17 / 26
16.「ヒロくんが嘘つき?」
しおりを挟む◇ ◇ ◇ ◇
僕とヒロくんの心配をよそに、ヒロくんは僕のこと、ずっと見えたまま。
今までの寂しくて虚しかった日々が嘘みたいに楽しい時が、瞬く間に過ぎていく。
ヒロくんが、枯れ枝を片付けて、水と肥料をあげている木が段々元気になって、新しい葉をつけ始めた頃のことだった。
朝元気に出かけて行ったヒロくんが、今日はいつもより少し早く、しかも、お母さんと一緒に帰ってきた。
いつもと違う感じに不思議に思いながら玄関に迎えに行くと、ヒロくんが手や足に擦り傷みたいな怪我をしてて、絆創膏がいくつもくっついてた。
「どうしたの? 転んだ……??」
部屋に座ったヒロくんに話しかけると、ヒロくんは、お母さんが少し離れていることを確認してから、こっそり言った。
「……小次郎に、突き飛ばされてケガした」
「えっ」
ついにそんなことにまで。
少し前に、先生に呼ばれて、結局、喧嘩両成敗的にごめんねを言い合ったことは聞いてたけど。
「……ただよく分かんなくて」
「何が?」
「いつもみたいに、またつっかかってくるからさ、ほんと何なんだよって言ったら……嘘つきって言われたから、オレが何の嘘ついたんだよって言ったら、なんでもないって突き飛ばされてさ」
「……」
「……嘘なんか、ついてないと思うんだけど」
ヒロくんは、うーん、と考えてる。
怪我をさせられたことより、「嘘つき」の方が気になるみたい。
僕が、何とも言えないでいる間に、お母さんが来て、ヒロくんの横に座った。
「ねえ、ヒロ?」
「うん」
「小次郎くんと、喧嘩してるの?」
「喧嘩っていうか……なんか今年同じクラスになってから、いつもつっかかってきて」
「……何でだか分かる?」
「分かんない。今日嘘つきって言われたけど、嘘なんかついてないし……」
「そう……」
「ごめんね、なんかちょっと擦りむいただけなのに、先生がお母さんに電話しちゃって」
「ちょっとじゃないでしょ、痛いでしょ?」
よしよし、とお母さんがヒロくんを撫でてる。
「ヒロは、どうしたい?」
「んー……ちょっと考える。嘘つきって何か分かんないし」
「お母さんにしてほしいこと、ある?」
心配そうに聞いたお母さんに、ヒロくんはすぐに笑顔で「無いよ」と、言った。
「小次郎は、怪我させようとしたわけじゃないと思うから大丈夫だよ、心配しないで?」
「……そうなの?」
「うん。オレが嘘つきって何だよって近づいたから離そうとしただけっていうか……オレの運が悪かっただけ」
ヒロくんは、多分お母さんに心配させないように、そう言って笑った。
「ごめんね、仕事、戻って大丈夫だよ」
ヒロくんはそう言って、渋るお母さんを、仕事に送り出すと、途端に、ムッとした顔になって、床に座り込んだ。
「……何だよ、嘘つきって……」
僕に言ったというよりは、独り言。
僕も、ヒロくんの側に座り込んで。
さっきのヒロくんの言葉を考える。
運が悪かった、だけ。
――ちょっと押されて、多分、転んでしまって、怪我をした。
運が悪かった。
……それって。
…………僕のせいだろうか。
運気が良くなっているのは、確実なのに。
不運なのは、もしかして――――。
そうは思いたくないけど。
僕のスキルなのかは、確かめようがなくて、何とも言えないのだけど……。
僕が、話は聞けるからね、と言ったら、ヒロくんはありがと、と笑った。
それから数日、学校では小次郎とは話せないみたいで、ヒロくんは、今日帰ったら小次郎の家に行く、と決意したように言いながら、学校に出かけて行った。
僕はなんだか心配で、ヒロくんが学校に行ってる間に、あきくんと姫ちゃんに相談に行った。
そしたら、じゃあ、ついていこう! と二人が言い出した。
ヒロくんの家で、ヒロくんを待っていると。
帰ってきたヒロくんが、僕たちを見て、笑った。
「もしかして……心配して、来てくれた?」
「心配っていうか、気になってー」
姫ちゃんが笑う。
「怪我したんだろ? 治った?」
あきくんも言う。
「うん、擦り傷だから。……嘘つきが何か聞かないとって思って……」
ヒロくんがランドセルを置く。
鍵と、こども携帯を小さな鞄に入れて、斜めにかけた。
「……えーと……もしかして、ついてくるとか……??」
ヒロくんが、僕たちを振り返って、聞いてくる。
皆で、うんうん頷くと、ヒロくんはクスクス笑って、いいけど……楽しくないよ? と言った。
僕たち的には、楽しくないからこそ、心配って感じだから、また、うんうん頷いたら、ヒロくんがおかしそうに笑って、いいけど、と頷いた。
63
あなたにおすすめの小説
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
下宿屋 東風荘 7
浅井 ことは
キャラ文芸
☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:..☆
四つの巻物と本の解読で段々と力を身につけだした雪翔。
狐の国で保護されながら、五つ目の巻物を持つ九堂の居所をつかみ、自身を鍵とする場所に辿り着けるのか!
四社の狐に天狐が大集結。
第七弾始動!
☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:..☆
表紙の無断使用は固くお断りさせて頂いております。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
神様転生~うどんを食べてスローライフをしつつ、領地を豊かにしようとする話、の筈だったのですけれど~
於田縫紀
ファンタジー
大西彩花(香川県出身、享年29歳、独身)は転生直後、維持神を名乗る存在から、いきなり土地神を命じられた。目の前は砂浜と海。反対側は枯れたような色の草原と、所々にぽつんと高い山、そしてずっと向こうにも山。神の権能『全知』によると、この地を豊かにして人や動物を呼び込まなければ、私という土地神は消えてしまうらしい。
現状は乾燥の為、樹木も生えない状態で、あるのは草原と小動物位。私の土地神としての挑戦が、今始まる!
の前に、まずは衣食住を何とかしないと。衣はどうにでもなるらしいから、まずは食、次に住を。食べ物と言うと、やっぱり元うどん県人としては……
(カクヨムと小説家になろうにも、投稿しています)
(イラストにあるピンクの化物? が何かは、お話が進めば、そのうち……)
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる