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第1章 世界樹の巫女と護衛
第1章 第2話 与えられる役割
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私が水と共に、混乱と怒りと、なんだか分からないモヤモヤを飲み込んだ時——。
トントンとドアをノックする音が響いた。
開くのと同時に、「失礼するよ」と、軽妙なのにやけに芯のある声が聞こえてきて、誰かが部屋の中に入ってくる。
金髪、金の瞳、赤いマントに凝った刺繍の衣装。華やかな顔立ちの男の人だった。
ーーああ、これもラノベでよく見るやつだわ。
薔薇とか背中に背負ってそうなのに、笑顔がそこはかとなく黒いもん。
ーー腹黒王太子枠の人だ……。たぶん。
ーーえ? じゃあ、義兄さんはインテリ宰相なん??理系だし、頭いいもんね。
ーーいやいや、格好的に生真面目騎士枠とか……?運動神経もいいし、何気に体鍛えてるしねえ。魔法使いってことはないでしょ…
ーーそう言えば、これってラノベなら何系になるんだろ……転生……じゃないし。ざまぁはやだなあ。
せっかく会いに来てくれたであろう人を前に、挨拶もそこそこに一人でどんどん思考の渦に落ちていく。
ーーいや、むしろ積極的に落ちていきたい。こっちの世界に引き込まれたくない…と思ってしまう。
自分をを見ているようで見ていない私の様子を全く意に介さず、その人はニコリと笑って話しかけてきた。
「目が覚めたって聞いてね。様子を見に来たよ。僕はレオニス。このセリアスの王太子だ。ようこそ、“巫女”リィナ」
『リィナ』響きの異なる名前で、突然呼びかけられても、咄嗟に答えは返せるもんじゃない。
動かないままの私なんて関係ないかのように、彼はただ笑みを浮かべている。瞳の奥の感情までは読めない。スチル画のようだ…
ーーー本当にこの人は目の前にいるの?
触ったら手が向こう側に抜けたりしない??
その笑顔が胡散臭いものに思えてきて、何かの画像を眺めるように彼を見つめる。
指先がヒヤリとした。
ーー切り換えたい。
知らずに人差し指が下から上へと何かをなぞるように動いた。スマホなんて、今は手元にないのに…
「カイゼルから聞いたかもしれないけど、もっと色々知りたいかと思ってね。説明に来た。僕は君たちに対して責任がある。色々とね」
目の前の画像は変わることなく、この人ももちろん消えてくれることはなかった。けれど声すらどこかの声優さんのようにも聞こえてきてしまう。
ーーいきなり説明って言われても…義兄さんの話だってよく分からなかったのに…
さっき目が覚めたばかりで、正直、何から聞いたらいいのかも分からない。
ーーとりあえず…まず一番は…
「なんで、私達ここにいるんですか?」
私の問いに、彼はさらに含みのある笑顔を返した。
なのに、その金色の瞳には、何か凄みが宿っている。射すくめられて、少し肩に力が入る。不意に指先以外にもヒヤリとした冷たさが走る。
ーーああ残念。どうしたって、ここって現実なんだ。
そんな醒めた自分の声が頭の中に響いた。
金色の瞳がキラリと光って、レオニス殿下は私を見据えたまま言った。
「この世界を救うためだよ。世界樹の巫女、リィナ様」
その声の響きはしっかりと生身の人間の温もりを帯びている。
そしてそれを聞いた瞬間、身体の中心から、ぞくりと得体の知れない波紋が広がった。
その言葉の意味を考え始める前に、すっと、片膝をついたレオニス殿下が目の前に迫る。
「この世界は今、世界樹の力が弱まり、枯れかけている。
魔素の流れが乱れて、それによって様々な困った事象が起きていてね。
巫女の祈りが、どうしても必要なんだ」
金色の瞳の輝きがさらに強まり、まっすぐに私を捉える。怯えたような顔をした銀髪の少女が金色の中に映っていた。
うっと呼吸が喉奥で詰まり、肩からみぞおちまでずしりと重くなった。
ーー動けない。息ができない…
「お願いだ。世界樹への祈りの儀式を行ってほしい、巫女様」
私は、今、圧倒的な覇気に威圧されている。
ーーこれもう、お願いなんかじゃなくて、命令なんじゃないの?
空気中を漂っていた淡い光の粒が一斉に集まり始めて、金色に代わり、私を囲うように揺れて瞬く。
絡め取られるようで……瞬き一つできない。
思考が止まっているのに、やけに冷静な自分の声が次々に私に問いを投げかけてくる。
ーーできる? 私に?巫女ってなんなの?
ーーただの学生なのに…巫女だってただの手伝いなのに…
ーーねえ、世界を救うって何なの?
ーーなんで『私』なの?
