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四章 大好き
---柊真視点④---
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それから、担任が迎えにくると、このまま教室に戻るのは無理だろうと判断し、保健室へと連れて行かれた。
ベッドに横になりながら目を冷やしていると「お母さんが迎えにきてくれたわよ」と担任に言われた。
わざわざ母さん呼んだのか……
「……母さん、悪い。ちょっと取り乱した」
「仕方ないわよ……」
仕方ない……まさか、母さん美月の病気の事知ってたのか?
「なぁ、母さん。まさかと思うけど、美月のこと知ってた?」
「……ごめんね。美月ちゃんのお母さんから柊真には言わないで欲しいって言われてたの。美月ちゃんが知られたくないって言うからって……」
おばさんから聞いてたなんて……どうして言ってくれないんだよ!
思わず立ち上がり母さんの両肩を掴んだ。
「母さんが教えてくれさえすれば、もっと美月に寄り添うことができたのに! もっと一緒にいられたのに! どうして教えてくれなかったんだよ!」
「だって、美月ちゃんが……」
「どうしてだよ……美月」
母さんから手を離し、ベッドに腰をかけると止まらない涙をぐいっと腕で拭った。
「美月ちゃんも女の子なのよ。どんどん窶れていく姿を好きな人に見られたくなかったのね」
「そんなの……気にしないのに」
「柊真が気にしなくても美月ちゃんが気にするのよ。可愛かった頃の姿を最後に記憶して欲しいなんていじらしいじゃない」
「でも……」
「柊真の気持ちもわかるわ。美月ちゃんに言って欲しかったのよね。頼って欲しかったのよね。大好きだったんだもの」
「うん……」
「でも、最後は、美月ちゃんの我儘をちゃんと受け入れてあげないとね。最後の美月ちゃんのお願いなんだもの」
「……」
美月の最後の願いか……
もっと違うことを願って欲しかった。
家についてもじわじわと溢れてくる涙を止めることは出来なかった。
それから数日して、美月のお母さんが訪ねてきた。
夏祭りの時も痩せたなと思ったけど、今はその時よりも窶れていた。
無理もないか。大事な一人娘を亡くしたんだから……
「急にごめんなさいね。これ、きっと柊真くんにもらって欲しいんじゃないかなって思って持ってきたんだけど、受け取ってもらえるかしら?」
そういって、紙袋から箱を二つ取り出した。
一つはラッピングされたもので、もう一つはただの箱だった。
中には何が入っているのか……
とりあえず、ラッピングされてない方の箱の蓋を開けた。
すると、真ん中に俺があげた手帳が置かれていた。
「それね。ちょっと読んだんだけど……初めは、柊真くんに見てもらおうと思って、沖縄旅行のおすすめの場所とかが書いてあったのよ。でもね……途中から普通の日記になっていっててね。柊真くんとケーキを食べたとか簪買ってもらったとかそういうことばかり書いてあるのよ」
「そ、うですか」
手帳を手に取りページを捲ると、家族で沖縄旅行に行った時の写真やおすすめの料理屋などの情報が載っていた。
苦味が抑えられたゴーヤ料理が食べられるだの、マリンクラフト体験で貝の写真立てを作ったこと。
海で拾った貝殻を瓶に詰めた写真など、美月が目一杯楽しみ、生きた証が綴られていた。
ポタポタと流れる涙で手帳が濡れないようにと、さっとティッシュと手に取った。
「それじゃ、私はもう失礼するから、ゆっくり見てあげてね」
「はい……ありがとうございました」
おばさんを見送り、箱を持って自分の部屋へと向かった。
箱を開けると、美月にあげた簪も入っていて、夏祭りの時の美月可愛かったなと、浴衣姿の美月が目に浮かんだ。
他には何が……俺があげたお土産の缶か? 机に飾ってるって言ってたよな。俺も机に飾っとくかと缶を手に取るとカサリと紙の音がした。
中に何か入ってるのか……?
