「トリプルSの極上アルファと契約結婚、なぜか猫可愛がりされる話」

星井 悠里

文字の大きさ
142 / 142

141.別世界

しおりを挟む

 瑛士さんが電話したら、今日で大丈夫ということになって、そのままエステに向かうことになった。
 二十分くらい走ったところで、車を下りて、楠さんと別れた。

 瑛士さんについて少し歩いて、あるオシャレな外観のビルに入った。これまたおしゃれなエントランスを通って、エレベーターに乗る。エレベーターの中も白くて明るい。外の夜景も、綺麗に見えた。

 エステ。……なんかすごく、ドキドキする。

「凛太、緊張してる?」
「はい。ちょっと……いや、かなり……?」

 笑いを含んだ瑛士さんの声に、オレは素直に頷いた。
 すると瑛士さんは、ふ、と笑ってオレを見つめる。

「パーティーまで時間がないし、最低限のことだけすることになると思うから。大丈夫だよ」
「はい……」

 頷くけど、何が最低限なのか分からず。なので、何がどう大丈夫なのかも分からない。
 でも、今聞かなくてもついたら分かるだろうと、聞かずに階数表示を見ていると、エレベーターが止まった。
 エレベーターを降りて歩きだすと、床が柔らかくて歩く音がしない廊下。……なんか、ここだけで高級そう。

「ごめんね、凛太、学校の帰りに突然連れてきちゃって」

 並んで歩きながら顔を見上げると、瑛士さんは少し申し訳なさそうに眉を下げた。

「今日は顔を整えてくれるみたいだから、短めで済むと思うけど」
「まだ二十一時ですし。大丈夫ですよ」

 そう言うと、瑛士さんは少し、言葉を探すみたいに一拍置いてから微笑んだ。

「ついてきてくれて、ありがとね」
「いえ……というか、オレのほうこそ、連れてきてくれてありがとう、なのではないかなと」
「だってエステなんて来たくないでしょ」
「いや、でも……瑛士さんの隣に立つからには……」

