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◇初めての夜
「現実感が」*優月 ※
しおりを挟むバスルームを出て、バスローブなるものを着させられて。
何だか家ではあんまり日常的でなくて不思議で、少し笑ってしまった。
その話をしていたら、肩を掴まれて、鏡の方を向かされて。
玲央が、ドライヤーを掛けてくれる。
しかも、手が、すごく優しすぎて。
めちゃくちゃ丁寧に乾かしてくれて、立ってなければ、寝ちゃいそうな位、気持ちよかった。
……優しいなー、玲央。
なんか、玲央がモテる理由って、見た目とかお金持ちとかバンドとか。それだけでもモテるだろうなあとか、思ってたけど……。一番の理由は、優しいからなんじゃないだろうか…。
美咲の超低評価がよみがえってくるけれど。
……少なくとも、オレの前に居る玲央は、超優しい。
ソファでめちゃくちゃキスされて、手の中でしてしまったり。
強引なんだけど、優しすぎて、まったく抵抗できず……。
取ってくれたご飯も美味しいし。
……食べさせてくれたり、玲央にも食べさせたり。
雰囲気が、優しすぎて。
あーなんか……やばいなあ。
こんなので、ずっと優しくされて。
……最後までしちゃったりしたら。
オレ、本当に好きになっちゃいそうだなー……。
……ほんと、やばいなあ。
ていうかさ、こんなに優しくしといて、好きになったらバイバイなんて、凄くひどいんじゃないだろうか。なんて事も、思ってしまった。
食事しながら玲央と話してるのが楽しくて、敢えて物凄くゆっくり食べていたけれど、さすがにもう無理になって、食事を終えて、片付け始めた。一通り、残っていた物に蓋を閉めた所で、玲央に右手を掴まれた。
もうそれだけで、心臓が跳ね上がる。
わー……やばい……。
人生で、初めて、こんなに、ドキドキしてるかも。
なんでだろ……。
……男、無理、て、初めて会った時、オレ、普通に言ってたのに。
「続き、しよ?」
言われると、もう――――……すぐ頷いてしまいそうに、なる。
玲央に、触れられると、気持ちいいの、もう知ってる。
たぶん、何されても、気持ちいいと、思う。
――――……けど。
……オレにするのって、何が楽しいんだろ。
玲央がするばっかで、うまく応えられてるはずもないし。
初めてで、うまくできないけど、良いのかなと思って、そう聞いたら。
「知ってるけど。ていうか、別にうまくとか求めてねえよ」
即答してくれて。
それから、逆に聞かれた。
「――――……つかお前こそ、こないだまで名前も知らなかった奴に、色々されていいの? 男、無理って、最初言ってたよな……?」
そうだよ……オレだって、そう思うんだけど。
………男無理って、こないだ言った。普通に。
だけど。
ふ、と玲央を見上げる。
嫌だって、言うな、て。
言われてる気がする。
何回も、キスしていい? 触っていい?て、確認してくれるけど……。
そんな瞳で、見つめられて。
……嫌なんて、言える訳がない……と、思ってしまうのは……。
なんか、オレ、もう……。
玲央が、好きなんだろうと思ってしまう。
……ていうか……。
オレ……好きじゃないと、そんな事、できない。
感覚で。
玲央には、触ってほしいって思っちゃったし。
「ベッドいこ?」
瞳も、触れてる手も、優しくて。
……胸が、すこし、痛いけど。
見つめてると、顔が熱くなる。
ほんと、この人、カッコイイな……。
この瞳に、映ってるのが、なんか――――……嬉しくなる位。
――――……頬にキスされて、ますます、恥ずかしくなる。
なんか浮いてるみたいな気持ちで、玲央に手を引かれて、寝室に連れてこられた。
大きなベッドが置いてあって。玲央が、小さなライトをつける。
妖しい雰囲気に、それだけで緊張する。
「……強張ってるし」
くす、と笑って、玲央がオレの手を、きゅ、と握った。
「――――……緊張しなくていいよ」
「――――……」
「お前が嫌がる事は、絶対しないから」
「――――……」
とくん、と弾む、心の中。
ふ、と笑う玲央の瞳から目が離せない。
ふわ、と唇が重なる。
すぐに激しくはならない。
めちゃくちゃ優しい、触れるだけのキス。
なんか、すごく、くすぐったい。
こんな風に――――……いつも、キスするのかな。
やさしい、キス。
「――――……っ……んン……ぅ……」
――――……なんか、めちゃくちゃ愛されてるみたいな、キスだなあ、と思う。
「……っれ、お……」
名を呼んだ唇を、また塞がれる。
舌が上顎をなぞって、また舌を絡めてくる。
ぞく、と体が震えて。腰の奥にまた、ジン、と、熱が灯る。
「……ん、ふ……っン……っ」
ぐい、と抱き寄せられて。バスローブをはだけさせられて。
中にするっと手が差し入れられて抱き締められる。片手は、首の後ろで、キスを離さないように押さえつけられている。
玲央の手がオレの脇腹を沿って、背中に触れただけなのに、ぞくぞく感が半端ない。
「……っ……」
抱きよせられたまま、背後に数歩移動させられて。
ベッドに、倒された。
一瞬離れた唇は、上に密着した玲央にまたすぐに塞がれる。
「……ン……」
もう、押さえられなくても、後ろには、引けない。
「……ん、ん……っぁ……」
上顎、舐められると――――……。
気持ち良すぎて、頭がぼうっとしてくる。
もう、容赦ないキス。
何度も角度を変えられて、奥まで舐められる。
「……んんっ……ん、ふ…… っは、ぁ……っ……」
キスしかしてないのに、息が弾んで、声がどうしようもなく、漏れる。
さっきまでのキスは、まだ少し手加減、しててくれたんだ、と分かって。
少し、怖くなる。
これ以上、されたら、どうなるんだろう。
とにかく、息が、できない。
「……優月……」
「……ふっ……は……」
涙で滲んだ瞳を、一生懸命開いて、少し唇を離した玲央を見上げる。
「だから……鼻で、吸ってみろって……」
クス、と優しく笑う玲央。
「いい? やってみな」
また、キスされる。
玲央は目を開いたまま。オレは、見つめ合いながらキスするのは、耐えられそうになくて、伏せた。鼻で、少し、吸ってみる。
「吸えるだろ?……あとはオレに合わせて口でも呼吸して」
「……むずかし……」
「数こなせば慣れる」
クスクス笑って、また重なってくる。
「まあ、声が漏れてんのも可愛いからいーけど。 あんまり苦しくない方がいいから」
「……」
「……息出来るようにたまに離すから、合わせてみて」
ふ、と笑う玲央。うん、と頷くと、また唇が重なった。
意識してると、少し、呼吸できるようになった気がするけど。
舌、吸われたりすると、もう、無理。
「……も……や……」
「……もう嫌?」
やさしい声で玲央が囁く。
「……れおの、キス……気持ちよくて、もう無理」
「もっと気持ちよくなるから」
「……これ以上、むりかも……」
言って、玲央を見上げると。
玲央は、くっと笑い出して。
「……可愛いけど、それは聞けない」
「――――……っ……」
「気持ちいいのは、素直にそう感じろよ」
体を起こした玲央がTシャツを脱いで、服を下に落とす。
うわ、もう……。
心臓が、ヤバい。
たぶんそろそろ、オレ、死ぬかも……。
薄明りの下で見る玲央の裸は、セクシーすぎて、息が止まりそう。
何でオレ、こんな人と、ベッドの上に居るんだろう。
………何でだっけ……。現実感、無さすぎ……。
考えられないまま、キスされて。
舌が吸われて、ん、と上向く。
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