856 / 874
◇ライブ準備
「とけちゃう」*優月
玲央に言われたまま、窓の近くのソファに座る。窓の外真っ暗。
静か――。
お風呂、めちゃくちゃあったまった気がする……。
というか、なんというのか。あったまったどころじゃなくて、 熱かった。
「ほら。水飲んで」
玲央がすぐ隣に腰かけながら、コップを渡してくれた。氷が入ってて、めちゃくちゃ冷えてる。
「ありがと。おいしー」
「ん。火照ってる感じ、すげーから。ちゃんと飲んで」
すり、と頬に触れられる。
……そういうことされると、よけいに火照っちゃうんだけどね。
お水をぐびぐび飲み干して、コップをテーブルに置くと、ソファに深く身体を沈み込ませた。
「湯冷ましにアイス食べる?」
「わー食べたい!」
一瞬でご機嫌になってそう言ったら、玲央はクスクス笑いながらオレの髪を撫でてから、冷蔵庫に向かう。
こういう、ちょっとした時にこんな風に触ってくれるのが、玲央の凄いところだよね。うんうん、と頷きながら玲央に撫でられた前髪を。
照れながら少し、整える。
玲央が持ってきてくれたのは、シンプルなカップのアイス。
「バニラとチョコ、どっちがいい?」
「玲央は?」
「どっちでもいい」
「んん。じゃあ……チョコ」
はいどうぞ、と、スプーンと共に渡してくれる。
すぐ隣に腰かけて、蓋を取ると、テーブルに置いた。よいしょ、と玲央にちょっともたれかかるように身を寄せる。
お風呂上がり特有の、けだるいような感覚。
――というか、いつも以上に、とってもけだるいけど。
でも、すごく、近くて、優しい、距離感。
「おいし……」
一口食べて、んー、と目をつむったオレは。
ふと頬に触れた玲央の手に、上向かされて――。
すぐ近くに息を感じて、視線がぶつかる。玲央の瞳は綺麗だなぁ、なんて思った次の瞬間。
「ん……」
唇が触れて。アイスで冷えてた口の中に、玲央の熱い舌。
冷えた甘さと熱が混ざるみたいな。やさしい感触が触れてきた。
ぞく、と震えて、でも逃げられなかった。というか逃げられるわけがないけど。
そのままじっとして、玲央を見上げていると。
「――ほんとだ」
なんて言って、ぺろ、と舌で自分の唇を舐める。
そうしながら、オレの唇の端を、指でそっとなぞった。
かぁっと頬に熱が集まった。
「チョコもおいしいな」
赤くなったオレの頬に、すり、と指で触れながら、くすくす笑う玲央は。
なんかもう。その笑顔が、ずるいくらい甘々すぎて。心臓がとけちゃいそうな気がする。
もうこれは、アイスよりも甘いのではないだろうか、なんて思っていると。
「バニラもおいしいよ」
そう言いながらアイスを口に入れて。
「あ」
なんて、口をちょっと開けて見せてくる。
ぼぼぼぼ。
何をさせたいのか一瞬で分かって、さっきの比じゃなく真っ赤になったオレに。
玲央は、「ん」と言いながら近づいてくる。
「…………っっ」
誘われるれがまま、吸い寄せられるみたいに、唇を重ねて、そっと、舌で触れると。
甘い、バニラの香り。
「――っ」
自分がしてることがめちゃくちゃ恥ずかしくなってきて、離れようとしたら。
後頭部を軽く押さえつけられて、深い、キス。
「ん、ん……」
アイスの甘みと――玲央の舌が、甘く感じるのと。
ふ、と、あっという間に涙が滲んでくる。
「――溶けちゃうか……」
名残惜しそうにそんな風に言って、玲央が、オレをそっと離した。
「アイス食べたらにしよ」
ちゅう、とほっぺにキスされて。ふ、と微笑まれる。
むむむむぅぅぅ。
もう、あまりに翻弄されまくりすぎて、悔しくなってきて。
オレはちょっと方向を変えて、玲央の腕というかちょっと背中あたりに、自分の背中を押しあてて、寄りかかった。
玲央はそのまま、くすくす笑ったまま、オレの背を支えてくれてる。
パクパク食べてると。
口の中、いい感じに冷えてきた。
どっちもしゃべらない。アイスをすくう、カップとスプーンが触れる小さな音と。時折聞こえる静かな息遣いだけ。
静かで、とってもゆるくて。
なんだか、満たされている気がする。
――このまま、時間が止まったらいいのにって。
こういう時に、思うのかなぁ。
そんな風に、ぼんやりと思う。
「――喋んなくていいのって……やっぱり、いいと思わねえ?」
玲央を振り返ると、な? と微笑む。
オレは、よいしょ、と座り直して、玲央のとなりに、くっついて座る。
「……ふふ。思う」
くっついてそう言ったオレに、玲央がくすっと笑って。でも、それ以上は、特に何も言わなかった。
(2025/10/25)
こんな感じで書くのがすごく好きなんです。
が。
そろそろ話し進めた方がいいですよね…꒰ঌ(っ˘꒳˘c)໒꒱(笑
あなたにおすすめの小説
人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます
七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。
歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。
世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。
気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。
また恋人に振られたので酒に飲まれていたらゴツい騎士に求婚していた件
月衣
BL
また恋人に振られた魔導省のエリート官吏アルヴィス。失恋のショックで酒に溺れた彼は勢いのまま酒場に現れた屈強な王宮騎士ガラティスに求婚してしまう。
翌朝すべての記憶を保持したまま絶望するアルヴィスだったが当のガラティスはなぜか本気だった。
「安心しろ。俺は誠実な男だ。一度決めたことは覆さない」
逃げようとするエリート魔導師と絶対に逃がさない最強騎士
貢ぎ体質な男が捕まる強制恋愛コメディのつもりです!!
春野くんち―僕の日常は、過保護な兄弟たちに囲まれている―
猫に恋するワサビ菜
BL
春野家の朝は、いつも賑やかで少しだけ過保護。
穏やかで包容力のある長男・千隼。
明るくチャラめだが独占欲を隠さない次男・蓮。
家事万能でツンデレ気味な三男・凪。
素直になれないクールな末っ子・琉生。
そして、四人の兄弟から猫のように可愛がられている四男の乃空。
自由奔放な乃空の振る舞いに、兄たちは呆れながらも、とろけるような笑顔で彼を甘やかす。
【完結】※セーブポイントに入って一汁三菜の夕飯を頂いた勇者くんは体力が全回復します。
きのこいもむし
BL
ある日突然セーブポイントになってしまった自宅のクローゼットからダンジョン攻略中の勇者くんが出てきたので、一汁三菜の夕飯を作って一緒に食べようねみたいなお料理BLです。
自炊に目覚めた独身フリーターのアラサー男子(27)が、セーブポイントの中に入ると体力が全回復するタイプの勇者くん(19)を餌付けしてそれを肴に旨い酒を飲むだけの逆異世界転移もの。
食いしん坊わんこのローグライク系勇者×料理好きのセーブポイント系平凡受けの超ほんわかした感じの話です。
あなたの愛したご令嬢は俺なんです
久野字
BL
「愛しい令息と結ばれたい。お前の家を金銭援助するからなんとかしろ」
没落寸前の家を救うため、強制的な契約を結ばれたアディル。一年限りで自分の体が令嬢に変わる秘薬を飲まされた彼は、無事に令息と思いを通じ合わせることに成功するが……
家族に忘れられていた第五王子は愛され生活を送る
りーさん
ファンタジー
アズール王国の王宮には、多くの王子や王女が住んでいる蒼星宮という宮がある。
その宮にはとある噂が広まっていた。併設されている図書館に子どもの幽霊が現れると。
そんなある日、図書館に出入りしていた第一王子は子どものような人影を見かける。
その時、父である国王にすら忘れられ、存在を知られていなかった第五王子の才覚が露になっていく。
借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる
水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。
「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」
過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。
ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。
孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。
イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした
天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです!
元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。
持ち主は、顔面国宝の一年生。
なんで俺の写真? なんでロック画?
問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。
頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ!
☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。