中を開けるとくしゃくしゃにされた紙が押し込められていた。
一つ一つ開いていくと……美月の苦しい胸の内が書き込まれていた。
『死にたくない』
『痛い』
『忘れないで』
美月の辛さを痛いほど感じ、膝から崩れ落ちた。
「美月、気付いてあげられなくてごめんな。こんなに苦しんでたのに……」
ひとしきり泣いて、ぼーっと天井を見つめているともう一つの箱の存在を思い出した。
そういえば、なんかラッピングされた箱があったよな……
リボンを解き、蓋を開けるとネックウォーマーがいくつも入っていて、メッセージカードが添えられていた。
『16歳おめでとー‼︎ 一緒にお祝いできなくて残念‼︎ プレゼントもう見たかな? 気に入ってくれると嬉しいな❤︎』
まるで、美月の声が聞こえてきそうな、いつも通りな美月のメッセージカードに、止まったはずの涙が、ポタポタと零れ落ち、文字が滲んだ。
「ヤバっ、あー……文字が滲んじゃったじゃないかよ……ったく、何やってんだよ、俺」
これ以上文字が滲まないようにとそっとティッシュを押し当てた。
誕生日まで後2ヶ月半くらいあるけどな。ちょっと早い誕生日プレゼントありがとな。
これのことも手帳に書いてたりするのかとペラペラと捲っていくと……あった!
『初めはミシンだけだったけど、編み物もやってみたくて、お母さんに教えてもらいながら作ったんだけど、目の大きさを同じにしたりするのが難しくて、ちょっと歪になっちゃった。これ、没にしようかなって思ったんだけど、お母さんが気持ちが大事なんだから、いいのよって言ってくれたから、箱に詰めちゃったけど、大丈夫かなー』
これ……全部美月の手作りなのか……
編み物なんてしたこともないのに、俺のために……
こんなに作って……何年もネックウォーマーに困らなくていいな。
美月、ありがとう。
おもむろにメッセージカードの裏を見てみると、一言添えられていた。
「はっ……美月は残酷だな。こんなにもお前のこと好きにさせといて、何も言わずに逝くなんて」
『ーーあなたの心の片隅に住わせて』
心の片隅どころか、俺の心はお前でいっぱいだよ。一杯すぎて溢れそうなほどに……
なぁ、最後に俺と付き合って、幸せだったか?
外はジリジリと日差しが照り返す中、もこもこと暖かいネックウォーマーを首に巻き、静かに涙を流した。
ベッドに横になりながら目を冷やしていると「お母さんが迎えにきてくれたわよ」と担任に言われた。
わざわざ母さん呼んだのか……
「……母さん、悪い。ちょっと取り乱した」
「仕方ないわよ……」
仕方ない……まさか、母さん美月の病気の事知ってたのか?
「なぁ、母さん。まさかと思うけど、美月のこと知ってた?」
「……ごめんね。美月ちゃんのお母さんから柊真には言わないで欲しいって言われてたの。美月ちゃんが知られたくないって言うからって……」
おばさんから聞いてたなんて……どうして言ってくれないんだよ!
思わず立ち上がり母さんの両肩を掴んだ。
「母さんが教えてくれさえすれば、もっと美月に寄り添うことができたのに! もっと一緒にいられたのに! どうして教えてくれなかったんだよ!」
「だって、美月ちゃんが……」
「どうしてだよ……美月」
母さんから手を離し、ベッドに腰をかけると止まらない涙をぐいっと腕で拭った。
「美月ちゃんも女の子なのよ。どんどん窶れていく姿を好きな人に見られたくなかったのね」
「そんなの……気にしないのに」
「柊真が気にしなくても美月ちゃんが気にするのよ。可愛かった頃の姿を最後に記憶して欲しいなんていじらしいじゃない」
「でも……」
「柊真の気持ちもわかるわ。美月ちゃんに言って欲しかったのよね。頼って欲しかったのよね。大好きだったんだもの」
「うん……」
「でも、最後は、美月ちゃんの我儘をちゃんと受け入れてあげないとね。最後の美月ちゃんのお願いなんだもの」
「……」
美月の最後の願いか……
もっと違うことを願って欲しかった。
家についてもじわじわと溢れてくる涙を止めることは出来なかった。
それから数日して、美月のお母さんが訪ねてきた。
夏祭りの時も痩せたなと思ったけど、今はその時よりも窶れていた。
無理もないか。大事な一人娘を亡くしたんだから……
