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◇出逢い編
◇空気をよむ本*浩人
「桜木、プリント。前に回して」
後ろから、類の背中をとんとんとつつき、プリントを回す。
声は発さずに、頷いて、類が浩人からプリントを受け取る。
席前後。もう、1週間も経つのに。何度も声をかけてるのに。
ほとんど、類の声を聞いていない。
むしろ、ミラクルだ。
なんで、こんなに、喋らないんだろう。
先生に当てられれば普通に回答してるし、自己紹介の時の様子を見ても、内気すぎて話せないという訳じゃなさそうなのに。
今日、たまたまイイ事を聞いた。
類が放課後、図書室に寄ってるらしいってこと。
本を読んで帰って行くらしい。
◇ ◇ ◇ ◇
放課後の図書室。
図書委員がカウンターに居る以外、数人がまばらに座っているだけ。
小学中学、高校1週間通して、初めて、自ら図書室来た。
そんな事を思って、ちょっと笑いそうになってしまう。
――――……類、発見。
そっと、近づく。
「……桜木」
「――――……」
静かに呼びかけると、ふと顔を上げた類は、オレを見て、ちょっと目を大きくした。
反応があるのが嬉しい。
なんて、ちょっと、「嬉しい」の最低ラインが低くなりすぎてる気がする。
目が大きくなっただけで嬉しいって何だろ……。
自分に対してそんな風に思いながら。
1つ席を空けて、隣に座ってみた。
黙ったまま、類がオレを見る。
「――――……」
ふ、と視線を逸らされた。
「な、いっこお願いがあるんだけど」
「――――……」
「桜木が 一番好きな本、教えてくれない?」
「――――……やだ」
「何で?」
「……なんでも」
「じゃあ。オレに読ませたい本、ない?」
「――――……」
無言で類が立ち上がって。
どこかに行ってしまった。
えーと。
……無視、なのかな?
ここに居ていいのか、帰った方がいいのか……。
とりあえず、戻ってくるまで待つか。
2分位して。
類が戻ってきた。
「これ」
1冊の本を押し付けられた。
何の本だろうと思ったら。「空気を読む本」だって。
数秒、何も言えず固まって。
ぷ、と笑ってしまう。
「ありがと。……借りてって、家で読んでくる」
「――――……っ」
借りてくと言った時、類の顔が一瞬焦った。
……冗談だったのか。ちょっとした嫌味だったのか。
まさか借りていくとか言うとは思わなかったんだろうな。
「桜木」
「――――……」
「また明日な」
借り方も分からないので、カウンターに居た図書委員に聞いて、本を持って帰った。
はは、おもしろ。
空気読めって?
近寄るなオーラ出してんだから、放課後まで寄ってくんなって事かなぁ。
――――……でも、借りてくって言った時、
すこし狼狽えてた。
少しイヤミな事やっといて、後悔した感じかな。
冷めたフリしてるけど。
何も感じないわけじゃなさそう。
家に帰るまでの電車と、ベッドに転がってしばらく、「空気を読むための本」全部読んだけど。
ちょっと面白かったけど。
これやってたら、類には絡めないから、心の中で、却下した。
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