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二章 嫉妬
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梅雨が明けて本格的な夏の訪れを告げていた。
梅雨の間は、本当に私の心も同じようにジメジメとしていた。
まさか……二週続けて会えないと思わなかったんだもん。
時々晴れ間が見えても平日で、肝心の週末は雨という始末。
三週間ぶりに奏くんに会える……
「クッキーも獅子丸くんに会えなくて寂しかったよね。今日は思いっきり遊ぼうね!」
「わふっ!」
尻尾をブンブンと振り回し喜んでいるクッキーに首輪をつけ、家を後にする。
はぁ、暑い……夏だなー。
日焼け止めもしっかり塗って、帽子も被って日焼け対策はバッチリ!
公園に着くと、奏くんが膝に獅子丸を抱いて遊んでいた。
可愛い……こっそり写真撮りたいけど……だめだよね。
奏くん、髪切ったんだ。
襟足にかかっていた後ろ髪はさっぱりと刈り上げられていた。
白いTシャツが爽やかで、とても眩しい。
イケメン度が増してるっ! やばいっ! 落ち着け自分!
変に思われないように、深呼吸をして気持ちを落ち着かせてから奏くんに声をかける。
「奏くん、獅子丸くん、久しぶりだね」
「おー、茉莉絵とクッキー久しぶりだな。ほらっ、獅子丸。良かったな、遊んでもらえ」
奏くんが抱いていた獅子丸くんを地面に下ろし、クッキーがゆっくりと近付く。そして、前足をテシっと獅子丸くんの頭に乗せた。
それから二匹で戯れ合う姿をベンチに座りながら眺める。
可愛すぎて、写真を撮らないわけもなく、連写のしすぎで奏くんに笑われてしまった。
「お前さー、写真撮りすぎじゃない? 写真フォルダ同じような写真で一杯なんじゃない?」
「う……可愛い瞬間を撮り逃したくなくて……。でも、家に帰ってから厳選して他のは削除してるから私の写真フォルダは最高のクッキーしかいないんだよ」
「消せないタイプかと思ったけど、そういう整理は出来るんだな」
「もしかして、整理整頓できないタイプだと思われてた……?」
「いや、そういうのとは違って……クッキーの全てを残しておきたいっていうタイプかと思って」
「あー、なるほど。残せるものは残すけど、流石に連写しまくってると同じような写真ばかりになっちゃうからね。その時の最高の一枚を残しておきたいかな」
「良いな、それ。俺も獅子丸の今日の一枚っていうのを撮ってみるか」
「うんうん、楽しいよー」
それからは、二人で愛犬の撮影会になり……どさくさに紛れて、奏くんが二匹を撮ってる姿を隠し撮りしてしまった。
これくらい……いいよね?
「そういえば、奏くん髪切ったんだね。すぐ気付いたんだけど、言いそびれちゃった」
「あぁ、流石に暑いからなー。後ろ刈り上げてだいぶ涼しくなったな」
「めっちゃ似合ってる」
「そりゃ、どーも」
髪型が変わっただけで、なんか男らしくなった気がする。
前は、男らしいというよりは綺麗な感じがしていたけど……
「おい……見過ぎ」
「あっ、ごめん。いや、本当に似合ってるなーって思って」
格好良すぎて、見つめすぎちゃった。
「まぁ、ほどほどで……」
「はい……」
私の変な行動に、奏くんは照れたような顔をすることはあっても、嫌な顔は一度もしたことがない。
自分でも引くくらい積極的じゃない? と思わなくもないけど、奏くんはそれを許容してくれている。
きっと、私の気持ちも伝わってると思う。
それでも、告白してこない私の気持ちも多分わかってくれてるんだと思う。
はぁ……好き。
言葉に出来ないから、心の中で何度も呟く。
「あっ、そろそろ飲み物タイムにしようか」
「あぁ、そうだな。流石に暑いからな、水分補給の回数は増やしていかないとな」
「うんうん」
バッグから水受けと水筒を取り出し、クッキーに与える。
クッキーの好きなジャーキーもおやつで持ってきた。獅子丸くんも食べるかなと多めに持ってきたけど、どうだろう。
「奏くん、これ獅子丸くんにあげても大丈夫かな?」
「お、獅子丸良かったな。これ好きだよな?」
「良かった! はい、獅子丸くんもどうぞ」