「急にごめんなさいね。これ、きっと柊真くんにもらって欲しいんじゃないかなって思って持ってきたんだけど、受け取ってもらえるかしら?」
そういって、紙袋から箱を二つ取り出した。
一つはラッピングされたもので、もう一つはただの箱だった。
中には何が入っているのか……
とりあえず、ラッピングされてない方の箱の蓋を開けた。
すると、真ん中に俺があげた手帳が置かれていた。
「それね。ちょっと読んだんだけど……初めは、柊真くんに見てもらおうと思って、沖縄旅行のおすすめの場所とかが書いてあったのよ。でもね……途中から普通の日記になっていっててね。柊真くんとケーキを食べたとか簪買ってもらったとかそういうことばかり書いてあるのよ」
「そ、うですか」
手帳を手に取りページを捲ると、家族で沖縄旅行に行った時の写真やおすすめの料理屋などの情報が載っていた。
苦味が抑えられたゴーヤ料理が食べられるだの、マリンクラフト体験で貝の写真立てを作ったこと。
海で拾った貝殻を瓶に詰めた写真など、美月が目一杯楽しみ、生きた証が綴られていた。
ポタポタと流れる涙で手帳が濡れないようにと、さっとティッシュと手に取った。
「それじゃ、私はもう失礼するから、ゆっくり見てあげてね」
「はい……ありがとうございました」
おばさんを見送り、箱を持って自分の部屋へと向かった。
箱を開けると、美月にあげた簪も入っていて、夏祭りの時の美月可愛かったなと、浴衣姿の美月が目に浮かんだ。
他には何が……俺があげたお土産の缶か? 机に飾ってるって言ってたよな。俺も机に飾っとくかと缶を手に取るとカサリと紙の音がした。
中に何か入ってるのか……?
中を開けるとくしゃくしゃにされた紙が押し込められていた。
一つ一つ開いていくと……美月の苦しい胸の内が書き込まれていた。
『死にたくない』
『痛い』
『忘れないで』
美月の辛さを痛いほど感じ、膝から崩れ落ちた。
「美月、気付いてあげられなくてごめんな。こんなに苦しんでたのに……」
ひとしきり泣いて、ぼーっと天井を見つめているともう一つの箱の存在を思い出した。
そういえば、なんかラッピングされた箱があったよな……
リボンを解き、蓋を開けるとネックウォーマーがいくつも入っていて、メッセージカードが添えられていた。
『16歳おめでとー‼︎ 一緒にお祝いできなくて残念‼︎ プレゼントもう見たかな? 気に入ってくれると嬉しいな❤︎』
まるで、美月の声が聞こえてきそうな、いつも通りな美月のメッセージカードに、止まったはずの涙が、ポタポタと零れ落ち、文字が滲んだ。
「ヤバっ、あー……文字が滲んじゃったじゃないかよ……ったく、何やってんだよ、俺」
これ以上文字が滲まないようにとそっとティッシュを押し当てた。
誕生日まで後2ヶ月半くらいあるけどな。ちょっと早い誕生日プレゼントありがとな。
これのことも手帳に書いてたりするのかとペラペラと捲っていくと……あった!
『初めはミシンだけだったけど、編み物もやってみたくて、お母さんに教えてもらいながら作ったんだけど、目の大きさを同じにしたりするのが難しくて、ちょっと歪になっちゃった。これ、没にしようかなって思ったんだけど、お母さんが気持ちが大事なんだから、いいのよって言ってくれたから、箱に詰めちゃったけど、大丈夫かなー』
これ……全部美月の手作りなのか……
編み物なんてしたこともないのに、俺のために……
こんなに作って……何年もネックウォーマーに困らなくていいな。
美月、ありがとう。
おもむろにメッセージカードの裏を見てみると、一言添えられていた。
「はっ……美月は残酷だな。こんなにもお前のこと好きにさせといて、何も言わずに逝くなんて」
『ーーあなたの心の片隅に住わせて』
心の片隅どころか、俺の心はお前でいっぱいだよ。一杯すぎて溢れそうなほどに……
なぁ、最後に俺と付き合って、幸せだったか?
外はジリジリと日差しが照り返す中、もこもこと暖かいネックウォーマーを首に巻き、静かに涙を流した。
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→2024.3.4再投稿。大幅に追加&修正をしたので、もしよければ読んでみて下さい(^^)
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