「気づきの神様 貧乏神くんの奮闘」完結✨

星井 悠里

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18.「情けは人のためならず」

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「なんか、この人、ヒロに興味津々だな? 気に入ったのかな?」
「ねぇ? でも、分かるけど。 ヒロくん、可愛いもんね」
「うんうん」

「なあなあ、このおじいさんがさぁ、すっごいお金持ちでさ、お礼にこのお金を自由に使ってくれ、とか持ってきちゃったりして?」
「まさかぁ?」
「でもほら、オレ達居るし。何かいいことにつながってるのかもしれないじゃん?」
「そうだねぇ。今度さぁ、あたしたちついてくから、宝くじを買うっていうのはどうかなあ?」

 姫ちゃんが言うと、あきくんは、オレらが欲を出しちゃうと 良くないんだよねと、苦笑い。

「不便だよなぁ、オレらの能力って」
「……ほんとだよねー」

 あきくんと姫ちゃんが苦笑しながら、頷き合っている。

 それからしばらくして、黒い、なんだかとても高そうな車が現れた。

 ほんとにお金持ちかもな、とあきくんが苦笑い。

 おじいさんはヒロくんにお礼を言うと、車から出てきたスーツ姿の男性の肩を借りて、車に乗り込んだ。車の窓を開けたところに、ヒロくんが近づいた。

「ありがとうね。……今度、お礼に来てもいいかな」
「お礼? いいよ、電話かけただけだし」
「じゃあ電話代を持ってくるね」
「……十円とか? 分かんないけど。大丈夫だよ」

 クスクス笑って、ヒロくんは、おじいさんに、早く元気になってね、と告げた。
 バイバイして見送ってから、ヒロくんは、僕たちを振り返った。

「……てわけで、もうなんか遅くなっちゃったし、明日にするね?」

 ヒロくんはそう言うと、「帰ろう~?」と、歩き出した。


「おじいさんと何話してたの? 最後の方、皆で話してて、あんまり聞こえなかった」
「うーん……と……なんか、変なこと言ってたよ?」
「変なことって?」

「……ひどいことをしたって後悔してるんだって。ヒロくんならどうする? とか聞かれたから」
「うん」
「謝ればいいんじゃないのかな? って言っといた」
「めちゃくちゃシンプルだな」

 あきくんがおかしそうに笑う。
 姫ちゃんも楽しそうにヒロくんに話しかけてて。

 すると、あきくんが僕の隣に並んだ。

「さっきの大金が、とかは、まあ冗談だけどさ。……なんかこの出会いとか、いろんなのがいい方向に行けばいいよな?」
「そうだね。でもあきくんと姫ちゃんが居る時に出会った人だから悪い縁ってことは無いと思うんだよね。あとは小次郎と、うまくいけばいいね」

 僕の言葉に、あきくんが不意に、びっくりした顔で、僕を見た。

「ん? ……小次郎って言うの? ヒロの喧嘩相手?」
「え? うん。そうだよ、小次郎。聞いてなかった?」
「名前は聞いてなかった。……オレんちの子供も小次郎だけど……」
「あれ、でも、子供一人でしょ? 小次郎って、二人めにつく名前だと思ってた」
「上の兄貴、去年から留学してて、居ないだけ。離れてんの年が」
「え……。あきくんのとこの、子なの? そっか、年も、同じだっけ……?」

 あきくんは、うーん、と考えてから。

「な、ヒロ」
「ん?」
「対決するとき、オレも行くから」
「? ん、分かった……ていうか、対決、とかじゃないんだけど……いいけど」

「えー、あたしも行くよー」
「もちろん僕も」

 ちょうどむこうから人が来ていたので、ヒロくんは、うん、わかったよ、と小さく笑いながら、頷いた。







 
  
 その夜。
 ヒロくんの携帯が、音を立てた。

「もしもし?」
『あ、陽路くん?』
「あれ。その声は……おじいさん?」

 今日は一緒に算数の宿題をやってたので、ヒロくんが僕を見ながらそう言った。

『そう。さっきはありがとうね。かけてもらった履歴の番号に電話したんだけど……電話してて大丈夫?』
「うん」

『……お母さんは、居る? お礼を言いに行きたいんだけど……』
「お母さんは仕事で夜まで帰らないよ?」
『一人なのかい? 大丈夫?』
「うん。まあ、慣れてるから大丈夫だよ」

『……明日も遅いかな?』
「明日は、お父さんの病院に行くって言ってたから……多分、二十時くらいに病院から帰ってくると思うけど」

『そうか……』
「でも、わざわざいいよ? オレ、話しとくから」
『電話代も返さないと』
「……電話代……」

 ヒロくんはクスクス笑ってる。

『じゃあ感謝の気持ちを込めて、お菓子を買っていくよ。何が好き?』
「え、いいの?」
『何でも言って』

 わーい、と素直に喜んで、いくつかお菓子の名前を言ってる。
 ふふ、と笑ってしまう。

 可愛いなあ、ヒロくん。
 おじいさんも、きっと可愛いと思ってるんだろうなあ。と、微笑んでしまう。
 

「あっそうだ、後悔してること、謝った?」
『……まだだよ』

「謝るのは早い方が良いって、お母さんが言ってたよ? あ、お父さんも言ってた」
『……うん、そうだね』
「そうだよ?」
『分かったよ。……そうしたら、行ける時にまた電話するね』

 そう言ったおじいさんに、ヒロくんは、ふふ、と笑って頷いて、じゃあね、と電話を切った。

「……お菓子持ってきてくれるって」

 クスクス笑いながら、ヒロくんが僕を見る。

「お父さんがさ、困ってる人は助けてあげようねって言ってたから。あれだよ、あれ。えーっと……情けは……」
「情けは人のためならず、だね」
「それそれ……ていうか、困ってる人を無視するの、やだしね」
「そうだね」

 うんうん、と頷いて、ヒロくんを見つめる。

 お父さん、ほんと素敵だ。ヒロくん、似てるんだろうなぁ。
 お父さんにも会ってみたいなあ。難しい病気って、ヒロくん、言ってたけど。治ると良いけど。

 あ、そうだ。一応、言っておこう、とヒロくんに話しかける。

「ヒロくん、知らない人に電話とか名前を教えるのは慎重にね? 今日は僕たち見てたし、悪い人じゃないの分かったから止めなかったけど」
「あ、うん、分かってるよ。普段は気を付けてるよ。でも今日は……具合悪そうだったし……あと、名刺とか持ってて、ちゃんとしてそうな人だったし……」
「だったし?」

「……んー、なんか優しかったでしょ? ああいうおじいさん、好き」
「そっか」

 ニコニコ笑ってるヒロくんに、僕も笑いが零れる。

 ほんと、可愛いなあ、ヒロくん。

 僕はまた、そんな風に思ってしまった。



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