【ひみつの巣作り】💖書籍化進行中です✨

星井 悠里

文字の大きさ
138 / 231

第138話 ノープラン

しおりを挟む


 教室の窓の外は、少し薄暗くなってきた。
 美樹ちゃん。なんて言うんだろう。
 妙に緊張してて、心臓の音が速い気がする。

 
「なんで……」
「……え?」
「なんで、颯と結婚、したりするの」
「――――」

 何でと言われると、答えに困る。

 あの瞬間、大好きになってて……運命だと思っちゃったから、とか。
 そんな、運命なんてもの、今言っても、しょうがないよな。

「だってずっと、あなたは颯に喧嘩売ってたでしょ。颯に勝ちたかった、だけでしょ」
「……うん」
「颯のこと、好きなんかじゃなかった、でしょ」
「――――」

 確かに当時は、好きとか、そんなことは思ってなかった。執着はあったから家族にはからかわれたけど、でも好き、とかじゃなかったと思う。でも、嫌いだったかと言われると……。

「……嫌いじゃなかったよ? でも、あの頃は、勝ちたくてしょうがなくて……それだけだったかも」
「……」

 それきり、美樹ちゃんは少し黙ってしまう。
 

「……食堂で」
「あ、うん」

 食堂?
 思ってもなかった単語に首を傾げる。
 きゅ、と唇を噛んでから、美樹ちゃんはオレを見つめた。

「食堂でイケメンコンテストの話。してたでしょ……」
「……あ、オレが??」

 記憶を一生懸命巻き戻す。してた気がする。……昴たちとだよな。

「夫夫対決になるから出ないって……」
「あ、うん。言った」
「……気まずくなったら、嫌だからって」
「うん。言った。あの時、近くに居たの?」

 そう聞くと、こく、と小さく頷く。
 そうなんだ。全然、気付いてなかった。

「そっか……」
 うん、と頷いている内に、なんとなく分かってきた。この話をされている意味。

「孝紀には止められた。そんなことしても、多分、辞退するだろうし、たとえ出ることになっても二人は気まずくもならないだろうし。……私が嫌な気持ちになるだけだからって」
「……ん」
「…………でも……あなたがちょっとでも……困ればいいと、思った」

 うぅ……。
 ……明らかな、そういう言葉を、こんな風に直接聞くと、胸が痛いな。

「その後、エントリーの紙を貰いに行くっていう話も聞いて……私もその後、勢いでもらいに行ったの」

 オレを、ちょっとでも。困らせたかったから、か。
 なんとなく分かってたけど。なんて返せば、いいのかな。
 
「……ん」
 オレは、頷いた。
 美樹ちゃんの視線は、斜め下。オレとはあわせない。

 
「……あの、さ」
 ちょっと気になっていたこと、聞いてみることにした。

「……コンテストの推薦文って、誰が書いたの」
「………………」

 あれ。超無言になってしまった。ものすごい沈黙の後。

「……私」
 消え行ってしまいそうな声に、何だか胸がズキズキしてきた。

「そっか」
 ……推薦文なんて、オレのことで、書くことがあったのかなって思ったから聞いたんだけど。誰かオレを知ってる人に、書いてもらったのかなとか。実はちょっと気になってたんだけど……そっか、美樹ちゃんが、書いたのか。

「……あのさ。オレ、責めるつもりないよ。……颯も言ってたけど、コンテスト。推薦は、別に悪いことじゃないし。なんとなく、気持ちは、分かるから」

 そう言ったら、美樹ちゃんはパッとオレを見て、何とも言えない表情を見せた。怒ってるみたいな。泣きそうな。なんか……悔しそう、な。

 なんて言ったらいいんだろう。
 もう良く分かんないけど。
 ……思ってること、伝えるしか、ない。

「オレ……推薦文書いたから分かるけど。……いいとこ思い浮かべなければ書けないと思うし……じゃなきゃ他薦で受理なんかしてもらえないと思うし。……そっちは、もうほんと、なんでもよくて……」
「――――」
「オレが困ればって……気持ちも、なんか分かる。もしかしてそうかなって少し思ってたし……」

 そう言うと、美樹ちゃんは、小さく首を振った。
 
「気持ちが分かるなんて言わないで。……あなたに私の気持ちなんて分かんないし……」
 オレは、言葉を一旦とめて、美樹ちゃんを見つめた。

「……うん。でも……颯をずっと好きだったのは聞いた、から」

 何て言ったら。何て話したら。どうしたら、いいんだろう。
 ノープラン過ぎて、もう、オレ、ほんと馬鹿。
 話の着地点すら決まってないし。

「……そうよ。中学生の時から。初めて会った時からずっと好きだった。ずっと一番近くに居たの、私だし」
「――――……」
「告白もずっとしなかったのは……付き合って、別れて、離れたくなかったから。……付き合っても長続きしない颯と付き合ったら……側に居られなくなっちゃうから」
「――――……」

