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第4章 発露する過去への想いと融解
第4章 第1話 発作
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重なる樹々の間をいく筋もの光がすべり落ち、湖面を撫でる。
光の角度や波のさざめきで、濃紺や緑…そして深い碧や淡い紫へと湖面が色を変えていく。
その上を空気中の魔素が漂い、それを追うように2匹の青い蝶が連れ添って飛んでいる。
その美しい景色を、私はただ黙って見ていた。
身体中をゆっくりと染み渡るように、義兄さんの魔素が巡るのを感じながら。
ふっと光の筋が消え、湖面が濃い緑に戻る。
「もう昼過ぎだな。戻って、飯にするぞ。」
そう言って、義兄さんがボートを漕ぎ出す。
たった二人だけの世界に閉じ込められていたような、密やかで忍びやかな時間が終わる。
ボートが進むにつれて、頬を撫でる風が、少し寂しさを孕んでいく。
苔むした湿りは遠のき、空気は次第に乾いていった。
ーー終わっちゃったな。
名残り惜しさあれども、再び巡り始めた魔素に、義兄さんとの時間は宿っているのを感じる。
「わっ、すごい!」
湖面近くの草地に敷物を広げて、二人で座り、バスケットの中身を次々に一緒に並べていく。
ローストビーフのサンドウィッチ、色とりどりの野菜ピック、スープにデザートまでもがきっちりと詰まっている。
「食べるぞ。好きな物を取れ。」
義兄さんに促されて、サンドウィッチを一つ手に取る。
「いただきます。」
サンドウィッチに齧りつくと、肉汁がじわっと口の中に広がって、肉の匂いにさらに空腹が刺激される。
「美味しいっ…」
思わず満面の笑みになって義兄さんを見ると、
「ああ、そうだな。」と
少しだけ目尻を下げて微笑み返してくれる。
その微笑みがまた胸を優しく疼かせる。
「ご飯もあっちと同じで良かったね。」
「ああ、そうだな。人体の構造は向こうと基本一緒だからな。味覚も変わらない。だから、まあ、味つけも一緒になるんだろう。」
そんな風に淡々と考察しては、パクリパクリとサンドウィッチを頬張る。
「もう、またそういう難しいことばっか言う。」
いつもと同じようなやり取りに「日常」が戻ってきたみたいで…安心する。
物足りないと言う、私の胸の囁きは聞かなかったことにして。
野菜のピックを手を伸ばしながら、さっきまで情けない声をあげて叫んでいた人のことがちらりと浮かんだ。
「クロードさんがね…ふふふ」
花畑の真ん中での青白い顔に目を血走らせていた姿を思い出すと笑いがこみ上げてくる。
「クロード?」
義兄さんの声が少し固い。
何がそうさせたのかも分からずに、沈黙が怖くて、私は和む話題を必死に探す。
「クロードさん達と飲みに行ったんでしょ?」
「クロードとは…仲がいいのか?」
義兄さんの声が固い。それに微かに眉毛が動いてる。これは…不機嫌モードの時の顔だ。
クロードさん達の話題は失敗したと瞬時に思った。夕べは私の知らない何かがあったのかもしれない。話題をもう少し変えたい。
「仲がいいっていうか…。あの人って、何か話やすいでしょ?あの人懐っこい感じが『陸人』に似てる。」
『陸人』
そう口にした途端にゾワリと背中から鳥肌が立った。
ーー何?
と反射的に周囲を見渡す。
義兄さんを見るけど、固く引きし締められた口元からは、いつもより表情が読めない。
得体の知れない不安が逆に私を饒舌にさせる。
「陸人ともよく三人で出かけたよね。ご飯食べに行ったり、買い物したり…あいつはよく途中でどっかに消えちゃって…」
義兄さんの様子が次第に張り詰めていくのを感じる。
握る指先の温度が、わずかに下がった。青い視線が私をすり抜けて、茂みの奥を伺っている。
ーー何かがおかしい…
短く刈り揃えられた草の隙間を青黒いものがざわめき始めたようにも見える。
ざわり、と肌が泡立った。
茂みが爆ぜる音。
風向きが変わる。
草いきれに、鉄の匂い。
「リィナ、伏せろ!!!」
義兄さんの叫び声に、突然、目の前が真っ青に染まり、何かに強く肩を押さえられ、地面に前のめりに倒れ込む。
「そのままでいろ!」
聞いたこともない何かの鳴き声や、地面を蹴る音、鳥の羽ばたくような音や、何かがぶつかり合う音が混じり合って、何が起きてるのかさえ分からない。
ーー魔獣…?そこで義兄さんが闘ってるの?