差し出すと小さな口で咥えて、クッキーの隣で転がりながら一生懸命食べていて、可愛いなーと思っていると、クッキーがもう一個くれと催促をしてきていた。
「食べ過ぎも悪いから、これで終わりだからね?」
「わふっ」
「ふふっ、よしよし、お利口さんね」
二匹のおやつタイムを写真を撮りつつ見守っていると、奏くんが鞄からランチバッグを取り出した。
「これ……母さんが持って行けって……」
「え……?」
取り出したランチバッグに入っていたのは、グレープフルーツゼリーだった。
保冷剤もしっかり入っていて、使い捨てのスプーンまで用意されていた。
だから、今日はいつもより鞄が大きかったんだ。
「ほら、暑いだろ? さっぱりとした冷たい食べ物が良いだろうって母さんが張り切って作ってさ」
「この前もクッキー貰ったのに、今日も貰っちゃっていいのかな?」
「変に遠慮すんなよ? 母さんは好きで作ってるだけだから、嫌いじゃなければ、食べて貰えると喜ぶよ」
「じゃあ、遠慮なく頂きます!」
「どうぞ召し上がれ」
「本当に、この暑さにさっぱり冷たいゼリーは良いね! お母さんナイスチョイスだね」
「確かにな。母さんに礼言わないとな」
「うん。美味しかったです、ありがとうございますって伝えてね」
「おう」
何度ももらってばかりじゃだめだよね。
何かお礼をしたいけど……
「ねぇ、奏くんのお母さんって何が好きなの? 甘いものとか好きかな? チョコとか」
「あー、そうだな……って、お返しとか要らないからな? 変にお返しされると、母さんも作りにくくなるだろ? 好きで作ってるだけだから。それに対してお返しすれば、気を使わせちゃったかなとか言いそうだからな」
「そっか。せっかく作ってくれてるのに、気分を害したくないからやめとくね。でも、感謝だけはちゃんと伝えてくれると嬉しいな」
「了解。任せとけ」
いつか直接お礼を言えるといいな。
梅雨の間は、本当に私の心も同じようにジメジメとしていた。
まさか……二週続けて会えないと思わなかったんだもん。
時々晴れ間が見えても平日で、肝心の週末は雨という始末。
三週間ぶりに奏くんに会える……
「クッキーも獅子丸くんに会えなくて寂しかったよね。今日は思いっきり遊ぼうね!」
「わふっ!」
尻尾をブンブンと振り回し喜んでいるクッキーに首輪をつけ、家を後にする。
はぁ、暑い……夏だなー。
日焼け止めもしっかり塗って、帽子も被って日焼け対策はバッチリ!
公園に着くと、奏くんが膝に獅子丸を抱いて遊んでいた。
可愛い……こっそり写真撮りたいけど……だめだよね。
奏くん、髪切ったんだ。
襟足にかかっていた後ろ髪はさっぱりと刈り上げられていた。
白いTシャツが爽やかで、とても眩しい。
イケメン度が増してるっ! やばいっ! 落ち着け自分!
変に思われないように、深呼吸をして気持ちを落ち着かせてから奏くんに声をかける。
「奏くん、獅子丸くん、久しぶりだね」
「おー、茉莉絵とクッキー久しぶりだな。ほらっ、獅子丸。良かったな、遊んでもらえ」
奏くんが抱いていた獅子丸くんを地面に下ろし、クッキーがゆっくりと近付く。そして、前足をテシっと獅子丸くんの頭に乗せた。
それから二匹で戯れ合う姿をベンチに座りながら眺める。
可愛すぎて、写真を撮らないわけもなく、連写のしすぎで奏くんに笑われてしまった。
「お前さー、写真撮りすぎじゃない? 写真フォルダ同じような写真で一杯なんじゃない?」
「う……可愛い瞬間を撮り逃したくなくて……。でも、家に帰ってから厳選して他のは削除してるから私の写真フォルダは最高のクッキーしかいないんだよ」
「消せないタイプかと思ったけど、そういう整理は出来るんだな」
「もしかして、整理整頓できないタイプだと思われてた……?」
「いや、そういうのとは違って……クッキーの全てを残しておきたいっていうタイプかと思って」
「あー、なるほど。残せるものは残すけど、流石に連写しまくってると同じような写真ばかりになっちゃうからね。その時の最高の一枚を残しておきたいかな」
「良いな、それ。俺も獅子丸の今日の一枚っていうのを撮ってみるか」
「うんうん、楽しいよー」
それからは、二人で愛犬の撮影会になり……どさくさに紛れて、奏くんが二匹を撮ってる姿を隠し撮りしてしまった。
これくらい……いいよね?
「そういえば、奏くん髪切ったんだね。すぐ気付いたんだけど、言いそびれちゃった」
「あぁ、流石に暑いからなー。後ろ刈り上げてだいぶ涼しくなったな」
「めっちゃ似合ってる」
「そりゃ、どーも」
髪型が変わっただけで、なんか男らしくなった気がする。
前は、男らしいというよりは綺麗な感じがしていたけど……
「おい……見過ぎ」
「あっ、ごめん。いや、本当に似合ってるなーって思って」
格好良すぎて、見つめすぎちゃった。
「まぁ、ほどほどで……」
「はい……」
私の変な行動に、奏くんは照れたような顔をすることはあっても、嫌な顔は一度もしたことがない。
自分でも引くくらい積極的じゃない? と思わなくもないけど、奏くんはそれを許容してくれている。
きっと、私の気持ちも伝わってると思う。
それでも、告白してこない私の気持ちも多分わかってくれてるんだと思う。
はぁ……好き。
言葉に出来ないから、心の中で何度も呟く。
「あっ、そろそろ飲み物タイムにしようか」
「あぁ、そうだな。流石に暑いからな、水分補給の回数は増やしていかないとな」
「うんうん」
バッグから水受けと水筒を取り出し、クッキーに与える。
クッキーの好きなジャーキーもおやつで持ってきた。獅子丸くんも食べるかなと多めに持ってきたけど、どうだろう。
「奏くん、これ獅子丸くんにあげても大丈夫かな?」
「お、獅子丸良かったな。これ好きだよな?」
「良かった! はい、獅子丸くんもどうぞ」
差し出すと小さな口で咥えて、クッキーの隣で転がりながら一生懸命食べていて、可愛いなーと思っていると、クッキーがもう一個くれと催促をしてきていた。
「食べ過ぎも悪いから、これで終わりだからね?」
「わふっ」
「ふふっ、よしよし、お利口さんね」
二匹のおやつタイムを写真を撮りつつ見守っていると、奏くんが鞄からランチバッグを取り出した。
「これ……母さんが持って行けって……」
「え……?」
取り出したランチバッグに入っていたのは、グレープフルーツゼリーだった。
保冷剤もしっかり入っていて、使い捨てのスプーンまで用意されていた。
だから、今日はいつもより鞄が大きかったんだ。
「ほら、暑いだろ? さっぱりとした冷たい食べ物が良いだろうって母さんが張り切って作ってさ」
「この前もクッキー貰ったのに、今日も貰っちゃっていいのかな?」
「変に遠慮すんなよ? 母さんは好きで作ってるだけだから、嫌いじゃなければ、食べて貰えると喜ぶよ」
「じゃあ、遠慮なく頂きます!」
「どうぞ召し上がれ」
「本当に、この暑さにさっぱり冷たいゼリーは良いね! お母さんナイスチョイスだね」
「確かにな。母さんに礼言わないとな」
「うん。美味しかったです、ありがとうございますって伝えてね」
「おう」
何度ももらってばかりじゃだめだよね。
何かお礼をしたいけど……
「ねぇ、奏くんのお母さんって何が好きなの? 甘いものとか好きかな? チョコとか」
「あー、そうだな……って、お返しとか要らないからな? 変にお返しされると、母さんも作りにくくなるだろ? 好きで作ってるだけだから。それに対してお返しすれば、気を使わせちゃったかなとか言いそうだからな」
「そっか。せっかく作ってくれてるのに、気分を害したくないからやめとくね。でも、感謝だけはちゃんと伝えてくれると嬉しいな」
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