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本編

誰と使うのか

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 「これ・・・イズは、こういうのとは無縁かと思っていたが、経験が・・・?」

 「えっ!?経験!?無いよ!ないない!」

 「じゃあ、これは?」

 「えっと、これは・・・。今日、お店に行って買ってきただけで、まだ使ったこともなくて・・・」

 うー、恥ずかしい。
 まさか、ガイルに見られちゃうなんて・・・。

 「けど・・・、良くこの店知ってたな」

 「えっと、クマさんが教えてくれたんだよね」

 「は?なんで、あいつが知ってるんだ?」

 「クマさんは、うちの使用人達から情報を得てたみたいなんだよね」

 「あー、そういうことか」

 ふー、少し矛先が変わったかな。
 今の内に、そーっと商品を仕舞おうとするも、ガイルに握られた手は、引き抜く事が出来なかった。
 
 「それで?これを買ったということは、使う予定があるって事だろ?誰と使う予定だった?」

 そういうと、僕の腕を掴む手に力が入る。
 真っ直ぐ見つめられた瞳から目を背けることが出来ない。
 ガイル・・・怒ってる?

 「これは・・・その・・・」

 ガイルと使う為に、なんて言えない。
 まだ気持ちも伝えてないのに、これじゃ、本当にただやりたいだけの淫乱だ。
 
 黙ってしまった僕を逃さないという様に、見つめ続けるガイルに、言葉を発することが出来ない。

 「はぁ・・・」

 ガイルが、吐くため息に、肩がびくりと震える。
 はしたないと思われたかな・・・。
 嫌われたくない。

 徐々に、視界が滲んでいく。
 今にも零れ落ちそうな涙を、ガイルが唇を寄せて吸い上げていく。

 「悪い。泣かすつもりは無かった。ちょっと、頭に血が上っちまったな」

 そういうと、ガイルは、僕を後ろから抱き込む様にベッドに座り込む。

 「なぁ、イズ。これは、誰かと使う為に、買った物だろ?」

 その言葉に、静かに頷く。
 
 「イズが、誰とそれを使おうと、俺が口を出す権利なんてないんだけどさ」

 あ・・・、ガイルは、僕がガイル以外の人と使うと思ってるんだ。
 違うのに・・・。

 「あのっ、ガイル、違っ」

 「良いから、聞けって。こんな風に伝えるつもりなんて無かったんだけどな・・・はぁ。イズがこれを使いたいと思った相手が俺であれば良いのにって思ったよ。俺さ、イズに初めて会った時から、惹かれてたんだ」

 「え・・・?」

 思いも寄らぬ言葉に、顔をガイルの方に向ける。
 ガイルの顔がすぐそばにあり、唇が今にも触れてしまいそうな距離に、ドキドキが止まらない。

 「今まで、寝惚けたふりして、毎朝口付けしてたの、気付いてたか?」
 
 「え?寝惚けたふり?あれ?ガイル寝惚けてなかったの?」

 「あぁ、ただ俺がイズに口付けしたかっただけだな」

 「なんだ・・・。僕は、てっきりガイルは寝惚けて誰かと間違えて口付けしているのかと・・・」

 「そんな事思ってたのか?イズに出会ってから、イズ以外の奴のことなんて、微塵も興味ねーよ」

 まさか、ガイルが僕の事を想ってくれてたなんて・・・。
 僕も・・・。

 「ガイル・・・。僕・・・恥ずかしいけど、これ、ガイルと使いたいと思って、今日買いに行ってきたんだ。その・・・僕もガイルが好きだから・・・」
 
 
 
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