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第14話 遠い記憶なのに。
しおりを挟むあっという間に二か月以上が経過して、もう再来週が同窓会。
エステも大分仕上げに入ってきてる。
鏡の前にたつと、だいぶ違う。
体重はそんなに変わってないのだけれど、筋肉も少しついて、しまった感じ。
愛梨さんも良い感じで、なんか二人で、頑張って良かったね、と褒め合ってる。
さて、ストレッチして早めに寝よう、と思っていたら、スマホが鳴り始めた。
「――もしもし、遥香?」
『あ。彩葉。ごめんね、今忙しい?』
「全然」
言いながら、ベッドの端に腰かける。良かった、と笑う遥香の声に、ほっとする。
『もうすぐ会えるね。楽しみ』
「うん。ね。そういえば、遥香って、司会みたいなこと、するの?」
『しないよう~そういうのは全部、蒼真くんだよ。私は、ほんと、裏方。女子の幹事として、名前を貸しただけ、みたいな』
ふふ、と笑う遥香。
『蒼真くん、ほんと頑張ってくれてたからさ』
「そうなんだ……」
そういう頑張ってるの。遥香は見れてるんだな。
って――大学も社会人になってからも、きっと蒼真はたくさん頑張ってたはず。
それをずっと見守ってきた人、きっと、居るよね。
赤ちゃんから高三まで一緒にいたとは言っても――ほとんどの時が、まだ子どもだったし。
家が隣だから、もう必然的に、毎日顔を合わせていただけだった。
大学くらいからは、自立して、考えて、選択して、自ら人といるようになる。
大学以降に一緒にいた人と比べたら――私なんて、全然、だもんね……。
『彩葉はさ、当日こっちに来るの?』
「ううん。金曜、おやすみもらったから実家に泊る。実家から会場に向かうつもり」
『そっか。良かったらさ、お昼一緒に食べない? 会場の近く、結構お店あるから、どこかいいとこ、行かない?』
「うん。いいよ」
久しぶりにゆっくり話せる、と嬉しく思いながら即答すると。
『同窓会は十七時受付開始でしょ。私、受付するから少しだけ早く行くんだけど……十六時半くらいにね、蒼真くんと待ち合わせてるから、一緒に行かない?』
「――」
突然出てきた名前に、焦る。
蒼真と。待ち合わせてる。
――同窓会で、心の準備を決めてから、少しずつ近づいてみようと思っていたのに。
待ち合わせ場所にいきなり行って、遥香と蒼真と三人で? なんて、無理……。
今、すでに、心臓が、やばい。
ドキドキして、手に変な汗。息まで変に、熱くなる。
「――え、っと……」
何も言わないでいるのも変かと思って、辛うじて出した言葉。
でもその後、続かなかった。
――っ……無理かも。
どうしよう。最初は、遠くから蒼真を見て、絶対心の準備が必要な気がする。
いきなり、蒼真とまっすぐ、なんて。
「あ……ごめん。遥香、あの――」
『――』
「……蒼真とはね、ずっと連絡も取ってなくて」
『うん』
「ちょっと気まずい……かな、私……」
『――そっか……』
少しの間、遥香が黙ってる。
「でも、遥香とランチはしたいな。もしよかったら、ランチはして――その後、私は別で会場に行ってもいい?」
『うん……まあ。いいんだけど』
いいんだけど。
……の後に何か続きそうなのに、遥香はしばらく何も言わない。
「遥香? ……私、行った方が、いい?」
遥香も蒼真とふたりきりが嫌なのかな? 久しぶりで緊張しそうだから、とか?
どうしよう、それでもちょっとつらいけど、遥香がそう言うなら、私だけが、気まずいからとかも言ってられないような……。と思った時。
『ううん。そうじゃないの。蒼真くんとは一回、会ってるから。別に、二人が嫌とか、そういう意味じゃないの』
「あ、そうなんだ」
良かった。……あれ? じゃあ、どういう意味なんだろう。
なんだか手が、妙に緊張している。
私は、ふくらはぎに触れて、すう、とリンパを流し始める。無意識に落ち着こうとしてるみたい、と、ふと思った。
『私ね、もう昔なんだけどさ……彩葉と、蒼真くんと、話してるの――すごく好きだったんだ』
「――」
その言葉に。
不意に、あの頃の思い出が、まざまざと映像として、よみがえった。
なんだかキラキラしていた風景の中で。
なんだか、キラキラな制服を着て。
なんの悩みもないみたいに――笑顔だった、あの頃。
遠い記憶なのに。
――その後のどんな記憶よりも、色づいてて。
じわ、と、目に涙が浮かんだ。
息が乱れそうなのをバレないように、息を止めて俯いた。その拍子に、涙が零れ落ちた。
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