【恋なんかじゃない】~恋をしらなかった超モテの攻めくんが、受けくんを溺愛して可愛がるお話。

星井 悠里

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◇「恋人」

「どんだけ」*玲央

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 マンションを出て、2人並んでものすごくのんびり歩いてきて、学校に到着。


「じゃあ行ってくるね。曲作るの、頑張ってね」


 空いてる1限、部室で曲を作ると言ったので、優月は笑顔でオレを見上げてそう言う。


「ん。絵の道具、部室に置いといてやるよ。持って歩くの面倒だろ?」
「え。いいの?」

 受け取りながら頷く。


「ん。今日4限までだよな? オレ5限までだから帰りは別だけど。その前どこで返すかな……?」
「うん。どこで、会えそう?」

 優月は、嬉しそうに微笑む。


「優月、昼は?」
「多分、2限の友達と学食行くと思うけど……食べたら、クロのとこ行こうと思ってて」

 そう言われて、ふーん、と考える。

「オレも2限が勇紀と一緒だからそのまま昼食べて……食べ終えたら、オレも行く。道具もそん時持ってくよ」

「うん、分かった。ありがとう」


 にこにこ笑って、まっすぐオレを見上げてくる。



 ――――……キスしたい。

 ……て、どんだけだ。オレ。


 優月に見上げられると、咄嗟にキスしたくなる。
 ……しかも、しちゃいけない場所だと、余計に、触れたくなるとか。



「――――……あ。そうだ。付き合う事になったって伝えたから、皆がお前に会いたがってるけど――――……特に勇紀が、大騒ぎだと思うから、気をつけろよ」

「何、気をつけろって?」
 
 クスクス可笑しそうに笑ってる優月。


「ものすごいうるさく騒ぐと思うから。会った瞬間、口塞ぐ準備する位でいろよ?」


 オレはかなり本気で言ってるんだが、優月は、分かったと言いながらも、クスクス笑ってて絶対冗談だと思ってる。


「優月、本気で勇紀、うるさいからな?」
「えーと…… ん、分かった」

 首を傾げつつ優月は笑って。それから、頷いた。


「昨日勇紀に、祝いたいから優月も連れて夕飯行こうって言われたけど、今日までは無理だって言っといたから。もしかしたら明日以降で誘われるかも」

「あ、そうなの? ――――……お祝いして、くれるんだ……」


 そんな風に言って、嬉しそうに綻ぶ笑顔が、もう、ほんとに、可愛い。


 ……のだが、まさか、今立ってる正門の前で、しかも朝イチからまじめに通ってきてる奴らの前で、優月にキス出来る訳もなく。


 仕方なく、最大の接触。
 優月の頭をぽんぽん、と撫でた。

 瞬間、ふわ、とまた微笑む。


 ――――……あー。
 ……ほんと。


 ――――…… 可愛すぎ。



「じゃあね、玲央」
「ん」

 にっこりと笑いながら、バイバイ、と手を振って、優月が校舎の方へ歩いて行く。


「ゆーづきー」
「おーす」

 少し離れた所で、優月を呼ぶ声がして、優月が笑顔でおはよー、と言ってる。数人と合流して、笑ってる。

 何となく姿が見えなくなるまで居ようかなと思って、見送りながら。


 ――――……楽しそうだな。
 何だか、ふ、と気持ちが緩んでしまう。


 つか、ほんとに柄じゃねーよな―……と、咄嗟にそんな気持ちも浮かぶ。


 優月に会ってから、柄じゃないと思うような事、ひたすら色々してきたけれど。ふとしたこんな感情にすら、そう思ってしまう。


 その時。視線の先で、優月がぱっと振り返った。
 オレと視線が、絡んだ瞬間。

 
 めちゃくちゃ嬉しそうににっこり笑いながら、優月がまた手を振った。


 そんな優月を見た周りの奴らが、視線の先のオレを何となく眺めている。
 少しだけ手を上げると、優月が校舎に入っていった。


 優月が見えなくなった事に。
 ちょっと、物足りないというか。……どんだけ見てたいんだと、自分に突っ込みながら。

 
 
 ふ、と息をついて。
 部室に向けて踵を返した。





 










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