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第16話
しおりを挟むイントロが流れたところ。蒼紫のアップ。
カッコいいな。ヤバいくらい。強烈にスポットライトを浴びても、全然負けない。輝いてるみたいに見える。オレを、その世界に引き上げてくれてるのは、蒼紫の絶対的なスター性、だと思う。
オレには無いもんな。それ。
蒼紫が最初のフレーズ。
――声が響くと、ぞく、とする。
低くて、力強くて――でも歌声に包まれる、ような。
蒼紫の歌は、好きだ。
――ずっと隣で歌っていきたいなと思うくらい。
オレの番。まあなんとか――いけてるかな。動揺は、声には出てなかったみたい。とりあえず、よかった。
蒼紫とオレ、一緒に歌うフレーズ。
――黒い衣装のジャケット。カッコいいな。王子さまみたい。
この映像を見て、女の子たち、きっとまたSNS大騒ぎなんだろうな。
……この人と、キス、したのか。オレ。
なんか。嘘みたい。って、隣に居るんだけど。今は蒼紫の方は見れない。
蒼紫とキスしたり。
好きって、言ってくれたり。
……ずっと好きだったって。
――ずっとって。
オレ、蒼紫は女の子が好きなんだと思ってた。
だけど、さっきの蒼紫は、嘘はついてなかった。
「……涼」
つん、と手をつつかれて、画面に視線を戻すと。さっきの――。
「……うわ、やば」
蒼紫が微笑んで、オレが、ちょっと蒼紫を睨んで、蒼紫がまた笑った時。
なんかばっちり撮られてる……。ひーえーーー。
カメラマンさん、プロすぎる。なんで撮られてんのこれ……!
「そんな顔しなくても、平気だって」
蒼紫がクッと笑いだす。
「笑い事じゃないし……ステージで何してんの……」
はぁぁとため息。
「ああ。見た?」
うろたえてるオレに、智さんが笑いながら、少しだけ後ろを見た。
「すいません……これ」
「それ、可愛いとか、仲良し、で騒がれてた」
「え゛っ……」
「ね、謎だよね」
「……ほんと、謎ですね。あー、でも、次から気を付けます」
「うん。まあ。多分大丈夫」
智さんのセリフに、少しだけホッとして、でもため息をついてしまう。
蒼紫と反対の窓からずっと外を眺めていたら、とんとん、と蒼紫につつかれた。
「寮に帰ったら、時間取れる?」
静かな声で、そう聞かれて、オレは、うん、と頷いた。
なんかすごく、気持ちが逸るというのか。
早く、話したいような。
……少し、怖い、ような。
寮に近付くにつれて、すごく、ドキドキして。
ただひたすら、窓の外を見つめていた。
寮の前で智さんと別れて、中に入る。受付で、寮長の斉藤さんに会って、「ただいまかえりました」と挨拶する。「お疲れ様、さっきテレビ見たよ」と言われて、軽く会話をして別れてからは、二人共、無言で廊下を歩く。
「寝る準備終わったら、来て?」
「……うん。シャワー浴びたら、行く」
「待ってる。聞きたいこと、あるだろ、いっぱい」
「……うん」
「明日も早いから、そんなに遅くはならないようにするけど――でも、聞きたいことは、答えるから」
「うん。分かった」
寮の部屋の前に立つ。蒼紫は、オレの隣、一つ奥の端の部屋だ。
鍵を開けて、じゃあね、と顔を見ながら、中に入った。
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