「トリプルSの極上アルファと契約結婚、なぜか猫可愛がりされる話」

星井 悠里

文字の大きさ
110 / 138

109.おひさま

しおりを挟む


 色々抱えて、寝室に向かおうとした時。スマホが震動。見ると、画面には瑛士さんの名前。

「もしもし」

 呼吸が荒いのを悟られないように、息を顰めながら返事をした。

「凛太、大丈夫?」
 ちょっと焦ってる感じが、声に出てる。ああ、なんか……瑛士さんだぁ、とほっとしつつ、少しだけ口元が綻んだ。

「大丈夫です。ちょっと三日くらい、引きこもれば、大丈夫なので」
「三日……」
「短い方だし、軽い方だとも思うので、大丈夫です。すみません、ホットミルクも……ちょっとの間だけ、瑛士さん、作ってみてもらえますか……?」

 そう言うと、瑛士さんは、ふ、と笑った。

「ヒートの時に、そんなこと考えてくれなくていいよ」
 ほんとにもう、と、瑛士さんは呟く。

「凛太、オレ、そっちに行っていい?」
「え?」
「――側にいてあげたい」

 優しい声に、とく、と胸がまた速く動き始める。一緒に締め付けられるみたいに痛くも感じて、それから――。

「……ッ」

 不意に、ゾクリと快感が走る。やばい。なんか。
 ――今日、ちょっと……いままでで、一番、熱いかも……。

「瑛士さん、あの……オレ、普段、全然Ωっぽくないんですけど……一応Ωなので」

 瑛士さんは、ん、と頷くだけで何も言わない。
 とりあえず最後まで話してしまおうと思って、言葉を続ける。

「Ωのヒートがどうなるか、知ってると思うんですけど……オレのは弱すぎて、瑛士さんには効かないかもしれないけど……でも、やっぱりこの期間は、一人で居たいので」
「凛太……フェロモンが効かないならそれでいいし、オレも強い抑制剤うっていくから」

 優しい声が、ふわふわと耳に入ってくる。
 なんか――瑛士さんの声、電話で聞いてるの、良くない気がする。

「フェロモンは弱くても、ヒートなので。理性とか、ほんとおかしくなって――自分が別人みたいで、嫌なんです。見せたく、ないです……ごめんなさい」
「凛太……でも」
「三日たったら元通りなので……またその時」

 そう言って、オレは瑛士さんとの通話を切った。瑛士さんの好意だと思うので、なんだかとっても申し訳ない気分になるけれど、でも、これはもうしょうがない。
 スマホを切るとき、指輪が目に留まって、これは外しておこうと思った。
 絶対、体に触るから……せっかくとっても綺麗なのに、汚れてしまうような気がする。

「熱っつ……」

 ふ、と吐いた息を止めて、そのまま急いで、持ってたものを寝室に運んで、全部枕元に投げた。
 指輪を外そうとした時、ふと、さっきリビングに置いた、紙袋の中の指輪のケースを思い出した。
 あれに入れとこ……。なくしたら、やだし。

 息が熱い。弾む。くらり、と熱と、滲む涙でぼんやりとする視界。
 心臓がドキンドキンと音を立てていて。

 熱い。だるい……何これ、ひどいな……。
 下半身、熱持ってて――中、なんか、疼く。はー……やば。
 その場で力が抜けてきて、寄りかかった壁に背をついた。

 そのまま天井を見上げて目をつむる。
 三日。ひどいのは、二日弱のはず。……頑張れ、オレ。

 思いながらも、どんどん体が熱くなって、力が抜けてく。
 くた、と体が倒れかけて。仕方なく、そのまま、手をついて、廊下の床に寝転んだ。

 とりあえず、さっき飲んだ抑制剤が効くまで、もうここでいいや。
 完全に横になると、フローリングが冷たくて、気持ちいい。 

 さっき飲んだ抑制剤は、少し眠くなる成分も入ってる。
 眠れたら、それで少し時間が経過してくれるかも。淡い期待を抱きながら、目を閉じた。すぐに、うとうとして。何も考えられなくなった。


