「気づきの神様 貧乏神くんの奮闘」完結✨

星井 悠里

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15.「新しい考え」

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 気づかせなきゃって、人を幸せにしなきゃって僕は思ってたけど。
 それでいったら、もう、気づかせてたのかもって、思うのは……なんだかすごく、新しい考え方だ。
 僕が幸せにしてあげるんじゃなくて、人が自分で、幸せになるために動くのが……本当の幸せなのかな。

 今のヒロくんみたいに。
 まっすぐ前を見て。人を想って。

 幸せは、神様が呼び込むだけじゃ、なれないのかも。

 福の神がいるあきくんの家だって、そういえば、完全に幸せな形では無いみたいだし。
 お金があるから幸せだとも、限らない。そうだ。そうだった。

「なんか……ヒロくんのおかげで、新しい考えが、浮かんだかも」
「ん? そうなの?」

 ヒロくんは、不思議そうだけど。
 僕はもう、すごく、自分の中が、キラキラ光ってるような気持ちになってる。

「あのさ、オレ、きいちゃんが見えなくなっても……教えてくれたことも、きいちゃんのことも、忘れないから」
「――」

 言われた瞬間。
 またまた心の中が、とてもあったかくなった。ヒロくんはいつも、あったかい言葉をくれる。

 僕の存在を、認めてくれただけでなくて。
 僕の役割まで、肯定してくれて。それだけじゃなくて。
 ……忘れないって、言ってくれるんだ。

 ……ダメだ。
 僕、神様なのに。……そんなしょっちゅう、泣くなんて。

 そう思ったけれど。
 こみあげてくるものは止められなくて。

「えっ」

 ヒロくんが僕を見つめる。

「何? 今度は何で泣いてるの??」
「……っ…………目……」

「え???」

「……目に、ゴミが…………」

 言った瞬間、ヒロくんはぽかん、とした顔で僕を見て、それから、あは、と笑った。


「神様が嘘ついちゃだめだよー……ティッシュいる???」
「…………」

 僕が頷くと、ヒロくんがティッシュの箱を持ってきてくれた。

「……オレがきいちゃんのこと、見えなくなったら寂しい?」
「……そう、だね」

「オレも寂しい……けど……」
「……?」

「見えなくても、きいちゃんは、居てくれるって信じてるからね?」

 もうなんか。じーんとして。
 どうしてヒロくんは、こんなに僕を泣かせるんだろう……。

「えーと……何できいちゃんが泣いてるのか分かんないんだけど……」
「……僕も分かんない。悲しくはないのに……」

 困った顔をしていたヒロくんは、僕のセリフを聞いて、あは、と笑顔になった。

「じゃあ泣いててもいっか。はい、ティッシュあげるから」

 ヒロくんは、クスクス笑いながら、僕にティッシュを箱ごと渡して、僕と、横並びに座った。
 膝を抱えて、少し黙ってから。

「不思議だよね。悲しい時じゃなくて、嬉しいときもさ、泣いちゃうんだよね」

 ふふ、とヒロくんが笑う。僕は首を傾げながら、涙を拭いた。
 

「オレ、きいちゃんが見えなくなっても信じてるけど……でもやっぱり、見えてる方が、嬉しいな」
「――頑張るよ」
「頑張って、なんとかなるの?」
「分かんないけど……その時までは、頑張る」

「……うん。じゃあ頑張ってください」

 なぜかそこだけ敬語で言って、ヒロくんが笑う。

 ヒロくんの笑顔は、ほんと、キラキラしてて。
 ……なぜか僕が泣くという間抜けな感じになってしまったけど。


 大事な話は、そうやって、ちゃんと話し終えた。



 ――でもやっぱり、貧乏神ってことは。言えなかった。

 ……頭の隅では、言っていないことが、ずっと気になってるんだけど。




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