体が震え始めて、息が浅くなってくる。
見慣れたはずのその光が、今日はやけに重く、冷たい。
触れたそばから体温をさらう青。
ーー義兄さんが結界を張ってる…
濃い青の結界に視界を塞がれて、周囲の様子は一切見えない。
ぎゅっと目を瞑って、ガタガタと震えが大きくなり始めた体を抱きしめる。
「落ち着いて…里菜…深呼吸…落ち着いて」
呪文のように繰り返し、繰り返し、自分に言い聞かせるけど、強張りついた喉は小刻みに収縮を繰り返すだけで、息をうまく吸ってはくれない。目を閉じてるのに、瞼の裏がぐらぐらしてくる。
ーーもう限界かもしれない…
そう思った時、やっと、私の耳に馴染みある低い声が聞こえてきた。
ーーああ、その声だ。
その声だけが堕ちていきそうになる私を、いつも現実へと引き上げてくれる。
「落ち着け、深呼吸だ。里菜。」
ガチガチと歯を揺らして、力の入らなくなった瞼をなんとか少しずつ押し上げる。
義兄さんが私を心配そうに覗き込んでいた。
いつものように義兄さんに見守られながら、
少しずつ深く酸素を吸い込もうとお腹に力を入れると、見開き始めた私の目にそれが映った。
ーー義兄さんの頭、か、ら…血が…赤い…
ーー赤い…赤い…目の前が真っ赤だ。
世界がどんどん赤くぼやけていく。
ーー義兄さんまで…いなくなる、の?
世界が黒赤に傾き、時間が裏返る。
『怖いっっっ!!!嫌っっ!!』
唇が。
喉が。
痙攣を始めて…
逆に酸素を肺から押し出し始める。
意識が一気に遠ざかり、記憶と体が一瞬で私を過去に連れ戻した。
それは奥深く私の中に閉じ込めてた、
遠くて生々しい喪失の記憶…だ…
今とその時の境目が無くなった。
ーーそして、また私は『あれ』を体験する。
急にどんっ!という強い衝撃を受けて、頭から前のめりに運転席のシートの下に転がりこむ…
どん——っ。
続けて、金属が潰れる、濁った音。砕けたガラスが雨になる。
車の黒いシートに、赤い液体がたらりと、私の目の前で染みを作っていく。
怖い…
暗くて狭くて身動きが取れない…
「息ができない…
胸が苦しい…」
痛い…
なのに、どこが痛いか分からない…
暗い…怖い…
ガタガタと全身が震え始める。
「お父さん、お母さん。お父さん?お母さん?!」
呼びかける声がどこまでも届いているのかも分からない。
ちゃんと声が出てるのかすら分からない。
本当に目の前が暗いのか…意識を失ってるからなのか、何もかもが境目を無くして…ただ恐怖に呑まれる。
「里菜…里菜…」
誰かが焦ったように私を呼ぶけど、
それがお父さんなのか…お母さんなのか…
それとも違う誰かなのか…全く判別がつかない。
その声はどんどん近くなり、
耳元で響いている。
ーー息ができない、苦しい…苦しい…
体の芯から凍りつくような冷たさが広がって、さらにガタガタと体が震え始める。
何か温かいものが指先から流れ込んでくる。けれど、凍りついた体はどんどん冷えていくばかり。
目の前の闇はどんどん濃く、深く、私の中を侵食していく。
ーー苦しい…もう無理…
もう堕ちていくしかないと、諦めて力が抜いた時、
闇の中に水色と紫の閃光が走り、薄く体全体の皮膚を撫でて、私を包む。
その直後、唇から青く光る温かいものが流れ込んできて、私の凍りついた細胞を溶かし始めた。
それはどんどん勢いを増して、身体中を隅々まで駆け巡り、闇を追い払っていく。
その青い光に縋るように紫の光が纏わりつき、2つの光の粒の帯が螺旋を描いて混じり合ったのが見えた。
…音も痛みも全てが溶けていく。
安らぎすら感じ始めた頃、青紫の光が私を満たし尽くし、私はその安寧に身を委ねた。
ーーミントの味がする。
世界が、ゆっくりと光を取り戻していく。
光の角度や波のさざめきで、濃紺や緑…そして深い碧や淡い紫へと湖面が色を変えていく。
その上を空気中の魔素が漂い、それを追うように2匹の青い蝶が連れ添って飛んでいる。
