「トリプルSの極上アルファと契約結婚、なぜか猫可愛がりされる話」

星井 悠里

文字の大きさ
132 / 170

131.あったかいきもち




 部屋に入ると、内海教授と佐川教授がちょうど二人そろっていた。
 
「おはようございます、すみません、すこしお話があるんですけど」
「おはよう、どうしたの?」

 佐川教授が言って、隣で内海教授もオレを見上げた。

 オレは、忙しい三年間は結婚を延期することになって、グループの創立記念パーティーでさらっと婚約を発表することになったと、二人に簡単に説明した。

「なので、結婚式とか、恩師としての挨拶とか、そういうのはなくなりました。すみません、なんだか、お騒がせして……」
「ふうん……まあ、賛成だな」

 内海教授が笑って、頷いた。

「お前、ここから、ものすっごく忙しいんだからな。最悪、どっかで離婚かと思ってたぞ」
「教授、思っててもそういうのは言わない物ですよ」
「つか、思ってただろ? 医学生と新婚生活両立できないって」
「――まあ……色んな人がいますからね。出来ないとは限りませんけど、まあ、かなり難しいだろうとは思ってましたが」
「ほらみろ」
 
 先に机に座った竜は、話には入ってこないけど、なんだか面白そうにこっちを見ている。
 離婚。……最初の約束のまま結婚して、離婚してたら、二人には、やっぱりなとか思われていたのかな。そう思うと、なんだか不思議な感覚。

「それで? そっちのパーティーには、招待してもらえるのか?」
「え?」
 ……内海教授が、竜と同じようなことを言っている。

「でも、創立記念のパーティーなんて、教授たちには関係が……?」
「あるだろ、あのグループ、すごく医療系の会社多いし、研究者も多いからな。参加したら、なにかしら、楽しいこともあるかもしれない。それに、凛太の婚約者のトリプルSとも、やっぱり話してみたいしな」
「えと……佐川教授も、ですか?」

 不思議に思いながら聞いてみると、んー、と考えた佐川教授が、ふいに、にこっと笑った。

「そうだね、なんだか面白そうだし。行きたいかも。あぁ、でももちろん、婚約者に聞いて、よかったら、ね?」
「あ、……はい。分かりました」

 竜が口元を押さえて、ぷ、と笑っているし、ほらな、と口の動きで言っている。まだゼミの皆が来ていないのをいいことに、そうだ、と教授たちを見つめ直した。

「あの、話は全然違うんですけど……あの、オレ、瑛士さんのフェロモン、分かりました……」

 え、と二人そろって、ガン見してくる。うぅ。そのフェロモンが分かったいきさつとかを考えられているのかと思うと、ものすごく恥ずかしくなってくる。
 これは早くこの話は終えてしまうに限る。

「あの、それで瑛士さんも、オレのが分かったみたいです」
「それは確かに?」
「……はい」

 なんならオレが分かる前から、ちょっと感じ取られていたくらいだったから、それは確かだ。

「――でも、瑛士さんが分かった時に一緒にいたアルファの二人の人は、気付かなかったです。なので、やっぱり全員に分かるようになったというよりは……分かる人が増えた、というんでしょうか……よく、分からないんですけど」
「なるほど……」
 オレの言葉に、教授二人は興味深そうな顔をしている。その時、数人が一緒にゼミ室に入ってきた。

「じゃあその話は、また今度で。とりあえず、パーティーの方は、聞いてみてくれる?」

 佐川教授ににっこりと笑って言われて、オレは、はい、と頷いた。
 竜の隣に腰かけると、竜はオレを見てニヤリと笑い、「ほらなー? 皆行きたいって思うって」と言ってくる。

 まあ、確かに……医療系の会社の多いグループなんだろうけど。
 そこに行って、この三人は、何するつもりなんだろう……?

 ――瑛士さんに聞いたら、きっとオッケイくれてしまう気がするけど。
 と、そこで講義が始まって、考えるのは後回しにした。


 授業が終わるともう、昼食の時間だったので、皆は早々と立ち上がって出て行く。そんな中、内海教授が言った。

「凛太、さっきの話、もう少し他に何か出てきたら、また話、聞くから」
「あ。はい、分かりました」

 フェロモンの話。他に何か。出てくるかなぁ。んーどうだろ、と考えながら、立ち上がった時、ポケットのスマホが震えた。

「あ。瑛士さんだ。電話していい?」
「食堂に歩きながらにしようぜ」
「うん。ごめん」

 教授二人に別れを言って、竜と二人で廊下に出ながら、瑛士さんの電話に出る。

「もしもし」
『あぁ、凛太? ――体調はどう? 大丈夫?』

 優しい声と、あったかい話し方。
 自然と、頬が緩む。どうして瑛士さんはこんなにあったかいのかなあ。電話なのにすごいよなぁ、なんて感心してしまう。

「あ、はい。なんかもう、完全に普通通りみたいです」
『ほんとに?』
「はい。ありがとうございます、心配してくれて」
『うん。心配――でも、それだけじゃなくて』

 そう言って、瑛士さんは、くすくす笑う。

『ちょっとでも変だったら迎えに行くのに、って思ってるから、ちょっと残念。あ、いや、もちろん、心配の方が、大きいけど』
「瑛士さん……楠さん、やっと来たって顔してませんでしたか?」
『あ、言ってたな、それ。何で分かったの?』
「いや、分かります……」

 やっぱり。
 瑛士さんののどかな言葉には、くすくす笑ってしまうけど、きっと楠さん的には、本気で「やっと来た」なんだろうなぁ、と思ってしまう。

 なんか、オレのヒートで、瑛士さんや楠さんのお仕事に支障をきたして、ほんとすみません、という気分になるけど。

 楠さんもいつも優しいので――楠さんを思い出してもやっぱり、あったかい気持ちになる。





(2025/10/14)
感想 158

あなたにおすすめの小説

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます

七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。 歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。 世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。 気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。

学内一のイケメンアルファとグループワークで一緒になったら溺愛されて嫁認定されました

こたま
BL
大学生の大野夏樹(なつき)は無自覚可愛い系オメガである。最近流行りのアクティブラーニング型講義でランダムに組まされたグループワーク。学内一のイケメンで優良物件と有名なアルファの金沢颯介(そうすけ)と一緒のグループになったら…。アルファ×オメガの溺愛BLです。

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

【完結】「元カノが忘れられないんでしょう?」と身を引いた瞬間、爽やか彼氏の執着スイッチが入りました

恋せよ恋
恋愛
「元カノが忘れられないなら、私が身を引くわくべきよね」 交際一周年、愛するザックに告げた決別の言葉。 でも、彼は悲しむどころか、見たこともない 暗い瞳で私を追い詰めた。 「僕を捨てる? 逃げられると思っているの、アン」 私の知る爽やかな王子の仮面が剥がれ落ち、 隠されていた狂おしいほどの独占欲が牙を剥く。 🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。 🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。 🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。 🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。 🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!

借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる

水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。 「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」 過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。 ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。 孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。

帝に囲われていることなど知らない俺は今日も一人草を刈る。

志子
BL
ノリと勢いで書いたBL転生中華ファンタジー。 美形×平凡。 乱文失礼します。誤字脱字あったらすみません。 崖から落ちて顔に大傷を負い高熱で三日三晩魘された俺は前世を思い出した。どうやら農村の子どもに転生したようだ。 転生小説のようにチート能力で無双したり、前世の知識を使ってバンバン改革を起こしたり……なんてことはない。 そんな平々凡々の俺は今、帝の花園と呼ばれる後宮で下っ端として働いてる。 え? 男の俺が後宮に? って思ったろ? 実はこの後宮、ちょーーと変わっていて…‥。