【Rain】-溺愛の攻め×ツンツン&素直じゃない受け-

星井 悠里

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◇Rain本編

2


 おかしな恋人の、アホな要求に悩みつつも。
 とりあえず出かけようと準備してやってるのに、すぐにまた電話が鳴り始めた。
 
「……んだよ?」

 一言目から冷たく電話に出ると、浩人がおかしそうに笑っていた。

『今すごい照れてるだろ。可愛いなぁ、類』
「……迎えいかねぇぞ。それにオレは照れてるんじゃなくて、呆れてんだよ。……大体お前どこでんな事ほざいてんだよ?」
『駅前だけど……ああ、今は誰も周りに居ないから、大丈夫』
「あそ。……切るぞ」
『ん。類、傘1本でいいからな。2本持ってきたら1本捨てるから』
「……じゃーな」
 
 まだ何か言っているような気がしたが、構わずに類は電話を切った。

 家の鍵とスマホ。
 それだけを持って玄関に行き、靴を履いてから立ち上がる。

 傘立てから、2本の傘を持ち――――……。

  
「――――……」
 
 ふ、と苦笑。
 1本を傘立てに戻した。
 
 
「……オレも頭おかしーかもな」
 
 
 思わず呟きつつ、類は家のドアを開けた。


 結構激しい雨が降っている上、風が横に吹いているせいで、傘をさしていてもかなりの雨が身体に当たる。

 ……つめてぇし。
 ――――……大体、傘なんかコンビニで売ってるじゃん。
 買った方が絶対ぇ早いよな。

 中途半端に濡れていくので、だんだんイライラしてくる。

 駅前に着く頃には、この上なく不機嫌になっていた。辺りを見回していた類の背後から、駆け寄ってくる足音。


「類♪」

 傘の中に入ってきた、大きな影。振り返ってそこに脳天気な笑顔を見つけ、ますますムッとする。


「雨の中走ってこなくていいってば」
「ん?」

「せっかく濡れないように迎えに来てんのに、何で雨の中走ってくんだよ?」
「…何だぁ? すっごい不機嫌だなー?」

 浩人はクスクス笑いながら、類の前髪を掻き上げて、そして覗き込んできた。



「ありがとな、類」

 類の不機嫌などお構いなしで、浩人はこの上なく嬉しそうな笑顔を見せる。



 高校1年で出会って、5年。
 出会って少ししてからずっと、好きだと言われ続けて。

 高校卒業とともに、受け入れて恋人になって。
 一緒に暮らし出して、もう2年目。

 浩人は、ずっと、類の側で笑ってる。





「――――……」

 何となく言葉に詰まって、類は口を噤んだ。
 それから、ふ、と気付く。

「……何でお前背後から来る訳?」

 よく考えると、浩人が走ってきたのは、方向的に駅からではない。

「駅前、雨宿りの人がどんどん増えててさ。そん中で相合傘すんの、類が嫌がりそうだから、ちょっと離れた所で待ってた」
「……じゃあ初めから、相合傘とか言うなよ」

 ボソッと言った類に、浩人はクスッと笑いながら、少し濡れた自分の髪を掻き上げた。

「オレは見られてもいいんだけど、類がそういうの恥ずかしがりそうだから、見られないようにしただけ。相合傘はしたいから、これは絶対なの。分かる?」
「――――……分かんない」
「はー? 分かるだろ?」

 クスクス笑う、浩人。

「分かんないよ」
「……分かってるくせに」

 ほんと素直じゃないなーなんて、笑って。
 浩人は類の手から傘を取った。


「ありがと。帰ろ、類?」
「…ん」

 浩人が差し掛けてくれる傘に入り直し、2人でゆっくりと歩き出す。


「―――…また雨強くなったな」

 類の言葉通り。 傘に跳ね返る雨の音がますます強くなってる。
 嫌そうに顔をしかめた類を見て、浩人はふ、と苦笑い。

「……んだよ?」
「雨、ほんとに嫌いなんだなーと思って。まあ、そういえば昔からか」

「……好きな奴いんの?」
「――――……オレ好きだけど?」

 ……そんな奴いるんだ。
 と思ってしまう位雨が嫌いなので、隣の理解不能な浩人を、まじまじと見上げてしまう。


 ……そういえば、浩人って。
 嫌いなもん、あるのかな。

 ……あんまり、何かを嫌いとかいうの、聞いたことがない。








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