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43.「絶対」
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「そうだ、一回ちゃんと言っとくけど」
「?」
瑛士さんは、その綺麗な瞳を、煌めかせて、オレを少し睨んだ。
「ああいう店で働こうなんて、二度と思わないで。いい? 絶対、二度と」
「――」
真剣な瞳を見つめ返して、オレは、頷いた。
「あの時は、とりあえず話を聞きにチャレンジしようと、確かにしてましたけど……実際何するとこだったのか、今も分かんないですし……」
「チャレンジって……だめだよ、何をするかも分からず、チャレンジしたら」
「はい」
「危ないなぁ、もう……」
心底困ったように苦笑してる瑛士さん。
「オレが生きてればちゃんと助けるし――オレに何かあった時も、どうにかできるようにちゃんとしておくからね」
「大丈夫ですよ、オレ、わりと逞しいので。今までもなんだかんだでどうにかやってきましたし。ていうか、瑛士さんに何かあったらとか、聞きたくないです……」
「あ、ごめん。まあもしもの時の話だけど」
可愛いなあ、と笑いながら、瑛士さんはオレを見つめる。
「なんかそういう風に聞くと、凛太も、Ωっぽくはないよね。オレに、αっぽくないって言うけどさ」
「まあ……あ、でもオレは、抑制剤とか飲まなくてもいられるし、体調が悪くないからだと思います。やっぱり、体調悪いΩは――逞しくは、いられないですよね。まあでもおかげで、オレは、運よく元気なので、瑛士さんにもそんなにご迷惑かけたりしないでいられると思います」
ふふ、と笑ってみせると、目を細めて笑い返してくれる瑛士さんはとっても優しく見える。食事を終えると、和智さんがデザートを持ってきてくれた。目の前に置かれたお皿のデザートにびっくり。
「わぁ……綺麗ですね、なんですか??」
「さっき言ってた、カッサータ」
「宝石みたいですね。食べるのもったいない。何でこんなに綺麗なんですか?」
「チーズと生クリームの中に、ナッツとか、ドライフルーツが入ってるんだよ。綺麗に色が出るように、作ってある」
「初めて見ました~!」
食べていいのかな。というか、いいんだろうけど、本当に食べちゃうのもったいない。
瑛士さんと和智さんがクスクス笑いながらオレを見て言う。
「凛太、ものすごい、目がキラキラしてるよね」
「期待通りの反応、いいですね」
「新一、期待してたのか?」
「……なんか、してましたね」
「はは。可愛いでしょ」
「そうですね」
また言ってる、瑛士さんてば。二回目……。
なんか瑛士さんは、オレのことを「可愛いでしょ」って言うのだけど。うーん。べつにオレ、可愛くないし。瑛士さんの感覚がちょっと変わってるだけで。「可愛いでしょ」と人に聞くのはちょっと。聞かれた人も困ると思うんだよね。後でちょっと、言わないようにお願いしておこう。
和智さんは、間髪入れずに、そうですねって笑ってくれてるけど。大人な反応な気がする。……瑛士さんの周りの人は、なんだか皆、大人で、しっかりした人ばかりだな。だから、オレみたいな年下は、可愛いってなるのかもなぁ……そんな風に思いながら。
口に入れると、めちゃくちゃ、おいしい。
「おいしい?」
和智さんに聞かれて、思い切り頷く。そっか、と笑いながらコーヒーを注いで、「ごゆっくり」と和智さんが離れていった。
「――なんか、瑛士さんと食べる物って……今までオレの世界には存在しなかったものがいくつもありますね」
「そっか。良かった。おいしいんでしょ?」
「はい」
「なら何より」
ふ、と微笑む瑛士さんに、不思議になる。
「瑛士さんて。絶対αですよねぇ?」
「トリプルSだけど?」
「――どうしてそんなに、穏やかで優しいんですか? ランクが強いほど、偉そうになりそうなのに」
「んー……。嫌なαにしか会ってきてないのかな?」
と瑛士さんが苦笑い。
「……そう、ですね……まあ一番が父なんですけど……割と、そうです。あ、もちろん、良い人も居ますけど」
「αにだって、いろいろ居るよ。それに――凛太がいい子だから、オレは今こんな感じだけど――まあ、思うことをしようって時には、多少強引なこともするし、力も使うよ」
「力ですか?」
「オレ自身の力もだし、北條家の力も。いくらでも、使うから――まあ、そっちは、君の嫌いな、オレになるかもね」
「――……」
「凛太は、バースが強い、家柄が強いとか、好きじゃないよね……嫌われないように気を付けないと」
そんな風に言って、苦笑してる瑛士さん。
……嫌う?
