55 / 231
第55話 ふたりでしか
しおりを挟む「少し待ってて」
そう言われて、ん、と頷く。
隣に座って、ものすごく近いもんだから、膝がぶつかるというか。なんか緊張するし。
颯はスマホを見てるし、待ってと言われてるから、なんかちょっと話しかけにくいし。
どうしようかな。
でもちょっとだけ聞いてもいいかな。
「……颯? 聞いてもいい?」
「ん? 何?」
「スマホ、何してんの?」
「んー……株価見てる」
「か……株価??」
予想外の回答に、ほえーと変な声が漏れる。
何だよ、もうカッコつけて、株価って、もう! と、前なら言ってただろうと思うのだけど。ちょっとスマホを覗いてみる。ふむ。……全然分からない。首を傾げたオレに気づいたのか、ん? と颯がオレを覗き込んで、ちょっと笑った。
「じいちゃんに、世の中知るのに株はいいとか言われて、結構昔から無理矢理やらされてたんだよな。ガキの頃はオレが売り買い決めて手続きはしてもらってたけど。損した時とかは、すげー長い講義が開かれてさ。マジ最悪だったけど」
「へー……」
「まあおかげで、結構今は良い感じ」
「へー……」
「あと少しで終わるから」
「うん」
今度こそちゃんと黙って待ってるけど。スマホを見てる颯をなんとなく見つめる。
えーと。すごいというのか、なんなのか。
とにかく、スマホゲームとか、元カノと連絡とかいって、すみませんでした。
という気分でいると。少しして、颯が顔を上げてオレを見た。
「ん、終わり」
「もういいの?」
「ん」
スマホをオレと反対側に置いて、颯がオレを見つめる。
「……慧」
「ん?」
「こういう時、お前、何すんの?」
「え?」
「ちょっと休憩、とかそういう時。何してた?」
「――――……」
同じこと、考えてる。
思うと、また胸がトク、と速くなる。嬉しいと心臓というか胸というか、とにかくそこらへんって、きゅうとなって、速く動くんだなーと。なんだか不思議な実感。
「テレビ見たり……スマホ触ってたり……?」
「ふうん……本読んだりする?」
「うん」
「何読むの?……ていうのは、また今度聞くか」
「?」
ふ、と笑う颯が、オレの頬に触れた。
「二人でしかできないこと、する?」
「……? 何?」
ふと見上げると、颯はまた微笑んで、その綺麗な唇を、オレの唇に重ねさせてきた。
「――――……」
もうなんか。どくどくする。心臓。
「慧」
引き寄せられて、腕の中から颯を見上げる。
「顔、赤い……」
くす、と笑われて。
でも、何か言い返す前に、キスされる。すこし。深く。
二人でしかできない、時間の潰し方。
……っっっっ颯って。気障っていうか! なんかカッコよすぎて、しれっとされると、ついていけないだけど、オレ!!
ゆっくりなキスが離れて、ふ、と瞳を開けると、至近距離で視線が絡む。
「そういえばさ……なーんか、お前の周りって、今更だけど、α多いな?」
じっと見つめられて、からかうみたいな口調の言葉を、ん?なんて? と自分の中で、繰り返す。
1,115
あなたにおすすめの小説
捨てられた生贄オメガ、魔王城で極上の『巣作り』始めます!~不眠症の魔王様、私のクッションで爆睡して溺愛モードに突入~
水凪しおん
BL
「役立たずのオメガ」として冷遇され、血も涙もない魔王への生贄として捨てられたリノ。
死を覚悟して連れてこられた魔王城は、寒くて硬くて、居住性最悪のブラック環境だった!?
「こんなところで寝られるか!」
極限状態で発動したオメガ特有の『巣作り本能』と、神業レベルの裁縫スキルが火を噴く!
ゴミ同然の布切れをフカフカのクッションに、冷たい石床を極上のラグマットにリフォーム。
すると、不眠症で常にイライラしていた魔王ザルドリスが、リノの作った「巣」のあまりの快適さに陥落してしまい……?
「……貴様、私を堕落させる気か」
(※いいえ、ただ快適に寝たいだけです)
殺されるどころか、魔王様に気に入られ、気付けば城中がリノの虜に。
捨てられた生贄オメガが、裁縫一つで魔王城を「世界一のマイホーム」に変える、ほのぼの逆転溺愛ファンタジー!
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
運命よりも先に、愛してしまった
AzureHaru
BL
幼馴染で番同士の受けと攻め。2人は運命の番ではなかったが、相思相愛だった。そんな時、攻めに運命の番が現れる。それを知った受けは身籠もっていたが、運命の番同士の子供の方が優秀な者が生まれることも知っており、身を引く事を決め姿を消す。
しかし、攻めと運命の番の相手にはそれぞれに別の愛する人がいる事をしり、
2人は運命の番としてではなく、友人として付き合っていけたらと話し合ってわかれた。
その後、攻めは受けが勘違いしていなくなってしまったことを両親達から聞かされるのであった。
最強βの俺が偽装Ωになったら、フェロモン無効なのに狂犬王子に求愛されました~前世武道家なので物理で分からせます~
水凪しおん
BL
前世は日本の武道家、今世は平民β(ベータ)のルッツ。
「Ωだって強い」ことを証明するため、性別を偽り「Ω」として騎士団へ入団した彼は、その卓越した身体能力と前世の武術で周囲を圧倒する。
しかし、その強さと堂々とした態度が仇となり、最強のα(アルファ)である第一王子・イグニスの目に止まってしまった!
「お前こそ俺の運命の番だ」
βだからフェロモンなんて効かないのに、なぜかイグニスの熱烈な求愛(物理)攻撃を受ける日々に突入!?
勘違いから始まる、武闘派β×最強王子のドタバタ王宮BLファンタジー!
【bl】砕かれた誇り
perari
BL
アルファの幼馴染と淫らに絡んだあと、彼は医者を呼んで、私の印を消させた。
「来月結婚するんだ。君に誤解はさせたくない。」
「あいつは嫉妬深い。泣かせるわけにはいかない。」
「君ももう年頃の残り物のオメガだろ? 俺の印をつけたまま、他のアルファとお見合いするなんてありえない。」
彼は冷たく、けれどどこか薄情な笑みを浮かべながら、一枚の小切手を私に投げ渡す。
「長い間、俺に従ってきたんだから、君を傷つけたりはしない。」
「結婚の日には招待状を送る。必ず来て、席につけよ。」
---
いくつかのコメントを拝見し、大変申し訳なく思っております。
私は現在日本語を勉強しており、この文章はAI作品ではありませんが、
一部に翻訳ソフトを使用しています。
もし読んでくださる中で日本語のおかしな点をご指摘いただけましたら、
本当にありがたく思います。
希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう
水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる