「四半世紀の恋に、今夜決着を」

星井 悠里

文字の大きさ
16 / 36

第15話 遠い日々に

しおりを挟む


 なにか言わなきゃ。
 遥香が変に思う。
 そう思った瞬間。むこうから、子どもの泣き声が聞こえてきた。

『あっ、ごめん、彩葉、また今度掛けなおす』
「あ、うん」
『ごめんね』

 慌ただしく、切られた電話。
 子どもの声が――耳に残る。優衣ちゃん、だっけ。女の子の名前。

 遥香にはもう、家族があるんだもんなぁ。
 お互いが一番仲良し、とかの頃とは違うんだよね。そうやって大人になっていくんだと思うけど。

 私は、ちゃんと、大人になれているんだろうか。 
 なんだか、ひとりで、昔に縛り付けられているような気も、する。


 ……楽しかったなぁ、あの頃。
 って。

 いくら楽しかった、と思ったとはいえ、ほんと私ってば。何泣いてるんだか。
 危なかった。なんか――あの葉書が届いてから、私の涙腺が、弱すぎる。

「――はぁ……」

 敢えて、声を出して息を吐くと、私はそのまま後ろに倒れて、ベッドに仰向けになった。


 蒼真と遥香と三人で――ほんと楽しかったな。あの頃。

 私が蒼真と離れてから、居られなくなっちゃったけど。
 そっか、私も寂しかったけど、遥香も、寂しいって思ってたんだな。……知らなかった。


 スマホを頭の横に置いて、そのまま両腕を、目の上に重ねた。


 蒼真は、本当に、記憶があるところにはもうすでに、最初から隣にいた。

 幼稚園の送り迎え。いつも一緒に歩いてた。手を繋いで。
 帰ってからも、庭や、どっちかの家で一緒に遊んでた。

 小学生になったら、お互い部屋が出来て、窓を隔てて向こう側に蒼真の部屋の窓があった。

 いつも、お互い窓を開けて、しょっちゅう喋ってた。
 毎日朝、起きたら窓を開けて、おはようって言い合ったし。寝る前、おやすみって言ってた。
 兄妹、みたいだったかな、あの頃は。

 高学年になると、蒼真も私も、その窓から行き来できるようになった。小学生の脚でも一歩で普通に渡れるくらい近かったから。
 お母さんたちには危ないからやめなさいって怒られて、玄関からが基本だったけど――蒼真が、こんなとこから落ちる訳がないって言って、よく渡ってきた。

 宿題したり、漫画読んだり、おやつ食べたり。

 その窓は――私にとって、蒼真と私の心が通じる、入り口みたいなものだった。
 ずっと近くで蒼真と繋がってる、大切な場所。

 
 中学になって、蒼真がどんどん目立つようになって。
 でも、家に帰れば昔と同じように窓越しに話せたから、私はそれだけで安心してた。

 ただ、蒼真は私の部屋に渡ってこなくなった。
 女の子の部屋だから、なんて、ちょっと照れながら言ってたけど。

 なんとなくその意味は、分かったけど、すこし寂しかった。

 それでも、勉強してる時は、カーテンは開けて、一緒に頑張った。
 お互い見張りあって、サボったら分かるように、なんて言って。
 
 たまに、お菓子、交換したり、息抜きして。
 勉強は大変だったけど、楽しかった。


 私が、蒼真と同じ高校に入れたの、絶対、そのおかげだったと思ってる。


 あの頃は、勉強も未来も――なんだか、全部まっすぐだった。
 ただ蒼真と笑っていたいだけで、あの窓を、開けていた。



 


しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

☘ 注意する都度何もない考え過ぎだと言い張る夫、なのに結局薬局疚しさ満杯だったじゃんか~ Bakayarou-

設楽理沙
ライト文芸
☘ 2025.12.18 文字数 70,089 累計ポイント 677,945 pt 夫が同じ社内の女性と度々仕事絡みで一緒に外回りや 出張に行くようになって……あまりいい気はしないから やめてほしいってお願いしたのに、何度も……。❀ 気にし過ぎだと一笑に伏された。 それなのに蓋を開けてみれば、何のことはない 言わんこっちゃないという結果になっていて 私は逃走したよ……。 あぁ~あたし、どうなっちゃうのかしらン? ぜんぜん明るい未来が見えないよ。。・゜・(ノε`)・゜・。    ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 初回公開日時 2019.01.25 22:29 初回完結日時 2019.08.16 21:21 再連載 2024.6.26~2024.7.31 完結 ❦イラストは有償画像になります。 2024.7 加筆修正(eb)したものを再掲載