「……りんた……?」

 優しい手が、体に触れた気がした。
 優しい声に、呼ばれたような。


「……寝てるだけ?」
 頬に触れる手。ゆっくり瞳を開けると、そこには。


「えい、じさ……」
「――ごめん、やっぱり放っておけない。とりあえずベッドに運ぶね」

 腕を引かれて、そのまま、瑛士さんの腕の中。
 抱き上げられて――運んでくれてるのが、分かる。


「ちゃんと抑制剤は飲んできたから」

 優しい、声。

「えい、じさん……」
「ん。大丈夫だよ。一人にしないから」


 瑛士さんて。
 笑った顔、おひさまみたいに見えるし。
 ――――おひさまみたいな、匂いが、する。



 なんだか、辛いのが、少し和らいだ気がする。





(2025/6/23)
しおりを挟む
感想 123

あなたにおすすめの小説

学内一のイケメンアルファとグループワークで一緒になったら溺愛されて嫁認定されました

こたま
BL
大学生の大野夏樹(なつき)は無自覚可愛い系オメガである。最近流行りのアクティブラーニング型講義でランダムに組まされたグループワーク。学内一のイケメンで優良物件と有名なアルファの金沢颯介(そうすけ)と一緒のグループになったら…。アルファ×オメガの溺愛BLです。

のほほんオメガは、同期アルファの執着に気付いていませんでした

こたま
BL
オメガの品川拓海(しながわ たくみ)は、現在祖母宅で祖母と飼い猫とのほほんと暮らしている社会人のオメガだ。雇用機会均等法以来門戸の開かれたオメガ枠で某企業に就職している。同期のアルファで営業の高輪響矢(たかなわ きょうや)とは彼の営業サポートとして共に働いている。同期社会人同士のオメガバース、ハッピーエンドです。両片想い、後両想い。攻の愛が重めです。

人気俳優に拾われてペットにされた件

米山のら
BL
地味で平凡な社畜、オレ――三池豆太郎。 そんなオレを拾ったのは、超絶人気俳優・白瀬洸だった。 「ミケ」って呼ばれて、なぜか猫扱いされて、執着されて。 「ミケにはそろそろ“躾”が必要かな」――洸の優しい笑顔の裏には、底なしの狂気が潜んでいた。 これは、オレが洸の変態的な愛情と執着に、容赦なく絡め取られて、逃げ道を失っていく話。

そばかす糸目はのんびりしたい

楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。 母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。 ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。 ユージンは、のんびりするのが好きだった。 いつでも、のんびりしたいと思っている。 でも何故か忙しい。 ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。 いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。 果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。 懐かれ体質が好きな方向けです。

オメガ大学生、溺愛アルファ社長に囲い込まれました

こたま
BL
あっ!脇道から出てきたハイヤーが僕の自転車の前輪にぶつかり、転倒してしまった。ハイヤーの後部座席に乗っていたのは若いアルファの社長である東条秀之だった。大学生の木村千尋は病院の特別室に入院し怪我の治療を受けた。退院の時期になったらなぜか自宅ではなく社長宅でお世話になることに。溺愛アルファ×可愛いオメガのハッピーエンドBLです。読んで頂きありがとうございます。今後随時追加更新するかもしれません。

親友が虎視眈々と僕を囲い込む準備をしていた

こたま
BL
西井朔空(さく)は24歳。IT企業で社会人生活を送っていた。朔空には、高校時代の親友で今も交流のある鹿島絢斗(あやと)がいる。大学時代に起業して財を成したイケメンである。賃貸マンションの配管故障のため部屋が水浸しになり使えなくなった日、絢斗に助けを求めると…美形×平凡と思っている美人の社会人ハッピーエンドBLです。

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

処理中です...