104 / 138
103.普段しないこと
しおりを挟む
「じゃあ……オレ、瑛士さんに、お礼したいので、おみやげ買わせてください」
そう言ったら、瑛士さんはオレを見つめて、すごく嬉しそうに笑ってくれた。そんな風に笑ってくれると、何だかくすぐったい気持ちになる。
「どんなのがいいとかありますか……?」
「凛太がオレに選んでくれたなら、なんでもいいんだけど……あ、じゃあ、凛太と水族館に行ったって思いだせるものがいいな」
「え、難しくないですか?」
何だろうと首を傾げると、瑛士さんは「まあ、基本なんでもいいから」と笑った。
「分かりました。そしたら……」
「ん?」
「オレのも、瑛士さんが選んでくれませんか? オレも、なんでもいいです。もしぬいぐるみだったら、持ち歩くことにします」
ぬいぐるみだったとしても、そうすればいいよね、と思って言ったら、瑛士さんはきょとんとした顔でオレを見つめた。
「持ち歩くの? ぬいぐるみを?」
「やっぱりなんとなく置いておくのは可哀想な気がして。でも瑛士さんが選んでくれるならいいかなと。ぬいぐるみも可愛いですし」
「――へえ? じゃあ、特大のぬいぐるみにしようかなあ」
「えっ」
持って歩けるかな? さすがにすごく目立つな、とびっくりしていると、瑛士さんが、ははっ、と可笑しそうに笑った。
「嘘だよ。そんな顔しないで」
「どうやって持ち歩こうって思っちゃって」
「持ち歩く方向で考えてたんだ?」
ますます可笑しそうに笑う瑛士さんの笑顔は、なんだか、見てるこっちまで嬉しくなる。そういえば、とふと思いついて、じっと見つめていると、ん? と微笑んでくれたので、聞いてみることにした。
「瑛士さんて……いつもお仕事の時は、真面目な顔してるんですか?」
「って、何その質問」
言いながら、くっ、と笑い出して、またしばらく笑ってる。
「真面目な顔して、ちゃんと仕事してるから安心して。凛太といる時とは違うよ」
「そうなんですね……」
「オレの真面目な顔が想像できない?」
「そんなことはないんですけど……なんか、オレは、瑛士さんが笑ってる顔が、いつも頭にあるから。お仕事の時もそうなのかなって思っただけなんですけど」
「まあ仕事中は割と真面目な顔してるよ?」
クスクス笑いながら、瑛士さんは言う。
「でも仕事の時も、凛太が隣にいてくれたら、笑ってるられかもなぁ……そう思うくらい、オレは凛太と居るの楽しいよ」
「……オレも楽しいです」
「何だろうね。合うのかなぁ、波長が」
「波長……」
うん。そんな感じも、する。
とくにすごく理由がある訳じゃないけど、なんとなく、安心して、なんとなく、楽しい。
「――ん、じゃあオレ、凛太が喜びそうなものを、選ぶことにする」
「オレも、頑張ります!」
「レジは別々にしようね。買ったら合流。車の中で、渡し合おうよ」
「家じゃなくてですか?」
「早く見たいからさ」
「確かに。そうですね」
ふ、と笑い合って、瑛士さんと離れた。買い終わるまでは近づかないってことで、って、約束して、お店をうろうろ回り始めた。
いくつも店舗があるので、一回離れたら、瑛士さんがどの店に居るかもわからない。
早く決めよう。
――瑛士さん、さっき、凛太と水族館に行ったって思い出せるもの、って言ってたけど……難しいな。何なら思い出してくれるだろ。
オレに似てるって、瑛士さんが言ってたのは赤ちゃんペンギン……似てるかな。ていうかオレって、瑛士さんにとって、どんだけ赤ちゃんなんだろう。一応もう十九歳なんだけど。せめて、普通のペンギンだったらまだ……いや、ペンギンな時点で、めっちゃ可愛いじゃん。
オレ、ペンギンには似てないと思うのだけど。
そう思いながらも、似てるね、と言って笑ってた瑛士さんの優しい笑顔が思い出される。
ペンギン……それこそ瑛士さんにぬいぐるみ買う訳にはいかないし。ストラップも使わないだろうし、ていうか、ペンギン、瑛士さんが持ってるの見られたくないよねと、ふ、と笑ってしまう。大人なイメージが変わっちゃう気がする。お仕事してるときが多いだろうからなぁ……。
あれこれ見かけては、いろいろ考えて、全然決まらなかったのだけれど、あるキーホルダーの前で、止まった。
可愛い赤ちゃんペンギン。なんだけど子供っぽくはない。ちょっとおしゃれに描かれている。
アクリルの中に銀色のラメが入ってるのかな。裏は少しキラキラしてて、表に、ぷっくりとしてて透明感のある雰囲気で赤ちゃんペンギンと、横にすごくちっちゃいお魚がついてる。……可愛い。
小さいキーホルダーだから、どこかに置いてもらえるか、キーケースとかに忍ばせてもらえるかも。なんなら机の引き出しの端っことかでもいいかな。
小さすぎる気がするけど、でも、目立たず、瑛士さんの側に居させてもらえたら嬉しい……って、オレ、ペンギン気分になってるかもしれない?
ちょっと苦笑しつつ手に取り、学校向けにたくさん入ってるお菓子を買った。そういえばたまに旅行のおみやげでいろいろ配られてるなと思いだしたから。αが多いからなのか、忙しい中でも旅行とかなんかよく行くんだよなぁ。
オレ、普段どこも行かないから、おみやげとか買っていったことないし。たまにはいっか。
ほんと、瑛士さんと居ると、普段しないことが、いろいろ出てくる気がする。
それを選んでるついでに、おいしそうなレアチーズケーキを発見。
中身には何の関係もないけど、包装紙にはペンギンの絵が描いてある。
――瑛士さんと一緒に食べよ。チーズ好きだから、これも好きだよね。
ふふ。楽しみ。
買うものを抱えてレジに向かう途中で、かなり離れた違う店舗から出てくる瑛士さんと目があった。手に持ってた袋を挙げて、多分、買ったよ、とか言ってるのだと思う。
笑顔で頷いて、オレはレジに急いだ。
そう言ったら、瑛士さんはオレを見つめて、すごく嬉しそうに笑ってくれた。そんな風に笑ってくれると、何だかくすぐったい気持ちになる。
「どんなのがいいとかありますか……?」
「凛太がオレに選んでくれたなら、なんでもいいんだけど……あ、じゃあ、凛太と水族館に行ったって思いだせるものがいいな」
「え、難しくないですか?」
何だろうと首を傾げると、瑛士さんは「まあ、基本なんでもいいから」と笑った。
「分かりました。そしたら……」
「ん?」
「オレのも、瑛士さんが選んでくれませんか? オレも、なんでもいいです。もしぬいぐるみだったら、持ち歩くことにします」
ぬいぐるみだったとしても、そうすればいいよね、と思って言ったら、瑛士さんはきょとんとした顔でオレを見つめた。
「持ち歩くの? ぬいぐるみを?」
「やっぱりなんとなく置いておくのは可哀想な気がして。でも瑛士さんが選んでくれるならいいかなと。ぬいぐるみも可愛いですし」
「――へえ? じゃあ、特大のぬいぐるみにしようかなあ」
「えっ」
持って歩けるかな? さすがにすごく目立つな、とびっくりしていると、瑛士さんが、ははっ、と可笑しそうに笑った。
「嘘だよ。そんな顔しないで」
「どうやって持ち歩こうって思っちゃって」
「持ち歩く方向で考えてたんだ?」
ますます可笑しそうに笑う瑛士さんの笑顔は、なんだか、見てるこっちまで嬉しくなる。そういえば、とふと思いついて、じっと見つめていると、ん? と微笑んでくれたので、聞いてみることにした。
「瑛士さんて……いつもお仕事の時は、真面目な顔してるんですか?」
「って、何その質問」
言いながら、くっ、と笑い出して、またしばらく笑ってる。
「真面目な顔して、ちゃんと仕事してるから安心して。凛太といる時とは違うよ」
「そうなんですね……」
「オレの真面目な顔が想像できない?」
「そんなことはないんですけど……なんか、オレは、瑛士さんが笑ってる顔が、いつも頭にあるから。お仕事の時もそうなのかなって思っただけなんですけど」
「まあ仕事中は割と真面目な顔してるよ?」
クスクス笑いながら、瑛士さんは言う。
「でも仕事の時も、凛太が隣にいてくれたら、笑ってるられかもなぁ……そう思うくらい、オレは凛太と居るの楽しいよ」
「……オレも楽しいです」
「何だろうね。合うのかなぁ、波長が」
「波長……」
うん。そんな感じも、する。
とくにすごく理由がある訳じゃないけど、なんとなく、安心して、なんとなく、楽しい。
「――ん、じゃあオレ、凛太が喜びそうなものを、選ぶことにする」
「オレも、頑張ります!」
「レジは別々にしようね。買ったら合流。車の中で、渡し合おうよ」
「家じゃなくてですか?」
「早く見たいからさ」
「確かに。そうですね」
ふ、と笑い合って、瑛士さんと離れた。買い終わるまでは近づかないってことで、って、約束して、お店をうろうろ回り始めた。
いくつも店舗があるので、一回離れたら、瑛士さんがどの店に居るかもわからない。
早く決めよう。
――瑛士さん、さっき、凛太と水族館に行ったって思い出せるもの、って言ってたけど……難しいな。何なら思い出してくれるだろ。
オレに似てるって、瑛士さんが言ってたのは赤ちゃんペンギン……似てるかな。ていうかオレって、瑛士さんにとって、どんだけ赤ちゃんなんだろう。一応もう十九歳なんだけど。せめて、普通のペンギンだったらまだ……いや、ペンギンな時点で、めっちゃ可愛いじゃん。
オレ、ペンギンには似てないと思うのだけど。
そう思いながらも、似てるね、と言って笑ってた瑛士さんの優しい笑顔が思い出される。
ペンギン……それこそ瑛士さんにぬいぐるみ買う訳にはいかないし。ストラップも使わないだろうし、ていうか、ペンギン、瑛士さんが持ってるの見られたくないよねと、ふ、と笑ってしまう。大人なイメージが変わっちゃう気がする。お仕事してるときが多いだろうからなぁ……。
あれこれ見かけては、いろいろ考えて、全然決まらなかったのだけれど、あるキーホルダーの前で、止まった。
可愛い赤ちゃんペンギン。なんだけど子供っぽくはない。ちょっとおしゃれに描かれている。
アクリルの中に銀色のラメが入ってるのかな。裏は少しキラキラしてて、表に、ぷっくりとしてて透明感のある雰囲気で赤ちゃんペンギンと、横にすごくちっちゃいお魚がついてる。……可愛い。
小さいキーホルダーだから、どこかに置いてもらえるか、キーケースとかに忍ばせてもらえるかも。なんなら机の引き出しの端っことかでもいいかな。
小さすぎる気がするけど、でも、目立たず、瑛士さんの側に居させてもらえたら嬉しい……って、オレ、ペンギン気分になってるかもしれない?