🥕おしどり夫婦として12年間の結婚生活を過ごしてきたが一波乱あり、妻は夫を誰かに譲りたくなるのだった。

設楽理沙
ライト文芸
2026.1.4 73話見直した際、瑛士の台詞《本音/懺悔》を加筆しました。😇 ☘ 累計ポイント/ 200万pt 超えました。ありがとうございます。 ―― 備忘録 ――    第8回ライト文芸大賞では大賞2位ではじまり2位で終了。  最高 57,392 pt      〃     24h/pt-1位ではじまり2位で終了。  最高 89,034 pt                    ◇ ◇ ◇ ◇ 紳士的でいつだって私や私の両親にやさしくしてくれる 素敵な旦那さま・・だと思ってきたのに。 隠された夫の一面を知った日から、眞奈の苦悩が 始まる。 苦しくて、悲しくてもののすごく惨めで・・ 消えてしまいたいと思う眞奈は小さな子供のように 大きな声で泣いた。 泣きながらも、よろけながらも、気がつけば 大地をしっかりと踏みしめていた。 そう、立ち止まってなんていられない。 ☆-★-☆-★+☆-★-☆-★+☆-★-☆-★ 2025.4.19☑~

婚約した幼馴染の彼と妹がベッドで寝てた。婚約破棄は嫌だと泣き叫んで復縁をしつこく迫る。

佐藤 美奈
恋愛
伯爵令嬢のオリビアは幼馴染と婚約して限りない喜びに満ちていました。相手はアルフィ皇太子殿下です。二人は心から幸福を感じている。 しかし、オリビアが聖女に選ばれてから会える時間が減っていく。それに対してアルフィは不満でした。オリビアも彼といる時間を大切にしたいと言う思いでしたが、心にすれ違いを生じてしまう。 そんな時、オリビアは過密スケジュールで約束していたデートを直前で取り消してしまい、アルフィと喧嘩になる。気を取り直して再びアルフィに謝りに行きますが……

【完結】冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない

くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、 軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。 言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。 ――そして初めて、夫は気づく。 自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。 一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、 「必要とされる存在」として歩き始めていた。 去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。 これは、失ってから愛に気づいた男と、 二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。 ――今さら、遅いのです。

幼馴染を溺愛する旦那様の前からは、もう消えてあげることにします

睡蓮
恋愛
「旦那様、もう幼馴染だけを愛されればいいじゃありませんか。私はいらない存在らしいので、静かにいなくなってあげます」

お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】 私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。 その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。 ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない 自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。 そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが―― ※ 他サイトでも投稿中   途中まで鬱展開続きます(注意)

✿ 私は夫のことが好きなのに、彼は私なんかよりずっと若くてきれいでスタイルの良い女が好きらしい 

設楽理沙
ライト文芸
累計ポイント110万ポイント超えました。皆さま、ありがとうございます。❀ 結婚後、2か月足らずで夫の心変わりを知ることに。 結婚前から他の女性と付き合っていたんだって。 それならそうと、ちゃんと話してくれていれば、結婚なんて しなかった。 呆れた私はすぐに家を出て自立の道を探すことにした。 それなのに、私と別れたくないなんて信じられない 世迷言を言ってくる夫。 だめだめ、信用できないからね~。 さようなら。 *******.✿..✿.******* ◇|日比野滉星《ひびのこうせい》32才   会社員 ◇ 日比野ひまり 32才 ◇ 石田唯    29才          滉星の同僚 ◇新堂冬也    25才 ひまりの転職先の先輩(鉄道会社) 2025.4.11 完結 25649字 

「オレの番は、いちばん近くて、いちばん遠いアルファだった」

星井 悠里
BL
大好きだった幼なじみのアルファは、皆の憧れだった。 ベータのオレは、王都に誘ってくれたその手を取れなかった。 番にはなれない未来が、ただ怖かった。隣に立ち続ける自信がなかった。 あれから二年。幼馴染の婚約の噂を聞いて胸が痛むことはあるけれど、 平凡だけどちゃんと働いて、それなりに楽しく生きていた。 そんなオレの体に、ふとした異変が起きはじめた。 ――何でいまさら。オメガだった、なんて。 オメガだったら、これからますます頑張ろうとしていた仕事も出来なくなる。 2年前のあの時だったら。あの手を取れたかもしれないのに。 どうして、いまさら。 すれ違った運命に、急展開で振り回される、Ωのお話。 ハピエン確定です。(全10話) 2025年 07月12日 ~2025年 07月21日 なろうさんで完結してます。

処理中です...