「トリプルSの極上アルファと契約結婚、なぜか猫可愛がりされる話」

星井 悠里

文字の大きさ
120 / 138

119.ここで起こること

しおりを挟む

  
「楠さん、あの……」
「どうかした? 凛太くん」
「あのですね……オレ」
「うん? 何か言いにくいこと?」

 そう言われて、オレは頷いて、一度唇を噛んだ。楠さんは優しく微笑んだ。

「言いたくないことは言わなくてもいいよ?」
「でも、あの……」
「必要なことは瑛士さんが言うと思うから、いいよ」

 くす、と微笑む楠さんは、優しい。

 有村さんは、楠さんに比べるとぶっきらぼうだけど、でも心配してくれてるのが分かるし、まっすぐで優しい。瑛士さんも雅彦さんも、本当に優しい。
 ここに居ると、αという性が好きになっていく気がする。

「でもあの、オレ、瑛士さんに」
 キスしたくなって……そう言おうとした時、オレの言葉を遮るように楠さんが「凛太くん」と呼んだ。うつむいてたオレが顔を上げると、楠さんはとても柔らかく笑った。

「詳しいことは聞かなくても分かるから。二人が一緒に居る中で、瑛士さんが凛太くんを可愛がってるのも、凛太くんが瑛士さんを信頼してるのも分かるし――そのうえで、二人がしてることは、別にオレや拓真くんが何か言うことでもないんだよ。それでも言いたい話なら、もちろんちゃんと聞くよ。言いたい?」
「――」

 オレは少し黙って考えて、それから、首を横に振った。
 瑛士さんが言うなら良いけど、オレが勝手に言わなくてもいいのかも、と思ったから。
 すると、楠さんが続けて話し始める。

「まあ、少し思うのは、契約で結ばれた関係なら、感情的なものは除いたほうがスムーズだと思うんだけど……なんかそれも違うように見えるしね」

 楠さんは、クスッと笑って、オムライスに視線を移した。

「瑛士さん、料理は作れる人だけど、忙しいからずっと作ってなかったと思う。そんなでっかいオムライス、凛太くんの為に作ってるんでしょ。嬉々として」
 口元を緩めて笑いながら、楠さんはオレを見つめた。

「昨日もすごく心配そうだったよ。来ないでって言われたけど、大丈夫かな、って。ヒートがどうなるかも、それが仕方ないってことも全部知ってるのに、めちゃくちゃ心配そうで。だから瑛士さんは仕事には来ないなって、思ってた。案の定来なくてさ。ほんと、笑っちゃうんだけど」
「すみません、オレのせいでお仕事」
「違うよ。凛太くんのせいじゃない。凛太くんは、一人で耐えようとしてたんでしょ。全部、瑛士さんが決めたことだから」

 その時、瑛士さんと有村さんが部屋に戻ってきた。歩いてきながら、瑛士さんが楠さんに視線を向ける。

「オレが何? 京也さん」
「――ここで起こってることは全部、瑛士さんが決めてるってことを、凛太くんに言ってたとこです。瑛士さんが仕事に行けなかったのも、オレのせいですみません、とか言うので」
「ああ」
 はは、と笑いながら、瑛士さんがオレの前に腰かける。隣に座った有村さんは、息をつきながら軽く腕を組んだ。

「そうだね。全部オレが決めてる。まあ……迷惑かけてごめんね、京也さんも拓真も」
「構いませんよ」
「まあ、少なくとも凛太くんは悪くないな」

 楠さんと有村さんがそんな風に言うと、瑛士さんがちょっと不服そうな顔をした。

「何それ、オレは悪いみたいだな?」
「悪くないのか?」
「悪くないだろ?」

 おかしそうに笑いながら言う瑛士さんに、有村さんも苦笑してる。
 そのままオレに視線を向けた瑛士さんは、ふ、と目を細めた。

「凛太、もうやめとく? お腹いっぱいだよね」
「あ、はい。ごちそうさまでした。すっごくおいしかったです」

 手を合わせると、瑛士さんが、ふふっと微笑む。

「冷蔵庫入れてきますね」
 立ち上がると、瑛士さんも自分のお皿を手に取りながら立ち上がった。

「一緒に片付けよ」
「あ、はい」
 頷きながら、瑛士さんと並ぶ。

「量、半分くらいで良かった?」
「あー……はい。そうかも。でもこんなおっきいの初めてみたので、嬉しかったです」
「ならよかった」

 クスクス笑いながら、瑛士さんがカウンターに食器を置く。

「凛太、コーヒー飲む?」
「あ、はい。じゃあオレ、洗っちゃいますね」

 冷蔵庫に残りのオムライスを入れてから、食器を洗う横で、瑛士さんがコーヒーを淹れてくれた。
 おいしそうな色のカフェオレとともに、もう一度席に座ると、「さて」と瑛士さんが息をついた。


「大事な話を、しようかな」

 揺るぎのないまっすぐな視線を、瑛士さんは二人に順番に、向けた。
 空気が変わる。
 いつもふわふわ優しい瑛士さんと、少し違う。オレは少し、背筋を伸ばした。


 腕を組んでた有村さんもその腕を解いて、テーブルの上に置く。楠さんは、テーブルの横に置いていた手帳を開いて、ボールペンの芯を出す。


 ゆっくりした口調で、瑛士さんが話しはじめた。
 






しおりを挟む
感想 123

あなたにおすすめの小説

学内一のイケメンアルファとグループワークで一緒になったら溺愛されて嫁認定されました

こたま
BL
大学生の大野夏樹(なつき)は無自覚可愛い系オメガである。最近流行りのアクティブラーニング型講義でランダムに組まされたグループワーク。学内一のイケメンで優良物件と有名なアルファの金沢颯介(そうすけ)と一緒のグループになったら…。アルファ×オメガの溺愛BLです。

のほほんオメガは、同期アルファの執着に気付いていませんでした

こたま
BL
オメガの品川拓海(しながわ たくみ)は、現在祖母宅で祖母と飼い猫とのほほんと暮らしている社会人のオメガだ。雇用機会均等法以来門戸の開かれたオメガ枠で某企業に就職している。同期のアルファで営業の高輪響矢(たかなわ きょうや)とは彼の営業サポートとして共に働いている。同期社会人同士のオメガバース、ハッピーエンドです。両片想い、後両想い。攻の愛が重めです。

親友が虎視眈々と僕を囲い込む準備をしていた

こたま
BL
西井朔空(さく)は24歳。IT企業で社会人生活を送っていた。朔空には、高校時代の親友で今も交流のある鹿島絢斗(あやと)がいる。大学時代に起業して財を成したイケメンである。賃貸マンションの配管故障のため部屋が水浸しになり使えなくなった日、絢斗に助けを求めると…美形×平凡と思っている美人の社会人ハッピーエンドBLです。

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

オメガ大学生、溺愛アルファ社長に囲い込まれました

こたま
BL
あっ!脇道から出てきたハイヤーが僕の自転車の前輪にぶつかり、転倒してしまった。ハイヤーの後部座席に乗っていたのは若いアルファの社長である東条秀之だった。大学生の木村千尋は病院の特別室に入院し怪我の治療を受けた。退院の時期になったらなぜか自宅ではなく社長宅でお世話になることに。溺愛アルファ×可愛いオメガのハッピーエンドBLです。読んで頂きありがとうございます。今後随時追加更新するかもしれません。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

そばかす糸目はのんびりしたい

楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。 母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。 ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。 ユージンは、のんびりするのが好きだった。 いつでも、のんびりしたいと思っている。 でも何故か忙しい。 ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。 いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。 果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。 懐かれ体質が好きな方向けです。

ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学時代後輩から逃げたのに、大人になって再会するなんて!?

灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。 オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。 ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー 獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。 そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。 だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。 話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。 そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。 みたいな、大学篇と、その後の社会人編。 BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!! ※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました! ※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました! 旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」

処理中です...