飛び交う言葉は目の前をチラチラと覆う金色に阻まれて口から出すことはできなかった。
この人は本物の王族。
それを理解してしまえば、体は自然と萎縮して、頭が下がりそうになってくる。
言いたいことも聞きたいことも…好き勝手に振る舞える訳がない。
ーー結局質問なんかさせてもらえないじゃない…
最後は恨み言だけが頭の中を過っていった。
トントンとドアをノックする音が響いた。
開くのと同時に、「失礼するよ」と、軽妙なのにやけに芯のある声が聞こえてきて、誰かが部屋の中に入ってくる。
金髪、金の瞳、赤いマントに凝った刺繍の衣装。華やかな顔立ちの男の人だった。
ーーああ、これもラノベでよく見るやつだわ。
薔薇とか背中に背負ってそうなのに、笑顔がそこはかとなく黒いもん。
ーー腹黒王太子枠の人だ……。たぶん。
ーーえ? じゃあ、義兄さんはインテリ宰相なん??理系だし、頭いいもんね。
ーーいやいや、格好的に生真面目騎士枠とか……?運動神経もいいし、何気に体鍛えてるしねえ。魔法使いってことはないでしょ…
ーーそう言えば、これってラノベなら何系になるんだろ……転生……じゃないし。ざまぁはやだなあ。
せっかく会いに来てくれたであろう人を前に、挨拶もそこそこに一人でどんどん思考の渦に落ちていく。
ーーいや、むしろ積極的に落ちていきたい。こっちの世界に引き込まれたくない…と思ってしまう。
自分をを見ているようで見ていない私の様子を全く意に介さず、その人はニコリと笑って話しかけてきた。
「目が覚めたって聞いてね。様子を見に来たよ。僕はレオニス。このセリアスの王太子だ。ようこそ、“巫女”リィナ」
『リィナ』響きの異なる名前で、突然呼びかけられても、咄嗟に答えは返せるもんじゃない。
動かないままの私なんて関係ないかのように、彼はただ笑みを浮かべている。瞳の奥の感情までは読めない。スチル画のようだ…
ーーー本当にこの人は目の前にいるの?
触ったら手が向こう側に抜けたりしない??
その笑顔が胡散臭いものに思えてきて、何かの画像を眺めるように彼を見つめる。
指先がヒヤリとした。
ーー切り換えたい。
知らずに人差し指が下から上へと何かをなぞるように動いた。スマホなんて、今は手元にないのに…
「カイゼルから聞いたかもしれないけど、もっと色々知りたいかと思ってね。説明に来た。僕は君たちに対して責任がある。色々とね」
目の前の画像は変わることなく、この人ももちろん消えてくれることはなかった。けれど声すらどこかの声優さんのようにも聞こえてきてしまう。
ーーいきなり説明って言われても…義兄さんの話だってよく分からなかったのに…
さっき目が覚めたばかりで、正直、何から聞いたらいいのかも分からない。
ーーとりあえず…まず一番は…
「なんで、私達ここにいるんですか?」
私の問いに、彼はさらに含みのある笑顔を返した。
なのに、その金色の瞳には、何か凄みが宿っている。射すくめられて、少し肩に力が入る。不意に指先以外にもヒヤリとした冷たさが走る。
ーーああ残念。どうしたって、ここって現実なんだ。
そんな醒めた自分の声が頭の中に響いた。
金色の瞳がキラリと光って、レオニス殿下は私を見据えたまま言った。
「この世界を救うためだよ。世界樹の巫女、リィナ様」
その声の響きはしっかりと生身の人間の温もりを帯びている。
そしてそれを聞いた瞬間、身体の中心から、ぞくりと得体の知れない波紋が広がった。
その言葉の意味を考え始める前に、すっと、片膝をついたレオニス殿下が目の前に迫る。
「この世界は今、世界樹の力が弱まり、枯れかけている。
魔素の流れが乱れて、それによって様々な困った事象が起きていてね。
巫女の祈りが、どうしても必要なんだ」
金色の瞳の輝きがさらに強まり、まっすぐに私を捉える。怯えたような顔をした銀髪の少女が金色の中に映っていた。
うっと呼吸が喉奥で詰まり、肩からみぞおちまでずしりと重くなった。
ーー動けない。息ができない…
「お願いだ。世界樹への祈りの儀式を行ってほしい、巫女様」
私は、今、圧倒的な覇気に威圧されている。
ーーこれもう、お願いなんかじゃなくて、命令なんじゃないの?
空気中を漂っていた淡い光の粒が一斉に集まり始めて、金色に代わり、私を囲うように揺れて瞬く。
絡め取られるようで……瞬き一つできない。
思考が止まっているのに、やけに冷静な自分の声が次々に私に問いを投げかけてくる。
ーーできる? 私に?巫女ってなんなの?
ーーただの学生なのに…巫女だってただの手伝いなのに…
ーーねえ、世界を救うって何なの?
ーーなんで『私』なの?
飛び交う言葉は目の前をチラチラと覆う金色に阻まれて口から出すことはできなかった。
この人は本物の王族。
それを理解してしまえば、体は自然と萎縮して、頭が下がりそうになってくる。
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