ちょっと苦笑しつつ手に取り、学校向けにたくさん入ってるお菓子を買った。そういえばたまに旅行のおみやげでいろいろ配られてるなと思いだしたから。αが多いからなのか、忙しい中でも旅行とかなんかよく行くんだよなぁ。
オレ、普段どこも行かないから、おみやげとか買っていったことないし。たまにはいっか。
ほんと、瑛士さんと居ると、普段しないことが、いろいろ出てくる気がする。
それを選んでるついでに、おいしそうなレアチーズケーキを発見。
中身には何の関係もないけど、包装紙にはペンギンの絵が描いてある。
――瑛士さんと一緒に食べよ。チーズ好きだから、これも好きだよね。
ふふ。楽しみ。
買うものを抱えてレジに向かう途中で、かなり離れた違う店舗から出てくる瑛士さんと目があった。手に持ってた袋を挙げて、多分、買ったよ、とか言ってるのだと思う。
笑顔で頷いて、オレはレジに急いだ。
1,714
あなたにおすすめの小説
のほほんオメガは、同期アルファの執着に気付いていませんでした
こたま
BL
オメガの品川拓海(しながわ たくみ)は、現在祖母宅で祖母と飼い猫とのほほんと暮らしている社会人のオメガだ。雇用機会均等法以来門戸の開かれたオメガ枠で某企業に就職している。同期のアルファで営業の高輪響矢(たかなわ きょうや)とは彼の営業サポートとして共に働いている。同期社会人同士のオメガバース、ハッピーエンドです。両片想い、後両想い。攻の愛が重めです。
学内一のイケメンアルファとグループワークで一緒になったら溺愛されて嫁認定されました
こたま
BL
大学生の大野夏樹(なつき)は無自覚可愛い系オメガである。最近流行りのアクティブラーニング型講義でランダムに組まされたグループワーク。学内一のイケメンで優良物件と有名なアルファの金沢颯介(そうすけ)と一緒のグループになったら…。アルファ×オメガの溺愛BLです。
オメガ大学生、溺愛アルファ社長に囲い込まれました
こたま
BL
あっ!脇道から出てきたハイヤーが僕の自転車の前輪にぶつかり、転倒してしまった。ハイヤーの後部座席に乗っていたのは若いアルファの社長である東条秀之だった。大学生の木村千尋は病院の特別室に入院し怪我の治療を受けた。退院の時期になったらなぜか自宅ではなく社長宅でお世話になることに。溺愛アルファ×可愛いオメガのハッピーエンドBLです。読んで頂きありがとうございます。今後随時追加更新するかもしれません。
親友が虎視眈々と僕を囲い込む準備をしていた
こたま
BL
西井朔空(さく)は24歳。IT企業で社会人生活を送っていた。朔空には、高校時代の親友で今も交流のある鹿島絢斗(あやと)がいる。大学時代に起業して財を成したイケメンである。賃貸マンションの配管故障のため部屋が水浸しになり使えなくなった日、絢斗に助けを求めると…美形×平凡と思っている美人の社会人ハッピーエンドBLです。
久しぶりの発情期に大好きな番と一緒にいるΩ
いち
BL
Ωの丞(たすく)は、自分の番であるαの かじとのことが大好き。
いつものように晩御飯を作りながら、かじとを待っていたある日、丞にヒートの症状が…周期をかじとに把握されているため、万全の用意をされるが恥ずかしさから否定的にな。しかし丞の症状は止まらなくなってしまう。Ωがよしよしされる短編です。
※pixivにも同様の作品を掲載しています
若頭の溺愛は、今日も平常運転です
なの
BL
『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』続編!
過保護すぎる若頭・鷹臣との同棲生活にツッコミが追いつかない毎日を送る幼なじみの相良悠真。
ホットミルクに外出禁止、舎弟たちのニヤニヤ見守り付き(?)ラブコメ生活はいつだって騒がしく、でもどこかあったかい。
だけどそんな日常の中で、鷹臣の覚悟に触れ、悠真は気づく。
……俺も、ちゃんと応えたい。
笑って泣けて、めいっぱい甘い!
騒がしくて幸せすぎる、ヤクザとツッコミ男子の結婚一直線ラブストーリー!
※前作『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』を読んでからの方が、より深く楽しめます。
借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる
水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。
「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」
過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。
ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。
孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる