「トリプルSの極上アルファと契約結婚、なぜか猫可愛がりされる話」

星井 悠里

文字の大きさ
138 / 142

137.いろんな緊張

しおりを挟む
 ◆◇◆

 夕飯の片付けを終えたあと、瑛士さんが紅茶を入れてくれた。
 おみやげのお菓子を瑛士さんが取ってきてくれて、マドレーヌもテーブルに並べると、雅彦さんが立ち上がりながら言った。

「瑛士、なにかレコードかけていいか?」
「ああ、オレかけるよ」

 瑛士さんが部屋の隅に行って、準備をし始める。
 あ。あの棚って、レコードだったんだ。なんだろうと思ってたんだよね。上に黒い箱がのってて下は扉のついた木の棚。

 レコードって、初めて見るかも……。
 瑛士さんについていって、後ろからそっと覗き込んでいると、隣においで、と笑われた。

「何で後ろにいるの」
「邪魔しちゃいけないかなと思って……レコードってそーっとするイメージで」
「大丈夫だよ」

 くす、と笑う瑛士さんの隣に、今度はちゃんと立つ。
 瑛士さんは慣れた手つきでカバーをパカッと開けた。下の棚を開けると引き出しが出てきて、レコードが縦に並んでいた。

「じいちゃん、何がいい?」
「何でもいいよ」

 雅彦さんの返事を聞いた瑛士さんがオレを見下ろして、目が合うと、くすっと笑った。

「選んでいいよ、凛太」
「えっいいんですか?」
「うん。ものすごく、わくわくしてるし」
「あ。はい。してます」

 完全にバレている。
 初めて触るレコードに少し緊張しながら、触れてみる。指先でパラパラと手前に倒しながら、デザインと曲名を見ていく。

「わー……レコードって、カッコいいですね」

 芸術品みたいに見える一枚を手に取って、そのデザインに魅入っていると、瑛士さんは、ふ、と微笑んだ

「いいよね。ジャケットが好きで買うこともあるくらいだから」
「わー。分かります。これ、好きです」
「ああ、それも、ジャケ買いしたやつ」

 わあ、そうなんだ。
 表面と裏面も見てから、オレは瑛士さんを見上げた。

「これが聴いてみたいです」

 古い映画のワンシーンを切り取ったみたいなデザイン。どんな音楽が入ってるんだろうと、わくわく。

「ん、いいよ」
 オレから受け取った瑛士さんが、盤のふちを丁寧に持って取り出す。

「こっちの面に触らないように持つんだよ」
 柔らかい声で言いながら、瑛士さんがプレーヤーにセットする。スイッチを入れると、回り始める。
 おお。この感じはテレビとかで見たことがあるかも……。

「ブラシでほこりをとるんだよ」
「へええ……おもしろいですね」
「やりたい?」

 うんうん頷くとブラシを持たせてくれる。撫でるみたいに掃除が終わると、ブラシを片付けてから、瑛士さんがオレを見つめた。

「凛太、針を落とすの、やってみる?」
「えっ。オレ、できますか?」
「できるよ、おいで」

 おいで? と思うと、後ろからオレの手に、瑛士さんの手が重なる。包まれるみたいな感覚がある。ちょっと、息が止まった。

「このレバーを持ち上げて、針先を、ゆっくり下ろすだけ。この端の溝にね」
「……はい」

 いろんな意味で、指が震えそう。

「怖がらなくていいよ。そっとすれば大丈夫だから」

 優しい声が、すぐ近くで囁く。
 いろんな意味のドキドキと戦いながら、瑛士さんと一緒に針先を溝に触れさせた。ぷつ、と音がして、柔らかい音が、スピーカーから流れだした。

「上手」
「あり、がとうございます……」

 瑛士さんがそっと手を放して、くすっと笑う。
 オレはなんだか色んな意味で緊張した手をなんとなくこしこしこすり合わせながら、回転してるレコードを見つめる。

「緊張した?」
 瑛士さんは、ふ、と優しく笑う。

 多分瑛士さんは、レコードで緊張してると思ってるのだろうし。確かにそれも緊張はしてたんだけど。
 ――瑛士さんが急に後ろからくっついてくるから……。
 内心少し困りながらも、でも、スピーカーから流れる音楽に聞き惚れていると、雅彦さんが笑った。

「レコードなんて、見ないよね」
「あ、はい。むかしの道具、みたいなので見たことがあるくらいで……」
「オレが好きでかけていたら、瑛士もいつのまにか好きになっててね」

 雅彦さんはくすくす笑ってそんな風に言う。

「そうそう。だからこっちの部屋にも置いたんだけどね。オレの部屋の方が、スピーカーも本格的だから。今度向こうにも、おいでね」

 微笑んでくれる瑛士さんに頷きながら、テーブルに戻った。








◇ ◇ ◇ ◇


(2025/12/21)

お久しぶりです( ノД`)
……久しぶりすぎて、更新、余計に緊張してます💦ヒー。
本当は昨日更新しようと(xにも書いてたし)してたんですが、
読み返しすぎて、遅れました💦

とある事情がありまして、
投稿サイトの更新、離れておりました。
事情は、またちゃんと書けたら、置きます。

更新は、ぼちぼち再開していきたいと思います。
またよろしくお願いします。


悠里
しおりを挟む
感想 129

あなたにおすすめの小説

のほほんオメガは、同期アルファの執着に気付いていませんでした

こたま
BL
オメガの品川拓海(しながわ たくみ)は、現在祖母宅で祖母と飼い猫とのほほんと暮らしている社会人のオメガだ。雇用機会均等法以来門戸の開かれたオメガ枠で某企業に就職している。同期のアルファで営業の高輪響矢(たかなわ きょうや)とは彼の営業サポートとして共に働いている。同期社会人同士のオメガバース、ハッピーエンドです。両片想い、後両想い。攻の愛が重めです。

帝に囲われていることなど知らない俺は今日も一人草を刈る。

志子
BL
ノリと勢いで書いたBL転生中華ファンタジー。 美形×平凡。 乱文失礼します。誤字脱字あったらすみません。 崖から落ちて顔に大傷を負い高熱で三日三晩魘された俺は前世を思い出した。どうやら農村の子どもに転生したようだ。 転生小説のようにチート能力で無双したり、前世の知識を使ってバンバン改革を起こしたり……なんてことはない。 そんな平々凡々の俺は今、帝の花園と呼ばれる後宮で下っ端として働いてる。 え? 男の俺が後宮に? って思ったろ? 実はこの後宮、ちょーーと変わっていて…‥。

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

学内一のイケメンアルファとグループワークで一緒になったら溺愛されて嫁認定されました

こたま
BL
大学生の大野夏樹(なつき)は無自覚可愛い系オメガである。最近流行りのアクティブラーニング型講義でランダムに組まされたグループワーク。学内一のイケメンで優良物件と有名なアルファの金沢颯介(そうすけ)と一緒のグループになったら…。アルファ×オメガの溺愛BLです。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

若頭の溺愛は、今日も平常運転です

なの
BL
『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』続編! 過保護すぎる若頭・鷹臣との同棲生活にツッコミが追いつかない毎日を送る幼なじみの相良悠真。 ホットミルクに外出禁止、舎弟たちのニヤニヤ見守り付き(?)ラブコメ生活はいつだって騒がしく、でもどこかあったかい。 だけどそんな日常の中で、鷹臣の覚悟に触れ、悠真は気づく。 ……俺も、ちゃんと応えたい。 笑って泣けて、めいっぱい甘い! 騒がしくて幸せすぎる、ヤクザとツッコミ男子の結婚一直線ラブストーリー! ※前作『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』を読んでからの方が、より深く楽しめます。

処理中です...