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第六章 十三人目
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住宅街の一角では、深夜にもかかわらず、無数のパトカーや救急車で騒動となっていた。
事故に遭い、まったくもって形をとどめていない轢死体であったが、踏みつけられたレインコートから財布が出てきたことにより事態が急変した。
女性の持ち物であるのに不信感を抱いた捜査員が、なかを調べると『井関幹恵』と書かれた免許証やクレジットカードが出てきた。
住所を見ると、すぐ目の前にあり、訪ねてみるも応答がない。
ドアノブを引くと施錠もされておらず、声をかけつつなかに入ると、血まみれで倒れている女性を発見し、すぐさま病院に搬送されたという経緯であった。
***
「まーた、事件かいな」
仮眠室から叩き起こされた高橋刑事は、ぼりぼりと頭を掻く。
このたびは担当ではないものの、毎日のように発生する物騒な事件に辟易していた。
「被害者は井関幹恵、三十二歳。専業主婦をしていまして、近所の話によると、この日はお茶を習いに出かけていたらしく、先に忍び込んでいた窃盗犯により、側頭部を強打された模様です」
「それじゃぁ、無事なのかのぉ」
「はい、しかし予断を許さない状況ではあります。それで犯人のほうは逃走中にトラックと乗用車に相次いで撥ねられまして、死亡が確認されています――」
捜査員の話によると、遺体の損傷が激しく、いまだに身元がわからないとのこと。
ただ井関のほかに、もうひとつ入っていた財布からは、『吉野木誠一』と書かれた病院の診察券が出てきたと告げた。
「吉野木? 経営者殺しにもおった吉野木かいな」
その名前を聞いた高橋は、捜査員の肩を両手で掴む。
口を開けたまま、ガクンガクンと前後に首が揺れていた。
「は、は、はい。目下のところ、その見方が濃厚です。現在、彼のマンションを訪ねていますが、誰もいないとのことでして、今はリュックに入っていたスマホの解析をしております」
「吉野木と被害者の女性に接点はあるのか?」
「それについても調査中でありますが、鍵を持っていたのです。井関宅の」
「なんじゃと」
この状況から推測される自然な解答は、井関が落とした家の鍵を吉野木が拾い、空き巣に入った。
だがしかし、運悪く帰ってきた家主と鉢合わせしてしまったので殺害し。その後、赤信号に気づかず飛び出したため撥ねられた。――と。
「麦仲の件がなかったら、それで決着じゃろうが、なーんか匂うのぉ」
「そうですね。経営者殺害事件から派生したとも考えらなくもありません」
「ぐぬぬ……。なにがどーなっているんぞい」
仮眠室から出た老刑事は、別棟にある交通課へと赴く。
できる限り情報を集め、七美に丸投げしたほうが得策だと考えた。
事故に遭い、まったくもって形をとどめていない轢死体であったが、踏みつけられたレインコートから財布が出てきたことにより事態が急変した。
女性の持ち物であるのに不信感を抱いた捜査員が、なかを調べると『井関幹恵』と書かれた免許証やクレジットカードが出てきた。
住所を見ると、すぐ目の前にあり、訪ねてみるも応答がない。
ドアノブを引くと施錠もされておらず、声をかけつつなかに入ると、血まみれで倒れている女性を発見し、すぐさま病院に搬送されたという経緯であった。
***
「まーた、事件かいな」
仮眠室から叩き起こされた高橋刑事は、ぼりぼりと頭を掻く。
このたびは担当ではないものの、毎日のように発生する物騒な事件に辟易していた。
「被害者は井関幹恵、三十二歳。専業主婦をしていまして、近所の話によると、この日はお茶を習いに出かけていたらしく、先に忍び込んでいた窃盗犯により、側頭部を強打された模様です」
「それじゃぁ、無事なのかのぉ」
「はい、しかし予断を許さない状況ではあります。それで犯人のほうは逃走中にトラックと乗用車に相次いで撥ねられまして、死亡が確認されています――」
捜査員の話によると、遺体の損傷が激しく、いまだに身元がわからないとのこと。
ただ井関のほかに、もうひとつ入っていた財布からは、『吉野木誠一』と書かれた病院の診察券が出てきたと告げた。
「吉野木? 経営者殺しにもおった吉野木かいな」
その名前を聞いた高橋は、捜査員の肩を両手で掴む。
口を開けたまま、ガクンガクンと前後に首が揺れていた。
「は、は、はい。目下のところ、その見方が濃厚です。現在、彼のマンションを訪ねていますが、誰もいないとのことでして、今はリュックに入っていたスマホの解析をしております」
「吉野木と被害者の女性に接点はあるのか?」
「それについても調査中でありますが、鍵を持っていたのです。井関宅の」
「なんじゃと」
この状況から推測される自然な解答は、井関が落とした家の鍵を吉野木が拾い、空き巣に入った。
だがしかし、運悪く帰ってきた家主と鉢合わせしてしまったので殺害し。その後、赤信号に気づかず飛び出したため撥ねられた。――と。
「麦仲の件がなかったら、それで決着じゃろうが、なーんか匂うのぉ」
「そうですね。経営者殺害事件から派生したとも考えらなくもありません」
「ぐぬぬ……。なにがどーなっているんぞい」
仮眠室から出た老刑事は、別棟にある交通課へと赴く。
できる限り情報を集め、七美に丸投げしたほうが得策だと考えた。
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