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◇「恋人」
「2日目の朝」*優月
しおりを挟む食べ終わって、一緒に流しに並んだ。
オレが洗うのを、玲央が流していく。
洗い終わって、手を拭いたところで、「優月」と呼ばれて腕を引かれて、抱き締められた。
「玲央、どうしたの?」
「……なあ、お前ってさ」
「うん?」
抱き締められてるのが嬉しくて、聞き返しながら、すり、とすり寄っていると。
「オレの顔、好き?」
「――――……」
……え? 何を今さら……。
見上げて、うんうん、と頷く。
「カッコいいとか、思ってる?」
うんうんうん。
頷いてると、玲央が、ふーん?とニヤニヤしてる。
「オレの外見、そこまで興味ないかと思ってた」
「え」
何で?
オレ死ぬほど、心の中で、カッコいい人だなーって、ずっと言ってるけど。
……あ。心の中でか。
「……オレ、何回かは言ったよね? カッコイイって」
「……歌ってる時カッコイイとか……? 体がカッコイイとかは聞いたような……」
……確かに、顔がカッコイイとかは……あんま言ってないかも……。
だって、カッコいいなーって思う時って、ものすごいドキドキして見つめてるから…… 言えてないのかもしれない…………。
「……ていうか、全部カッコいいよ? ていうか、玲央をカッコいいって思わない人なんて居ないと思うけど」
そう言って、自分でうんうん頷いていると、玲央は、ぷ、と笑った。
「そーなんだ……ふーん」
面白そうな顔をしながら、玲央がオレを見下ろしてる。
「あ、でも…………顔がカッコいいから好きなんじゃないよ?」
「――――……」
なんとなく言っておこうと思ってそう言ったら。
玲央は、今度はしばらく固まって。
「そっか」
今度は、何だか、すごく嬉しそうに笑う。
「……全部、カッコいいよ、玲央」
「全部?」
「話す事も。する事も。……話し方もだし。姿勢とか、立ってるだけでカッコいいし。 何でも出来るし……カッコいいと思うとこしか無くて、不思議」
「……ほんと、そんな事はないと思うけど……」
ぷ、と玲央が笑う。
「でも、優月がオレを大好きなのは、分かった」
「……それは、今分かったの??」
「――――……まあ、知ってたけど」
よしよし、と撫でられつつ。
「……何で、カッコいいと思うか聞いたの?」
不思議に思う事を聞いたら。
「運転するのがカッコイイだろうから、とか言うから。 お前、オレの事カッコいいと思ってるのかなーって」
「思ってるに決まってるし。 ……ていうか。世界一カッコいいよ、玲央」
そう言ったら。
玲央は、クッと笑い出して。
オレの両頬を挟んで、上向けた。
「優月は、世界一可愛い」
ものすごい近くで、まっすぐ見つめられて、そんな風に言われて。
自分が言った言葉を返してくれただけなの、分かっているのだけど。
玲央の瞳があんまり近くでキラキラしてるので。
また顔に熱が大集合。
「……なんでオレには言うくせに、優月は赤くなんの」
すりすりと頬を指で撫でられながら、笑われる。
「……だって、オレ、絶対世界一可愛くなんてないし。……でもなんか……玲央が、そんな風に言ってくれると……嬉しい……というか。それに、恥ずかしいし…………」
そこまで言い終えると、玲央は、ちゅ、と頬にキスしてきた。
「オレにとっては、ほんとに……こんなに可愛いと思った奴、居ないよ」
「――――……」
熱っぽい瞳が。
……多分、今この時、ほんとにそう思って言ってくれてるんだろうなと思えて。
ああ。もう。
朝から、心臓が、もたないよう――――……。
そんな風に思っていたら。
唇が重なってきて。
ドキドキが、玲央と重なって、抱き込まれて何も考えられなくなって。
玲央の家で目覚めた2日目の朝は。
なんだかもう幸せ過ぎて。
こんなに幸せでどうしよう。と。 心から思ってしまった。
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