覚が広がった。
「やります。その、祈りを捧げる儀式っていうの……」
さっきよりもお腹に力が入って、しっかりとした声が出た。なんとか、決意はできた。
私を取り囲んでいた金色の光が、霧散していく。
――そうだ。私に“できる”って言うなら、やる。
そして、義兄さんと一緒に、元の世界に還ってみせる。
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