【完結】その夏は、愛しくて残酷で

Ria★2巻発売中『簡単に聖女に魅了〜』

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三章 束の間

3−4

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 『ただいま。今帰ってきたところなんだけど、お土産買ってきたから後で会えるか?』

 『おかえり。暇してたところだから大丈夫だよ』

 私が旅行から帰ってきた翌日の午後、柊真から帰宅の連絡を貰い、早く会いたいなとスマホをぎゅっと握りしめた。
 
 五日ぶりにあった柊真は少し焼けたように見えた。GW結構楽しめたのかな。

 「お待たせ。いつも柊真が先に来てるね」

 「まぁ、美月を待たせるのは何かな。これ、お土産な。何がいいか悩んだんだけどさ……」

 袋を開けてみると、クッキー缶が入っており、蓋の部分に骨がちょこんと乗っていて可愛かった。
 私が好きそうなのを選んでくれてるんだね。
 
 「ありがとう。この蓋の部分が可愛いね。お菓子食べ終わった後も何か入れたりして使えそう」

 「美月なら食べた後も缶使いそうだよなって思って、可愛いっぽそうなのを選んだんだよな。気に入ってくれたなら、悩んだかいがあるな」

 「柊真は、本当に私のことがよく分かってるね。はい、私からのお土産はこれだよ」

 「お、ラーメンじゃん。やっぱ北海道っていったらラーメンだよな! 誰にも分けたくないから、明日の昼にでも作って一人で食べるか」

 「ふふっ、もっといっぱい入ってるの買ってくれば良かったね」

 「いや、いいって。俺だけ食べれればそれで」

 「もー」

 久しぶりに柊真に会えただけで、笑顔になれる。
 もっと柊真と触れ合いたいな……ぎゅってして欲しいな。
 そう思い、また両手を差し出す。

 「おまっ、また……」

 そう言いながらも、すでに同じようなやり取りをしたからか、すんなりと抱きしめてくれた。

 「なぁ、美月」

 「ん?」

 「少し痩せたか?」

 「……んー、どうだろう。体重測ってないから分からないや」

 「ちゃんと食べてるのか?」

 「食べてるよ。旅行だって北海道だったから沢山食べて来たんだからね」

 「そうだよな……」

 こんな嘘すぐバレちゃうかな? 夏に向けてダイエットしてるって言えば良かったかもしれないと後になって思った。
 家に帰り、リビングに入ると新しい写真が壁に貼られていた。

 リビングの壁には日に日に家族写真や私一人だけの写真などが増えていっている。
 その写真に写っている自分をみると、徐々に痩せていっているのが見てとれた。
 楽しい家族写真のはずなのに、なぜか私の命が徐々に削られていっているのを見ているようで、見ていられず目を逸らした。

 部屋に戻り、クッキーを一つ摘むと、缶に何を入れようか悩む。

 食べ終わって、空になったら考えようかな……あっ、そうだ。ちょうどいいかもしれない。

 缶に入ったお菓子を全て机に出し、空にすると、小さなメモ帳を取り出し一枚びりっと破った。

 これに、声に出せない気持ちを書き込んでいってこの缶の中に隠していこう。
 ずっと心の中に溜め込んでいるより、書き出した方が少しは気持ちが晴れるかもしれない。

 そう思い、一言書き込むと、言えなかった言葉が溢れるように出てきて、また一枚また一枚とメモ帳を破った。

 『死にたくない』

 『痛い』

 『忘れないで』

 『誰とも付き合わないで』

 『なんで私が……』

 『何が悪かったの』

 『何のために生まれてきたんだろう……』

 紙をグシャリと握り締め缶へと押し込み蓋をする。
 すっきりすると思ったのに、感情がぐちゃぐちゃで涙がポタポタと机を染めていく。

 苦しい……どうしたらいいの。
 みんなの記憶には良い子として残りたいのに、今にも叫び出したくなる衝動を抑えるのが苦しい。
 
 どうして、どうして、どうして……
 まだ16歳なのに……

 ……神様、私は何か悪いことをしたのでしょうか?

 
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