その美しい景色を、私はただ黙って見ていた。
身体中をゆっくりと染み渡るように、義兄さんの魔素が巡るのを感じながら。
ふっと光の筋が消え、湖面が濃い緑に戻る。
「もう昼過ぎだな。戻って、飯にするぞ。」
そう言って、義兄さんがボートを漕ぎ出す。
たった二人だけの世界に閉じ込められていたような、密やかで忍びやかな時間が終わる。
ボートが進むにつれて、頬を撫でる風が、少し寂しさを孕んでいく。
苔むした湿りは遠のき、空気は次第に乾いていった。
ーー終わっちゃったな。
名残り惜しさあれども、再び巡り始めた魔素に、義兄さんとの時間は宿っているのを感じる。
「わっ、すごい!」
湖面近くの草地に敷物を広げて、二人で座り、バスケットの中身を次々に一緒に並べていく。
ローストビーフのサンドウィッチ、色とりどりの野菜ピック、スープにデザートまでもがきっちりと詰まっている。
「食べるぞ。好きな物を取れ。」
義兄さんに促されて、サンドウィッチを一つ手に取る。
「いただきます。」
サンドウィッチに齧りつくと、肉汁がじわっと口の中に広がって、肉の匂いにさらに空腹が刺激される。
「美味しいっ…」
思わず満面の笑みになって義兄さんを見ると、
「ああ、そうだな。」と
少しだけ目尻を下げて微笑み返してくれる。
その微笑みがまた胸を優しく疼かせる。
「ご飯もあっちと同じで良かったね。」
「ああ、そうだな。人体の構造は向こうと基本一緒だからな。味覚も変わらない。だから、まあ、味つけも一緒になるんだろう。」
そんな風に淡々と考察しては、パクリパクリとサンドウィッチを頬張る。
「もう、またそういう難しいことばっか言う。」
いつもと同じようなやり取りに「日常」が戻ってきたみたいで…安心する。
物足りないと言う、私の胸の囁きは聞かなかったことにして。
野菜のピックを手を伸ばしながら、さっきまで情けない声をあげて叫んでいた人のことがちらりと浮かんだ。
「クロードさんがね…ふふふ」
花畑の真ん中での青白い顔に目を血走らせていた姿を思い出すと笑いがこみ上げてくる。
「クロード?」
義兄さんの声が少し固い。
何がそうさせたのかも分からずに、沈黙が怖くて、私は和む話題を必死に探す。
「クロードさん達と飲みに行ったんでしょ?」
「クロードとは…仲がいいのか?」
義兄さんの声が固い。それに微かに眉毛が動いてる。これは…不機嫌モードの時の顔だ。
クロードさん達の話題は失敗したと瞬時に思った。夕べは私の知らない何かがあったのかもしれない。話題をもう少し変えたい。
「仲がいいっていうか…。あの人って、何か話やすいでしょ?あの人懐っこい感じが『陸人』に似てる。」
『陸人』
そう口にした途端にゾワリと背中から鳥肌が立った。
ーー何?
と反射的に周囲を見渡す。
義兄さんを見るけど、固く引きし締められた口元からは、いつもより表情が読めない。
得体の知れない不安が逆に私を饒舌にさせる。
「陸人ともよく三人で出かけたよね。ご飯食べに行ったり、買い物したり…あいつはよく途中でどっかに消えちゃって…」
義兄さんの様子が次第に張り詰めていくのを感じる。
握る指先の温度が、わずかに下がった。青い視線が私をすり抜けて、茂みの奥を伺っている。
ーー何かがおかしい…
短く刈り揃えられた草の隙間を青黒いものがざわめき始めたようにも見える。
ざわり、と肌が泡立った。
茂みが爆ぜる音。
風向きが変わる。
草いきれに、鉄の匂い。
「リィナ、伏せろ!!!」
義兄さんの叫び声に、突然、目の前が真っ青に染まり、何かに強く肩を押さえられ、地面に前のめりに倒れ込む。
「そのままでいろ!」
聞いたこともない何かの鳴き声や、地面を蹴る音、鳥の羽ばたくような音や、何かがぶつかり合う音が混じり合って、何が起きてるのかさえ分からない。
ーー魔獣…?そこで義兄さんが闘ってるの?