 ……何で告白しなかったんだろうって、そう言えば思ったっけ。
 そっか。……そんなに、好き、だったのか。

「他の子と付き合うの、嫌だったけど……それでも、離れたくなかったからだし……!」

 ああなんか。すごく、切ないな。もう。
 ……となりで誰かと付き合うの見てるなんて嫌だったろうに。それでも、颯の側に居たかったのかと、思うと――――……。

 胸の奥が痛くて……。


「……っ……なん、で」

 美樹ちゃんの声に、顔を上げた瞬間。
 ぼろ、とオレの目から涙が零れ落ちた。
 うわ。オレ何泣いてんだ。バカ。オレ。オレが泣くとこじゃないし。やば。

 慌てて、袖で顔を拭いたけど、何でか、涙が止まらない。
 やばい。絶対怒られる……。

「もう、何であなたが泣くのよ!! どう考えても私が泣くとこだし!!」

 案の上、声を上げた美樹ちゃんの瞳から、ぼろっと、涙が零れ落ちた。

「~~~~ッ……!」

 わーわーわー。泣かせちゃったーーー!

「ご、ごめん……ハンカチ使っちゃったからティッシュでいい?」

 鞄からティッシュを出して、机の上にそっと置いた。けど、美樹ちゃんは自分のハンカチを取り出して、涙を拭いた。あ。オレのは使いたくない? うう。どうしよう。
 ……オレ達二人で、泣いて、何してんだろ……。

 颯に聞かれたくないかなと思って、颯を入れないでって言ったけど。
 ……こんなバカなとこ見せたくなかったから、よかった……。

 何オレ、泣いてんだ。


「何で……泣くの」
「……ごめん。あの……」
「――――……」
「……分かんない。なんか。……そんなに好きだったんだと思ったら……だけどごめん、オレ、別れられないし……でもなんか、ほんと……」

 ああなんかもう、うかつに馬鹿な事言うとまた傷つけちゃうかもしれないし。……何て言うべきなのか全然分からない。

 言葉に困って、黙っていると。
 美樹ちゃんが静かに言うことには。

「……だから私、あなたのこと、嫌なのよ……」

「――――……ごめんね……」

 ああもうほんと。
 ……どうしたらいいかな。女の子泣かせちゃだめだろ、オレ。
 ていうか女の子より早く泣いてるってどういうこと。




しおりを挟む
感想 455

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

捨てられた生贄オメガ、魔王城で極上の『巣作り』始めます!~不眠症の魔王様、私のクッションで爆睡して溺愛モードに突入~

水凪しおん
BL
「役立たずのオメガ」として冷遇され、血も涙もない魔王への生贄として捨てられたリノ。 死を覚悟して連れてこられた魔王城は、寒くて硬くて、居住性最悪のブラック環境だった!? 「こんなところで寝られるか!」 極限状態で発動したオメガ特有の『巣作り本能』と、神業レベルの裁縫スキルが火を噴く! ゴミ同然の布切れをフカフカのクッションに、冷たい石床を極上のラグマットにリフォーム。 すると、不眠症で常にイライラしていた魔王ザルドリスが、リノの作った「巣」のあまりの快適さに陥落してしまい……? 「……貴様、私を堕落させる気か」 (※いいえ、ただ快適に寝たいだけです) 殺されるどころか、魔王様に気に入られ、気付けば城中がリノの虜に。 捨てられた生贄オメガが、裁縫一つで魔王城を「世界一のマイホーム」に変える、ほのぼの逆転溺愛ファンタジー!

記憶を無くしたら家族に愛されました

レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない… 家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…

こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡

なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。 あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。 ♡♡♡ 恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

【本編完結済】巣作り出来ないΩくん

こうらい ゆあ
BL
発情期事故で初恋の人とは番になれた。番になったはずなのに、彼は僕を愛してはくれない。 悲しくて寂しい日々もある日終わりを告げる。 心も体も壊れた僕を助けてくれたのは、『運命の番』だと言う彼で…

【本編完結】期限つきの恋

こうらい ゆあ
BL
神崎葵は、聖桜病院の特別病棟で静かな日々を送っていた。 Ω性特有の難病『フェロモン崩壊症』に冒された彼は、かつてイラストレーターとして活躍していたが、今では病室でひとり、スケッチブックに心を刻む。 余命わずかな時間の中、担当医・佐藤悠真との出会いが、閉ざされた白い病室に温かな光を灯す。 葵の海への憧れ、恋への憧憬が色鮮やかに花開くが、時間は無情にも迫ってくる。 限られた時間の中での、儚い恋のお話。

運命よりも先に、愛してしまった

AzureHaru
BL
幼馴染で番同士の受けと攻め。2人は運命の番ではなかったが、相思相愛だった。そんな時、攻めに運命の番が現れる。それを知った受けは身籠もっていたが、運命の番同士の子供の方が優秀な者が生まれることも知っており、身を引く事を決め姿を消す。 しかし、攻めと運命の番の相手にはそれぞれに別の愛する人がいる事をしり、 2人は運命の番としてではなく、友人として付き合っていけたらと話し合ってわかれた。 その後、攻めは受けが勘違いしていなくなってしまったことを両親達から聞かされるのであった。

処理中です...