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三章 逢瀬
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奏くんが夏期講習に突入し、週末に公園で会うことも無くなってしまった。
こればかりは仕方がないので、クッキーを連れて森の公園へと向かう。
夏の散歩は午前中だろうと暑いので、出来るだけ涼しい場所で遊べるようにと、森の公園に良く来ている。
森の公園というだけあって、木陰が多く、風が吹くと少し涼しく感じる。
「今度、奏くんと獅子丸くんも連れてここで遊ぼうね」
「わふっ」
クッキーは厚さにバテることなく、今日も元気一杯に体を動かしている。
ここは小さな川もあるため、涼みたいタイミングで川に入っては、水飛沫を飛ばし、走り回りと満喫していた。
「……お兄ちゃん、休みの日なのにデートとか友達と遊んだりとかしないの? せっかくバイト休みなのに」
そう、何故かお兄ちゃんも散歩についてきたのだ。
ちょうどクッキーにリードを付けていたら、お兄ちゃんが二階から降りてきたところだった。
私たちに気付くと「俺もいくからちょっと待ってろ」と言い、洗面台へと向かっていった。
そして、今に至る。
「あいつらとはしょっちゅう会ってるし、デートとかする気もないな」
「今は友達と遊ぶのが楽しいんだっけ?」
「そう。女って面倒なんだよな……」
「……それ、私に言う?」
「あぁ……仕方ないだろ。本当のことなんだから」
「……」
奏くんもお兄ちゃんみたいに、女なんて面倒くさいとか思ったりしてるのかな。
私と遊ぶよりも友達と遊びたいって思っちゃうかな……
受験が終わったら、奏くんとお付き合いして沢山遊びに行きたいって思ってたけど……もしかしたら、同じ高校に受かっても一緒にいる時間はあまりなかったりするのかな……
「はぁ、俺が悪かったよ。そんなに凹むな。あくまで俺の話だからな。あいつは違うと思うぞ」
「もう! 私ってそんなに分かりやすいの⁉︎」
「お前は昔から顔に出るからな。何考えてるか分からないやつよりいいだろ」
「えぇ……」
何考えてるか分かっちゃうのもなんかなぁ。
もう少しポーカーフェイスに出来ないかな? 真顔の練習をしてみるも、お兄ちゃんに「変顔やめろ」と笑われてしまった。
変顔したつもりないのに……
「靴擦れはもう治ったのか? こんなところまで来といて今更だけど」
「うん。もう大丈夫だよ。あの時はありがとうね」
「ならいい」
そういうと、お兄ちゃんは水浴びして遊んでいるクッキーの方へと歩いて行った。
フリスビーを投げては、クッキーが上手にキャッチし、尻尾をブンブンと大きく振りながら、もっと遊ぼうとお兄ちゃんにフリスビーを返していた。
イケメンが朝から犬と戯れている……これ、お兄ちゃんの学校の女の子たちが見たら、キャーキャー凄そうだな。
第一志望に受かったら、お兄ちゃんと同じ学校になる。
高校でお兄ちゃんがどんな風なのか見れるのは楽しみだな。
中学校でも十分モテてたけど、今はあの頃より背も伸びて男らしさも増した。
女子たちの人気が凄そうだ。まぁ、それはバレンタインデーに形として表れているけれど。
あ、今度のバレンタインデー奏くんにあげてもいいかな。甘いもの好きかなぁ。
って、まだ夏なのに、来年のこと考えてるなんて……
それに、その前に受験の合否発表がある。
その結果によっては、作ってる気分でもないかもしれない……
いや、毎日こんなに頑張ってるんだもん。大丈夫。
前向きに考えよう。
きっと、バレンタインデーには、二人で合格を祝っているはず。
奏くんは今頃、塾で勉強中かな。
私も負けてられない。帰ったらお昼まで少しやらないと。
「ちょっと動いただけで汗がやばいな」
そう言いながら、ベンチに腰をかけて汗を拭くお兄ちゃんは……無駄にイケメンだなとまじまじと見つめてしまう。
我が兄ながら、観賞用としてちょうどいいよねと思ってしまう。
お兄ちゃんと歩いていると、通りすがりの女子たちが良く「格好良い」と言いながら去っていくのを聞くので、『そうだろう。自慢の兄だからね。顔だけじゃなくて、頭もいいんだよ』と心の中で呟いている。
お兄ちゃんに好きな人が出来たら、仲良くしたい。お姉ちゃん欲しかったんだよね。
あ、でもウザがられないように、気をつけないと。
「お前、勉強順調なのか?」
「今のところ良い感じに問題集進められてると思うけど……あ、そうだ。お兄ちゃんに一問聞こうと思ってたのあったんだった」
「分かった。帰ったら見てやる」
「ありがとー! 持つべきは優秀な兄だよね!」
「はいはい、頑張れよ」
「うん!」
それから一時間ほど遊んで家に帰宅した。
流石に、森の公園とはいえ、夏の暑さで二人とも汗だくなため、またして私からシャワーを浴びさせて貰った。
レディーファースト精神は、お祖父ちゃん譲りなのかな。
待たせるのも悪いから、ささっと済ませて、リビングへと向かうとクーラーの涼しい風に癒される。
疲れたなーっとソファーに腰掛けると、お兄ちゃんがアイスを持ってきてくれた。
「暑かったから、ちゃんと体冷やせよ」
「うん、ありがとう」
シャワーに向かう兄の背中を見つめながら、相変わらず気がきくなと思う。
これを彼女とかに発揮してあげてほしいなと常々思っているが、彼女はいない。