体が震え始めて、息が浅くなってくる。
見慣れたはずのその光が、今日はやけに重く、冷たい。
触れたそばから体温をさらう青。
ーー義兄さんが結界を張ってる…
濃い青の結界に視界を塞がれて、周囲の様子は一切見えない。
ぎゅっと目を瞑って、ガタガタと震えが大きくなり始めた体を抱きしめる。
「落ち着いて…里菜…深呼吸…落ち着いて」
呪文のように繰り返し、繰り返し、自分に言い聞かせるけど、強張りついた喉は小刻みに収縮を繰り返すだけで、息をうまく吸ってはくれない。目を閉じてるのに、瞼の裏がぐらぐらしてくる。
ーーもう限界かもしれない…
そう思った時、やっと、私の耳に馴染みある低い声が聞こえてきた。
ーーああ、その声だ。
その声だけが堕ちていきそうになる私を、いつも現実へと引き上げてくれる。
「落ち着け、深呼吸だ。里菜。」
ガチガチと歯を揺らして、力の入らなくなった瞼をなんとか少しずつ押し上げる。
義兄さんが私を心配そうに覗き込んでいた。
いつものように義兄さんに見守られながら、
少しずつ深く酸素を吸い込もうとお腹に力を入れると、見開き始めた私の目にそれが映った。
ーー義兄さんの頭、か、ら…血が…赤い…
ーー赤い…赤い…目の前が真っ赤だ。
世界がどんどん赤くぼやけていく。
ーー義兄さんまで…いなくなる、の?
世界が黒赤に傾き、時間が裏返る。
『怖いっっっ!!!嫌っっ!!』
唇が。
喉が。
痙攣を始めて…
逆に酸素を肺から押し出し始める。
意識が一気に遠ざかり、記憶と体が一瞬で私を過去に連れ戻した。
それは奥深く私の中に閉じ込めてた、
遠くて生々しい喪失の記憶…だ…
今とその時の境目が無くなった。
ーーそして、また私は『あれ』を体験する。
急にどんっ!という強い衝撃を受けて、頭から前のめりに運転席のシートの下に転がりこむ…
どん——っ。
続けて、金属が潰れる、濁った音。砕けたガラスが雨になる。
車の黒いシートに、赤い液体がたらりと、私の目の前で染みを作っていく。
怖い…
暗くて狭くて身動きが取れない…
「息ができない…
胸が苦しい…」
痛い…
なのに、どこが痛いか分からない…
暗い…怖い…
ガタガタと全身が震え始める。
「お父さん、お母さん。お父さん?お母さん?!」
呼びかける声がどこまでも届いているのかも分からない。
ちゃんと声が出てるのかすら分からない。
本当に目の前が暗いのか…意識を失ってるからなのか、何もかもが境目を無くして…ただ恐怖に呑まれる。
「里菜…里菜…」
誰かが焦ったように私を呼ぶけど、
それがお父さんなのか…お母さんなのか…
それとも違う誰かなのか…全く判別がつかない。
その声はどんどん近くなり、
耳元で響いている。
ーー息ができない、苦しい…苦しい…
体の芯から凍りつくような冷たさが広がって、さらにガタガタと体が震え始める。
何か温かいものが指先から流れ込んでくる。けれど、凍りついた体はどんどん冷えていくばかり。
目の前の闇はどんどん濃く、深く、私の中を侵食していく。
ーー苦しい…もう無理…
もう堕ちていくしかないと、諦めて力が抜いた時、
闇の中に水色と紫の閃光が走り、薄く体全体の皮膚を撫でて、私を包む。
その直後、唇から青く光る温かいものが流れ込んできて、私の凍りついた細胞を溶かし始めた。
それはどんどん勢いを増して、身体中を隅々まで駆け巡り、闇を追い払っていく。
その青い光に縋るように紫の光が纏わりつき、2つの光の粒の帯が螺旋を描いて混じり合ったのが見えた。
…音も痛みも全てが溶けていく。
安らぎすら感じ始めた頃、青紫の光が私を満たし尽くし、私はその安寧に身を委ねた。
ーーミントの味がする。
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