オレが、瑛士さんを??
「無いですよ。嫌うなんて」
「――ん?」
「瑛士さんみたいな立場だと、優しくだけしてても駄目な時もあると思うし」
「――」
「嫌いになんて、ならない――」
なんかすごく勢いづいて言ってしまって、はっと気づいてちょっと口を紡ぐ。
「……うん。たぶん……ならないと、思います」
最後、ちょっと弱めに言ってみたのだけれど。
少し真顔だった瑛士さんが、なんか、ニヤ、と笑った。
「へえ。凛太は、オレのこと――嫌いにならない?」
「――あ、えと……多分、てことですけど……」
「多分なの?」
「……まあ……多分」
あんまりはっきり言いすぎて、ちょっと恥ずかしいので、もごもご言いながら、デザートをもぐもぐ頬張っていると。
瑛士さんは、クスクス笑った。
「オレは――凛太を嫌いには、絶対ならないと思う」
「――え」
「絶対だよ。分かる」
絶対。――とか言われると。
なんか。恥ずかしいかも。
「あり、がとうございます……」
「うん」
宝石みたいなデザートをじっと見つめる振りをして、俯いてるオレに。
瑛士さん、ふふ、と笑いながら、頷いた。
「?」
瑛士さんは、その綺麗な瞳を、煌めかせて、オレを少し睨んだ。
「ああいう店で働こうなんて、二度と思わないで。いい? 絶対、二度と」
「――」
真剣な瞳を見つめ返して、オレは、頷いた。
「あの時は、とりあえず話を聞きにチャレンジしようと、確かにしてましたけど……実際何するとこだったのか、今も分かんないですし……」
「チャレンジって……だめだよ、何をするかも分からず、チャレンジしたら」
「はい」
「危ないなぁ、もう……」
心底困ったように苦笑してる瑛士さん。
「オレが生きてればちゃんと助けるし――オレに何かあった時も、どうにかできるようにちゃんとしておくからね」
「大丈夫ですよ、オレ、わりと逞しいので。今までもなんだかんだでどうにかやってきましたし。ていうか、瑛士さんに何かあったらとか、聞きたくないです……」
「あ、ごめん。まあもしもの時の話だけど」
可愛いなあ、と笑いながら、瑛士さんはオレを見つめる。
「なんかそういう風に聞くと、凛太も、Ωっぽくはないよね。オレに、αっぽくないって言うけどさ」
「まあ……あ、でもオレは、抑制剤とか飲まなくてもいられるし、体調が悪くないからだと思います。やっぱり、体調悪いΩは――逞しくは、いられないですよね。まあでもおかげで、オレは、運よく元気なので、瑛士さんにもそんなにご迷惑かけたりしないでいられると思います」
ふふ、と笑ってみせると、目を細めて笑い返してくれる瑛士さんはとっても優しく見える。食事を終えると、和智さんがデザートを持ってきてくれた。目の前に置かれたお皿のデザートにびっくり。
「わぁ……綺麗ですね、なんですか??」
「さっき言ってた、カッサータ」
「宝石みたいですね。食べるのもったいない。何でこんなに綺麗なんですか?」
「チーズと生クリームの中に、ナッツとか、ドライフルーツが入ってるんだよ。綺麗に色が出るように、作ってある」
「初めて見ました~!」
食べていいのかな。というか、いいんだろうけど、本当に食べちゃうのもったいない。
瑛士さんと和智さんがクスクス笑いながらオレを見て言う。
「凛太、ものすごい、目がキラキラしてるよね」
「期待通りの反応、いいですね」
「新一、期待してたのか?」
「……なんか、してましたね」
「はは。可愛いでしょ」
「そうですね」
また言ってる、瑛士さんてば。二回目……。
なんか瑛士さんは、オレのことを「可愛いでしょ」って言うのだけど。うーん。べつにオレ、可愛くないし。瑛士さんの感覚がちょっと変わってるだけで。「可愛いでしょ」と人に聞くのはちょっと。聞かれた人も困ると思うんだよね。後でちょっと、言わないようにお願いしておこう。
和智さんは、間髪入れずに、そうですねって笑ってくれてるけど。大人な反応な気がする。……瑛士さんの周りの人は、なんだか皆、大人で、しっかりした人ばかりだな。だから、オレみたいな年下は、可愛いってなるのかもなぁ……そんな風に思いながら。
口に入れると、めちゃくちゃ、おいしい。
「おいしい?」
和智さんに聞かれて、思い切り頷く。そっか、と笑いながらコーヒーを注いで、「ごゆっくり」と和智さんが離れていった。
「――なんか、瑛士さんと食べる物って……今までオレの世界には存在しなかったものがいくつもありますね」
「そっか。良かった。おいしいんでしょ?」
「はい」
「なら何より」
ふ、と微笑む瑛士さんに、不思議になる。
「瑛士さんて。絶対αですよねぇ?」
「トリプルSだけど?」
「――どうしてそんなに、穏やかで優しいんですか? ランクが強いほど、偉そうになりそうなのに」
「んー……。嫌なαにしか会ってきてないのかな?」
と瑛士さんが苦笑い。
「……そう、ですね……まあ一番が父なんですけど……割と、そうです。あ、もちろん、良い人も居ますけど」
「αにだって、いろいろ居るよ。それに――凛太がいい子だから、オレは今こんな感じだけど――まあ、思うことをしようって時には、多少強引なこともするし、力も使うよ」
「力ですか?」
「オレ自身の力もだし、北條家の力も。いくらでも、使うから――まあ、そっちは、君の嫌いな、オレになるかもね」
「――……」
「凛太は、バースが強い、家柄が強いとか、好きじゃないよね……嫌われないように気を付けないと」
そんな風に言って、苦笑してる瑛士さん。
……嫌う?
オレが、瑛士さんを??
「無いですよ。嫌うなんて」
「――ん?」
「瑛士さんみたいな立場だと、優しくだけしてても駄目な時もあると思うし」
「――」
「嫌いになんて、ならない――」
なんかすごく勢いづいて言ってしまって、はっと気づいてちょっと口を紡ぐ。
「……うん。たぶん……ならないと、思います」
最後、ちょっと弱めに言ってみたのだけれど。
少し真顔だった瑛士さんが、なんか、ニヤ、と笑った。
「へえ。凛太は、オレのこと――嫌いにならない?」
「――あ、えと……多分、てことですけど……」
「多分なの?」
「……まあ……多分」
あんまりはっきり言いすぎて、ちょっと恥ずかしいので、もごもご言いながら、デザートをもぐもぐ頬張っていると。
瑛士さんは、クスクス笑った。
「オレは――凛太を嫌いには、絶対ならないと思う」
「――え」
「絶対だよ。分かる」
絶対。――とか言われると。
なんか。恥ずかしいかも。
「あり、がとうございます……」
「うん」
宝石みたいなデザートをじっと見つめる振りをして、俯いてるオレに。
瑛士さん、ふふ、と笑いながら、頷いた。
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