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第6章 世界樹の儀式
第6章 第3話目 告白
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「リィナ。」
青紫の泥濘の中で彷徨っていると、どこからか、海生が私を呼んでいる声がした。
いつだって、この低く穏やかな声が私をこの世界へと引き上げてくれる。
青紫の温かな流れの底から、湧き上がる泡のように一気に意識が浮上する。
目を開けると、穏やかな凪の青が私を覗き込んでいた。
「義兄さん…?」
「ああ。痛みはどうだ?」
頷きながら、義兄さんがそっと私の頬に手を添えて、優しく撫でる。触れる指の冷たさが心地良く、安堵に身体が解けていく。
ーー私…魔獣に襲われて…あれ?お腹を…?!
はっとして抉られた場所に手を当てれば、そこはもう瘡蓋のような小さな凹凸が指先に引っかかるだけだった。
「痛く…ない?」
魔獣に襲われたはずなのに、痛みはどこにもなくて、ただ、胸の奥まであたたかさがゆっくり満ちていく。
「うん。大丈夫。痛くないみたい。」
私の返事に満足したのか、義兄さんは「そうか」と一言呟いて、頬を撫でていた手で銀糸を一房掬った後に、静かに離した。
私を見つめる青い瞳をじっと見つめれば、そこにはただ凪いでいるだけではない、どこか熱を含んで揺れていた。
その熱に、私の胸の内が反応して、紫の魔素が火照りを帯びて、ほんの少し体温を上げる。
「喉が渇いてないか?」
義兄が一度目を逸らして立ち上がり、そう言いながら、グラスに水を注いでいる。
そのグラスの細かな切り込みの華に陽の光が反射して、プリズムを散らす。その虹色が眩しくて目を伏せる。
「ありがとう」
差し出されたグラスに触れれば、そのままグラスを持つ義兄さんの手に指が触れて、また一度体温が上がる。
慌てて受け取って、水を一口飲めば、濃いミントが鼻腔を抜けていき、身体の中まで義兄さんの温度に満たされたような気持ちになっていく。
ふぅと吐いた息にすら、うっすらとミントが混じり、身体の火照りは一向に冷めてはいかない。
「リィナ。」
半分ほど空になったグラスを、私の手から静かに取り上げて、義兄さんが私を呼んだ。
交錯する視線に、今までとはまるで違う『欲』が絡み、潤したはずの私の喉が驚きに渇いていく。
「リィナ、俺を選べ。」
もう一度、義兄さんが私の頬に手を伸ばす。触れた指先はさらに熱く、今度は私の胸の内を焦がしていく。
「俺以外を選ぶな。」
息を呑んでほんのりと開いた私の唇に、義兄さんの熱が重なった。
青く恋情に滾った魔素が私の内へと流れ込み、私の身の内全てを溶かしていく。
義兄さんは頬に触れていない方の手で、私の指を絡め取るように繋いだ。
唇が触れ合ったのは、ほんの僅かな時間。
けれど、その一瞬が私達の全てを変えてしまった。
「どうして?」
ーーどうして、急に?
絡め取られた指先が期待に震えて、問う声は掠れる。
義兄さんがぎゅっと私の手を握り返し、熱く濡れた青で私を捕らえる。
…ふっと息が止まる。
「俺がお前を愛しているからだ。お前を守るのは、今までもこれからも俺だけだ。」
その言葉に全身の細胞が甘酸っぱく震えて、何も言えなくなってしまった。
返事の代わりに、両目から涙が溢れて止まらない。
「リィナ。そうしてくれるか?」
義兄さんは、ちょっとだけ瞼を伏せて、頬に添えた手で涙を拭いながら、私の眦に一つ二つと、キスを落としていく。
「うん…」
やっと返事を絞り出して頷けば、義兄さんは嬉しそうに頬を緩めて笑った。
ふわりとミントの香りが私達の間で踊る。
「あのね…私も義兄さんが好き、なの」
私の告白に、義兄さんは一瞬だけ目を見開いて驚いた表情をした後、私を抱き寄せた。
固い騎士服に顔を寄せれば、義兄さんの鼓動が鼓膜に伝わってくる。
私達の距離は、ゼロになって…
そして、今までとは違う関係で「日常」
が始まる。
窓辺に飾られたフリルを重ねた白い花から、淡く甘い香りがした。
青紫の泥濘の中で彷徨っていると、どこからか、海生が私を呼んでいる声がした。
いつだって、この低く穏やかな声が私をこの世界へと引き上げてくれる。
青紫の温かな流れの底から、湧き上がる泡のように一気に意識が浮上する。
目を開けると、穏やかな凪の青が私を覗き込んでいた。
「義兄さん…?」
「ああ。痛みはどうだ?」
頷きながら、義兄さんがそっと私の頬に手を添えて、優しく撫でる。触れる指の冷たさが心地良く、安堵に身体が解けていく。
ーー私…魔獣に襲われて…あれ?お腹を…?!
