10 / 36
第9話 胸の痛み
しおりを挟む新しく届いたグラスのお酒を一口。
甘酸っぱい。
「あれ、でも先輩?」
「ん?」
「大学、こっちに来ちゃったんですね。そんなに好きな人が居るのに」
「……うん。まあ。そうだね」
じっと、大きな瞳で見つめられる。
「憧れてた大学に受かったから」
「なるほど」
うんうん、と頷いてる愛梨さんに、私はちょっとため息をついた。
「最初は絶対無理だと思ってたんだけどね、成績的に」
「はい」
「……彼から離れたいなって、あの時、死ぬほど勉強したら受かっちゃって」
「あらら。……受かったのはよかったですけど」
「うん。ね。そう、よかったんだけどね」
苦笑してる私に、愛梨さんは、首を傾げた。
「どうしてそんなに離れたかったんですか?」
「――離れないと、忘れられないなーと思って」
考えながら言った私に、愛梨さんは何秒か間を置いた。
「先輩って、なんで、告白しようとしなかったんですか?」
「……彼にとって、私はただの幼馴染でしかないって、分かってたから」
「どうして?」
「彼女、居たし……」
「ああ……んー……」
愛梨さんは、ちょっとため息をつきながら、肩を竦めた。
「残念。先輩とその人の、一緒に居るところ、見たこと無いから、これ以上は分かんないですね」
「――そうだよね」
「じゃあこれからの話をしましょう?」
「え?」
これから? と首を傾げると、愛梨さんは、うふふ、と楽しそうに笑った。
「告白するんですか? 七月二十五日!」
「……いや。しないから」
「ええっ」
キラキラの笑顔が、めちゃくちゃ崩れてしまった。
いや、だって――。
「初恋って言ったって、もう、大学入ってから、会ってないんだよ」
「ええ、なんで? 実家帰った時とかに、会わなかったんですか?」
「私も忙しかったから、帰省も短かったし……」
「成人式とかは?」
「大学の子たちで、お祝いしてて――地元には帰らなかったんだよね」
「……避けてました?」
「別に……ただ、帰った時、別に連絡はしなかったけど……」
そう言うと、愛梨さんは、また眉を顰めて、ため息をついた。
「――待って、先輩。今はどう思ってるんですか? まだそれ、聞いてなかった。私は、てっきり、三か月も先なのに、めっちゃ楽しそうにそわそわして、好きだからだって思ってたんですけど」
「もう、七年もほとんど会ってないんだよ? その間、私、何人も付き合ってるし」
「じゃあ、ただ同窓会が楽しみなだけですか?」
「う、ん。まあ」
微妙に頷いた私に、愛梨さんは乗り出してくる。
「ほらーその返事、絶対、何かありますよね?」
「……んん。まあ。……どんな風な大人になったのかなって、思う気持ちは――あるから」
「それは好きだからじゃなくて?」
「もちろん嫌いじゃないけど……でも今更だよ、ほんと。向こうは私のことなんて、七年も会ってない、ただの同級生だよ」
普通に言った瞬間。
自分が言った何気ない言葉なのに。
胸が痛くて。
痛すぎて、驚いた。何か細いもので、胸の奥を、刺されたみたいに。痛かった。
息が、出来なくなって、私は少しだけ、視線を落とした。
――そうだよ。
何度か連絡くれたのに。会わなかったのは、私。
冷たいやつだと、思っただろうなぁ。
会えなくしたのは、私なのに。
今更、切なく思う権利なんて、ないのに。
156
あなたにおすすめの小説
☘ 注意する都度何もない考え過ぎだと言い張る夫、なのに結局薬局疚しさ満杯だったじゃんか~ Bakayarou-
設楽理沙
ライト文芸
☘ 2025.12.18 文字数 70,089 累計ポイント 677,945 pt
夫が同じ社内の女性と度々仕事絡みで一緒に外回りや
出張に行くようになって……あまりいい気はしないから
やめてほしいってお願いしたのに、何度も……。❀
気にし過ぎだと一笑に伏された。
それなのに蓋を開けてみれば、何のことはない
言わんこっちゃないという結果になっていて
私は逃走したよ……。
あぁ~あたし、どうなっちゃうのかしらン?
