【恋なんかじゃない】~恋をしらなかった超モテの攻めくんが、受けくんを溺愛して可愛がるお話。

星井 悠里

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◇「恋人」

「奏人くん」*優月 1/2


 もう、この坂、一気に下りれば駅。
 思って、坂道を下りだした時だった。

 追い越した人が、「あ」と、声を出した。
 あ、誰か知り合いだったかな? と思って、振り返った瞬間、顔を見るより早く、その人が持っていたペットボトルが落ちて、転がってきた。

 うわ、坂なのに。下まで転がってちゃう、と思って、焦って足を出した。何とか止められて、ほっとして拾い上げた。あ、オレもこのお茶好き。なんて思いながら、そのまま顔を上げて、ペットボトルを落とした人の顔を見たら。

「あ」

 オレも、さっきのこの人と同じ、あ、しか出てこなかった。
 ああ、さっきの、あ、は、こういう意味か、と思った。

 知ってるけど。声かけるのは躊躇うけど。つい、出ちゃった、みたいな。
 きっと、少し驚いてたらペットボトル、落としちゃったんだろうなあとか、一瞬で色々考えてしまった。


「奏人、くん……」
「――――……」

 こないだのライブ以来。
 玲央に、奏人くんがキスして――――……立ち去って、以来。


 さすがに、ちょっと、気まずい。


「……え、と……はい」

 ペットボトルを差し出すと。奏人くんは、「……悪い」と言って受け取った。奏人くんは、1人で歩いてたみたいで。受け取ると同時に、歩き出した。

 どうしよう。なんか。追い越して走ってくのも気まずいし……。
 後ろついてくのも……。


「駅まで帰るとこ?」

 奏人くんが、オレを振り返って、そう言った。

「……あ、う、ん。そう」
「じゃあ……少し話しながら行く?」

 なんか。
 普通に、そんな風に、言う。


 何だか、断ることも出来なくて。
 ――――……うん、と頷いて、オレは、奏人くんの隣に並んだ。


 少し、無言。


 その間に、頭はフル回転。
 何で、オレと、話すんだろう。
 こないだあんな話、して…… オレは、奏人くんにとって、邪魔者でしか、ないだろうし。……オレのせいで、玲央と別れることになったって、絶対思ってるだろうし……。オレと何を話したいんだろう。

「――――……名前、何だったっけ……?」
「名前……オレの?」

「今他に誰の名前聞くんだよ?」


 呆れたように言う奏人くん。
 ……その通りです。なんかオレ、今、ちゃんと頭働かないかも。

 ふ、と苦笑いが浮かんでしまう。

「ごめんね。 オレ、花宮優月だよ」
「――――……優月、ねー……」


 ふーん、と奏人くんは、オレを見る。

 とりあえず、嫌な感じはしないから、何となく、まっすぐに見つめ返す。


 ――――……う、わー……。

 なんか、近くで見れば見るほど、綺麗な顔してるなあ。
 肌綺麗。髪の毛も綺麗。なんか、全部オシャレ。この人も、ものすごく、目立つ人だなあ……。


「……何?」

 マジマジ見てたら、眉を顰められてしまった。

 綺麗だなー、と思って。
 なんて言ったら、何となく、怒られそうなので、言わない、けど。


「……このお茶さ」
「……?」


「玲央に買ってもらったんだ」

 さっき拾い上げたペットボトル。
 こないだ玲央とお揃いで買ったピーチティー。

「そうなんだ……」

 あ、じゃあ玲央と会話したんだ。
 そっか……。良かった、ていうのかな。でもそれをオレが言うのもな……。

 2人で、数秒無言でいると。

「今何、考えてる?」

 そう聞かれて。

「……玲央と話せたんだ、と思って」
「――――……何それ。良かったってこと?」

「だって、あのままじゃ……」

 あのままじゃ、いやでしょ、と言いかけて。
 なんかこれも、オレが言うのもなと思って、口ごもると。


「……オレ、ほんと、諦めないからな」
「――――……うん」

「いいのかよ?」
「……だって、それって、奏人くんの自由だし……」

「玲央に迫るかもよ?」
「……それも……オレがダメとか言う事じゃないし」

 ……何が聞きたいのかなあ。
 何だか不思議な、話し方。オレの返答を、ただ探ってるみたい、な……??

「……妬いたりしないの? お前」

 そんな質問に。
 なんだろう。妬いて欲しいのかなと思いながら。


「――――……玲央の事、好きな人は、きっといっぱい居るし。これからも、そうだろうし……」

「――――……それでいーの?」
「良いも悪いもないっていうか……」

 奏人くんと目が合うと。何だか不思議そうで。ふふ、と笑ってしまった。


「それでいーの?って……なんか心配してくれてるみたいに聞こえるんだけど……」
「……な訳ねーし。バカなの?」

 一瞬黙った後、ぐさ、と刺さる言葉が飛んできた。


「……玲央が何でお前を好きなのか、全然分かんない」
「――――……んー。その気持ちは分かるけど……」


「――――……分かるって……あのさあ……」


 綺麗な眉を、何やらものすごく寄せて、じっとオレを見てくる。




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