誰かお兄ちゃんのハートを射止めてくれないかな。
めっちゃ甘やかして大事にしてくれると思うんだけどな。
こればかりは仕方がないので、クッキーを連れて森の公園へと向かう。
夏の散歩は午前中だろうと暑いので、出来るだけ涼しい場所で遊べるようにと、森の公園に良く来ている。
森の公園というだけあって、木陰が多く、風が吹くと少し涼しく感じる。
「今度、奏くんと獅子丸くんも連れてここで遊ぼうね」
「わふっ」
クッキーは厚さにバテることなく、今日も元気一杯に体を動かしている。
ここは小さな川もあるため、涼みたいタイミングで川に入っては、水飛沫を飛ばし、走り回りと満喫していた。
「……お兄ちゃん、休みの日なのにデートとか友達と遊んだりとかしないの? せっかくバイト休みなのに」
そう、何故かお兄ちゃんも散歩についてきたのだ。
ちょうどクッキーにリードを付けていたら、お兄ちゃんが二階から降りてきたところだった。
私たちに気付くと「俺もいくからちょっと待ってろ」と言い、洗面台へと向かっていった。
そして、今に至る。
「あいつらとはしょっちゅう会ってるし、デートとかする気もないな」
「今は友達と遊ぶのが楽しいんだっけ?」
「そう。女って面倒なんだよな……」
「……それ、私に言う?」
「あぁ……仕方ないだろ。本当のことなんだから」
「……」
奏くんもお兄ちゃんみたいに、女なんて面倒くさいとか思ったりしてるのかな。
私と遊ぶよりも友達と遊びたいって思っちゃうかな……
受験が終わったら、奏くんとお付き合いして沢山遊びに行きたいって思ってたけど……もしかしたら、同じ高校に受かっても一緒にいる時間はあまりなかったりするのかな……
「はぁ、俺が悪かったよ。そんなに凹むな。あくまで俺の話だからな。あいつは違うと思うぞ」
「もう! 私ってそんなに分かりやすいの⁉︎」
「お前は昔から顔に出るからな。何考えてるか分からないやつよりいいだろ」
「えぇ……」
何考えてるか分かっちゃうのもなんかなぁ。
もう少しポーカーフェイスに出来ないかな? 真顔の練習をしてみるも、お兄ちゃんに「変顔やめろ」と笑われてしまった。
変顔したつもりないのに……
「靴擦れはもう治ったのか? こんなところまで来といて今更だけど」
「うん。もう大丈夫だよ。あの時はありがとうね」
「ならいい」
そういうと、お兄ちゃんは水浴びして遊んでいるクッキーの方へと歩いて行った。
フリスビーを投げては、クッキーが上手にキャッチし、尻尾をブンブンと大きく振りながら、もっと遊ぼうとお兄ちゃんにフリスビーを返していた。
イケメンが朝から犬と戯れている……これ、お兄ちゃんの学校の女の子たちが見たら、キャーキャー凄そうだな。
第一志望に受かったら、お兄ちゃんと同じ学校になる。
高校でお兄ちゃんがどんな風なのか見れるのは楽しみだな。
中学校でも十分モテてたけど、今はあの頃より背も伸びて男らしさも増した。
女子たちの人気が凄そうだ。まぁ、それはバレンタインデーに形として表れているけれど。
あ、今度のバレンタインデー奏くんにあげてもいいかな。甘いもの好きかなぁ。
って、まだ夏なのに、来年のこと考えてるなんて……
それに、その前に受験の合否発表がある。
その結果によっては、作ってる気分でもないかもしれない……
いや、毎日こんなに頑張ってるんだもん。大丈夫。
前向きに考えよう。
きっと、バレンタインデーには、二人で合格を祝っているはず。
奏くんは今頃、塾で勉強中かな。
私も負けてられない。帰ったらお昼まで少しやらないと。
「ちょっと動いただけで汗がやばいな」
そう言いながら、ベンチに腰をかけて汗を拭くお兄ちゃんは……無駄にイケメンだなとまじまじと見つめてしまう。
我が兄ながら、観賞用としてちょうどいいよねと思ってしまう。
お兄ちゃんと歩いていると、通りすがりの女子たちが良く「格好良い」と言いながら去っていくのを聞くので、『そうだろう。自慢の兄だからね。顔だけじゃなくて、頭もいいんだよ』と心の中で呟いている。
お兄ちゃんに好きな人が出来たら、仲良くしたい。お姉ちゃん欲しかったんだよね。
あ、でもウザがられないように、気をつけないと。
「お前、勉強順調なのか?」
「今のところ良い感じに問題集進められてると思うけど……あ、そうだ。お兄ちゃんに一問聞こうと思ってたのあったんだった」
「分かった。帰ったら見てやる」
「ありがとー! 持つべきは優秀な兄だよね!」
「はいはい、頑張れよ」
「うん!」
それから一時間ほど遊んで家に帰宅した。
流石に、森の公園とはいえ、夏の暑さで二人とも汗だくなため、またして私からシャワーを浴びさせて貰った。
レディーファースト精神は、お祖父ちゃん譲りなのかな。
待たせるのも悪いから、ささっと済ませて、リビングへと向かうとクーラーの涼しい風に癒される。
疲れたなーっとソファーに腰掛けると、お兄ちゃんがアイスを持ってきてくれた。
「暑かったから、ちゃんと体冷やせよ」
「うん、ありがとう」
シャワーに向かう兄の背中を見つめながら、相変わらず気がきくなと思う。
これを彼女とかに発揮してあげてほしいなと常々思っているが、彼女はいない。
誰かお兄ちゃんのハートを射止めてくれないかな。
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