 元が元だからそんなに変わらないとは思うけど、でも、出来るだけちょっとだけでも、ほんのほんのすこーーーしだとしても、ましになったらいいなとは、思う。

 おしゃれな英語の文字が書かれているガラス張りの自動ドアが開いた。瑛士さんに続いて中に入ると、すごく明るくて静かで、とてもいい匂いがした。

 豪華な照明と、白くて綺麗な空間。本当なら、オレの人生とは、一生かすりもしない場所かも……と、思いながらキョロキョロしてしまう。

「いらっしゃいませ、北條さま」

 瑛士さんのこと、顔で分かるんだ。……なんだかよく分からないけれど、さすがだな、なんて思っていると、瑛士さんがにっこり「こんばんは」と微笑む。

「麻里さんに連絡してあるので、呼んでもらえる?」
「はい、今お呼びしますね」

 そんな会話を聞きながら。

 ここって、一回いくらするんだろう。
 ていうか、オレ、場違いすぎるよ~。服、完全にいつも通りの普通の私服だし……いいのかな、こんな服装でここに入って。

 ドキドキしていると、受付の人が、完璧な笑顔でこちらを見た。
 もう、その笑顔だけで、もう帰りたい。

 オレを連れてきた張本人の瑛士さん。オレの様子を見て、楽しそうにしてる。

「こちらでお待ちください」

 案内されて、瑛士さんとふかふかの椅子に座らされる。
 ……ふかふかすぎて、落ち着かない。

 そのとき。

 奥のドアが静かに開いて、人が出てきて……一瞬、時間が止まった気がした。

 出てきたのは、すごく、綺麗な人だった。
 いや……綺麗なんて言葉じゃ足りない。それ以上、なんて言ったらいいんだろう。

 凛としていて、でも歩く姿も、仕草もすごく柔らかい。体の線が出るスーツも、髪も、肌も……なんだかもう、全部が整っている感じがした。
 
「瑛士さん、いらっしゃい」

 ふわりと、この上なく綺麗な笑みを、瑛士さんに向ける。

「麻里さん、ごめんね急に――よろしく。電話で話した、凛太、だよ」

 瑛士さんがそう言うと、その人が、まっすぐこちらを見る。
 睫毛の長い大きな瞳に見つめられて、息が止まってしまう。

 「美形な人」には、瑛士さんで少し慣れた気がしてたけど、女性だとまた少し違うみたい。
 派手というわけじゃないけど、肌が白くて瞳が大きくて、輪郭が、すごく綺麗。

 しわとかたるみとか、一切ないというか……。
 この人を見たら、このエステに通いたくなるんじゃないかなあって、ふと、思った。

 その大きな瞳が、オレを見て、少し緩んだ。
 値踏みされてるとかそんな感じじゃない。でも、じっと見つめられる。

 ……わー。もう、ただただ、綺麗。


 頭の中で、そう思ったけど、口には出せなかった。

 綺麗な人だけど……それを振りかざさない感じ。でもきっと、心、強そう。
 いろんな意味で、自分とは、別世界の人な気がする。

 ……でも、瑛士さんとは、同じ世界の人。
 ていうか、そもそも、瑛士さんがオレにとって、本来別世界の人だもんね。
 なんて思っているところに、瑛士さんが、オレを見て言う。
 

「麻里さんは、ここの社長さんだよ」


 そう聞いて、妙に納得した。






しおりを挟む
感想 129

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(129件)

昼寝ネコ
2026.01.28 昼寝ネコ

悠里さま
早い時間(夜中じゃなくて)に更新ありがとうございます🙇😊凛太がお父さんにメールを送って暗い気持ちになりそうな時に見つけてくれる瑛士さん💖さすがです🎉少しづつ、一歩づつ進んでいけると良いですね💕
応援させて下さいね😊

2026.01.29 星井 悠里

昼寝ネコさま♡

読んでくださって&応援もありがとうございます。
少しずつ進んでいく二人を、見守って頂けたら嬉しいですヾ(*´∀`*)ノ🩷

解除
ahama.01
2026.01.23 ahama.01

凛太が可愛くてお話が面白くて一気に全部読んでしまいました。続きも楽しみにしています。

2026.01.29 星井 悠里

ahama.01 さま♡

一気に読んでくださってありがとうございますヾ(*´∀`*)ノ♡
楽しんでいただけたようで、とても嬉しいです。
続きもお付き合いいただけたら幸いです🩷✨

解除
ねぇね
2026.01.23 ねぇね

凛太可愛い❤️瑛士さんちゃんと腕の中に囲ってますね!ぱちぱち👏お父さんとの対決無事(?)にすみます様に祈ります。神様、悠里様(笑)🤭

2026.01.29 星井 悠里

ねぇね様♡

ありがとうございます♡
凛太を可愛いと思っていただけて嬉しいです。
これからの展開も、温かく見守ってもらえたらと思います°˖☆◝(⁰▿⁰)◜☆˖°

解除

あなたにおすすめの小説

のほほんオメガは、同期アルファの執着に気付いていませんでした

こたま
BL
オメガの品川拓海(しながわ たくみ)は、現在祖母宅で祖母と飼い猫とのほほんと暮らしている社会人のオメガだ。雇用機会均等法以来門戸の開かれたオメガ枠で某企業に就職している。同期のアルファで営業の高輪響矢(たかなわ きょうや)とは彼の営業サポートとして共に働いている。同期社会人同士のオメガバース、ハッピーエンドです。両片想い、後両想い。攻の愛が重めです。

学内一のイケメンアルファとグループワークで一緒になったら溺愛されて嫁認定されました

こたま
BL
大学生の大野夏樹(なつき)は無自覚可愛い系オメガである。最近流行りのアクティブラーニング型講義でランダムに組まされたグループワーク。学内一のイケメンで優良物件と有名なアルファの金沢颯介(そうすけ)と一緒のグループになったら…。アルファ×オメガの溺愛BLです。

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果

ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。 そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。 2023/04/06 後日談追加

親友が虎視眈々と僕を囲い込む準備をしていた

こたま
BL
西井朔空(さく)は24歳。IT企業で社会人生活を送っていた。朔空には、高校時代の親友で今も交流のある鹿島絢斗(あやと)がいる。大学時代に起業して財を成したイケメンである。賃貸マンションの配管故障のため部屋が水浸しになり使えなくなった日、絢斗に助けを求めると…美形×平凡と思っている美人の社会人ハッピーエンドBLです。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。