はっとして抉られた場所に手を当てれば、そこはもう瘡蓋のような小さな凹凸が指先に引っかかるだけだった。
「痛く…ない?」
魔獣に襲われたはずなのに、痛みはどこにもなくて、ただ、胸の奥まであたたかさがゆっくり満ちていく。
「うん。大丈夫。痛くないみたい。」
私の返事に満足したのか、義兄さんは「そうか」と一言呟いて、頬を撫でていた手で銀糸を一房掬った後に、静かに離した。
私を見つめる青い瞳をじっと見つめれば、そこにはただ凪いでいるだけではない、どこか熱を含んで揺れていた。
その熱に、私の胸の内が反応して、紫の魔素が火照りを帯びて、ほんの少し体温を上げる。
「喉が渇いてないか?」
義兄が一度目を逸らして立ち上がり、そう言いながら、グラスに水を注いでいる。
そのグラスの細かな切り込みの華に陽の光が反射して、プリズムを散らす。その虹色が眩しくて目を伏せる。
「ありがとう」
差し出されたグラスに触れれば、そのままグラスを持つ義兄さんの手に指が触れて、また一度体温が上がる。
慌てて受け取って、水を一口飲めば、濃いミントが鼻腔を抜けていき、身体の中まで義兄さんの温度に満たされたような気持ちになっていく。
ふぅと吐いた息にすら、うっすらとミントが混じり、身体の火照りは一向に冷めてはいかない。
「リィナ。」
半分ほど空になったグラスを、私の手から静かに取り上げて、義兄さんが私を呼んだ。
交錯する視線に、今までとはまるで違う『欲』が絡み、潤したはずの私の喉が驚きに渇いていく。
「リィナ、俺を選べ。」
もう一度、義兄さんが私の頬に手を伸ばす。触れた指先はさらに熱く、今度は私の胸の内を焦がしていく。
「俺以外を選ぶな。」
息を呑んでほんのりと開いた私の唇に、義兄さんの熱が重なった。
青く恋情に滾った魔素が私の内へと流れ込み、私の身の内全てを溶かしていく。
義兄さんは頬に触れていない方の手で、私の指を絡め取るように繋いだ。
唇が触れ合ったのは、ほんの僅かな時間。
けれど、その一瞬が私達の全てを変えてしまった。
「どうして?」
ーーどうして、急に?
絡め取られた指先が期待に震えて、問う声は掠れる。
義兄さんがぎゅっと私の手を握り返し、熱く濡れた青で私を捕らえる。
…ふっと息が止まる。
「俺がお前を愛しているからだ。お前を守るのは、今までもこれからも俺だけだ。」
その言葉に全身の細胞が甘酸っぱく震えて、何も言えなくなってしまった。
返事の代わりに、両目から涙が溢れて止まらない。
「リィナ。そうしてくれるか?」
義兄さんは、ちょっとだけ瞼を伏せて、頬に添えた手で涙を拭いながら、私の眦に一つ二つと、キスを落としていく。
「うん…」
やっと返事を絞り出して頷けば、義兄さんは嬉しそうに頬を緩めて笑った。
ふわりとミントの香りが私達の間で踊る。
「あのね…私も義兄さんが好き、なの」
私の告白に、義兄さんは一瞬だけ目を見開いて驚いた表情をした後、私を抱き寄せた。
固い騎士服に顔を寄せれば、義兄さんの鼓動が鼓膜に伝わってくる。
私達の距離は、ゼロになって…
そして、今までとは違う関係で「日常」
が始まる。
窓辺に飾られたフリルを重ねた白い花から、淡く甘い香りがした。
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