ぜんぜん明るい未来が見えないよ。。・゜・(ノε`)・゜・。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
初回公開日時 2019.01.25 22:29
初回完結日時 2019.08.16 21:21
再連載 2024.6.26~2024.7.31 完結
❦イラストは有償画像になります。
2024.7 加筆修正(eb)したものを再掲載
🥕おしどり夫婦として12年間の結婚生活を過ごしてきたが一波乱あり、妻は夫を誰かに譲りたくなるのだった。
設楽理沙
ライト文芸
2026.1.4 73話見直した際、瑛士の台詞《本音/懺悔》を加筆しました。😇
☘ 累計ポイント/ 200万pt 超えました。ありがとうございます。
―― 備忘録 ――
第8回ライト文芸大賞では大賞2位ではじまり2位で終了。 最高 57,392 pt
〃 24h/pt-1位ではじまり2位で終了。 最高 89,034 pt
◇ ◇ ◇ ◇
紳士的でいつだって私や私の両親にやさしくしてくれる
素敵な旦那さま・・だと思ってきたのに。
隠された夫の一面を知った日から、眞奈の苦悩が
始まる。
苦しくて、悲しくてもののすごく惨めで・・
消えてしまいたいと思う眞奈は小さな子供のように
大きな声で泣いた。
泣きながらも、よろけながらも、気がつけば
大地をしっかりと踏みしめていた。
そう、立ち止まってなんていられない。
☆-★-☆-★+☆-★-☆-★+☆-★-☆-★
2025.4.19☑~
婚約した幼馴染の彼と妹がベッドで寝てた。婚約破棄は嫌だと泣き叫んで復縁をしつこく迫る。
佐藤 美奈
恋愛
伯爵令嬢のオリビアは幼馴染と婚約して限りない喜びに満ちていました。相手はアルフィ皇太子殿下です。二人は心から幸福を感じている。
しかし、オリビアが聖女に選ばれてから会える時間が減っていく。それに対してアルフィは不満でした。オリビアも彼といる時間を大切にしたいと言う思いでしたが、心にすれ違いを生じてしまう。
そんな時、オリビアは過密スケジュールで約束していたデートを直前で取り消してしまい、アルフィと喧嘩になる。気を取り直して再びアルフィに謝りに行きますが……
【完結】冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない
くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、
軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。
言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。
――そして初めて、夫は気づく。
自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。
一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、
「必要とされる存在」として歩き始めていた。
去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。
これは、失ってから愛に気づいた男と、
二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。
――今さら、遅いのです。
お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】
私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。
その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。
ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない
自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。
そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが――
※ 他サイトでも投稿中
途中まで鬱展開続きます(注意)
✿ 私は夫のことが好きなのに、彼は私なんかよりずっと若くてきれいでスタイルの良い女が好きらしい
設楽理沙
ライト文芸
累計ポイント110万ポイント超えました。皆さま、ありがとうございます。❀
結婚後、2か月足らずで夫の心変わりを知ることに。
結婚前から他の女性と付き合っていたんだって。
それならそうと、ちゃんと話してくれていれば、結婚なんて
しなかった。
呆れた私はすぐに家を出て自立の道を探すことにした。
それなのに、私と別れたくないなんて信じられない
世迷言を言ってくる夫。
だめだめ、信用できないからね~。
さようなら。
*******.✿..✿.*******
◇|日比野滉星《ひびのこうせい》32才 会社員
◇ 日比野ひまり 32才
◇ 石田唯 29才 滉星の同僚
◇新堂冬也 25才 ひまりの転職先の先輩(鉄道会社)
2025.4.11 完結 25649字
「オレの番は、いちばん近くて、いちばん遠いアルファだった」
星井 悠里
BL
大好きだった幼なじみのアルファは、皆の憧れだった。
ベータのオレは、王都に誘ってくれたその手を取れなかった。
番にはなれない未来が、ただ怖かった。隣に立ち続ける自信がなかった。
あれから二年。幼馴染の婚約の噂を聞いて胸が痛むことはあるけれど、
平凡だけどちゃんと働いて、それなりに楽しく生きていた。
そんなオレの体に、ふとした異変が起きはじめた。
――何でいまさら。オメガだった、なんて。
オメガだったら、これからますます頑張ろうとしていた仕事も出来なくなる。
2年前のあの時だったら。あの手を取れたかもしれないのに。
どうして、いまさら。
すれ違った運命に、急展開で振り回される、Ωのお話。
ハピエン確定です。(全10話)
2025年 07月12日 ~2025年 07月21日 なろうさんで完結してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる