【恋なんかじゃない】~恋をしらなかった超モテの攻めくんが、受けくんを溺愛して可愛がるお話。

星井 悠里

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◇「周知」

番外編【バレンタイン🍫】

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 今日はバレンタインデー。
 帰ったら、玲央にチョコレートをあげる予定。

 本当は女の子からあげる日なんだろうけど。
 でも何となく。

 好きって気持ちを伝えられる日という事で。
 いつもありがとうの意味も込めて。

 普段は行かない大きなデパートのバレンタインコーナーは、かなり恥ずかしかった。
 ……何がって。

 本当に、女子ばっかりなんだもん……。

 覚悟はしていったんだけど、今週にバレンタインを控えた週末に買いになんか行かなきゃよかったんだけど。

 土曜、玲央がバンドの練習があるって言うから、そこならオレ、玲央に内緒で1人で買いに行けると思って。……じゃないと、迎えにいくとか、一緒に行くとか、言われちゃうから。普段は嬉しいけど、チョコを買いに行くのは内緒にしたいし。ちょっと買い物してきまーす、と言って、向かったんだけど。

 すごかった……。

 しかも。
 男1人で、チョコを吟味してると。やっぱり目立つみたいで。

 普段あんまり人の視線とか気にならないんだけど、さすがに、気にせずにはいられなかった。

 すっごく見られるし。
 なんか、店員さんにまで見られるし。

 美味しそうなチョコを、いくつか買って、一緒に食べるつもりで。
 何店舗かで買ったから、ただ買い物に行っただけなのに、珍しくすごーく、疲れた……。

 玲央の家に帰るから、大きめのリュックの下の方に詰め込んで、部屋に置いてきた。
 ……バレンタイン直前にチョコ買いに行くのはやめよう。
 来年は、もっと早い内に買いに行かなくちゃ。なんて思った。


◇ ◇ ◇ ◇


 授業が終わって、玲央と約束した掲示板前についた時、勇紀が駆け寄ってきた。

「ゆづきー!」
「あ、勇紀。帰るとこ?」

「うん。優月も?」
「うん。ここで玲央と待ち合わせしてて」

「そっか。なあなあ、こないだ土曜さ、バンドの練習来ないで、買い物行ってただろ?」
「あ、うん」

「玲央がちょっと不満そうだったよ」

 クスクス笑いながら、勇紀が言う。

「え、そうなの??」
「そう。何買いに行くか言わないし、どこ行くかも言わないしって」
「あー……あの……」

 ちょっと困ってると。

「ていうかさ、バレンタインの買い物でしょ?」
 と勇紀。

「あ、バレてた……?」
「きっとそうだろうなーと思ったけど。玲央は気づいてないと思うよ、バレンタインなんか意識した事もないし。多分今日は嫌でも気づいて断りまくってると思うけど」

 クスクス笑って、勇紀がオレを見る。

「うん。ありがと、勇紀。……あれ、でも、玲央、何も言ってなかったよ? そんな、不満げなんて全然無かったし」

「玲央がそんなの、優月に言う訳ないじゃん」

 クスクス笑う勇紀に、オレは、そうなのかなと頷く。

「チョコ、買ったの?」
「うん。買ってきて、玲央の部屋の端っこに置いてきたよ」
「そっか。じゃあ今日、土曜の事話してあげたら?」
「ん。そーする」

 ふふ、と2人で笑い合っていると。

「あ。玲央」

 ここに降りてくる広い階段。ただ階段を降りてくるだけなのに、玲央、やたら目立つ。女子だけじゃなくて、なんか男子もついつい見ちゃうみたいな。

「ほんと。横に居ると慣れるんだけど、離れて見ると、ほんと目立つよな」
「うん。ほんとに……」

 もう少し近づいたら、玲央、と呼ぼうかなと思った時だった。


「あの! 花宮先輩!!」
「え」

 横から突然現れた子にびっくりして、見つめると。
 どこかで見たような。

「あ。こないだの……」

 雨の日に、階段で滑って、こけてた子。


「こないだ、ありがとうございましたっ」
 
 ハンカチを差し出される。
 色々濡れちゃってたから、貸してあげたハンカチ。

 綺麗にアイロンがかかってて、受け取って、ありがと、と伝えた。


「これ。お礼なので、受け取ってください」
「え」

 小さな紙袋。きっと、どう見ても、バレンタインのチョコレートで……。


「ふ……深い意味は無いですっ。お礼です!!」

 ――――……そう言われても、そんなに真っ赤な顔されてると。


 玲央も、もうとっくに気付いてるし。
 少し先で、立ち止まってしまったし。


「ごめんね、あの」
「ただお礼なので……受け取ってください!」


「――――……」

 断ろうと思ったんだけど。
 ……あんまり必死でお礼、というので。

「……お礼なら。受け取るね。 ありがと」

 そう言うと、その子は、すごし嬉しそうに笑って、ありがとうございました、と言って走り去っていった。


 んーーー………………。
 受け取っちゃったけど。えーと。


「ありゃりゃ……」

 勇紀が隣で苦笑いを浮かべている。







「優月」

 よく通る声が響いて。
 覚悟を決めて、玲央を見ると。

 意外な位、玲央は普通の顔、してて。

「――――……あの……これね、あの……こないだ転んでた所を助けたら……お礼だって……」
「見えてた」

 頷いて、オレの頭を、ぽん、と叩く。


「帰ろ。じゃーな、勇紀」
「あ、うん」

 答えながら、勇紀を振り返ると。何だか、頑張って、と声にならない声で勇紀に言われる。


 頑張ってって…………。
 ……玲央、怒ってる??? 訳じゃなさそうだけど。


 普通に、夕飯何食べたい?とか聞かれて。
 食べ物の話なんかしながら、マンションにたどり着いて、部屋に入って。
 鍵がかかった瞬間。

 むぎゅ、と抱き締められた。


「――――……玲央?」
「はー――――……やば」

「え?」

 顔を見ようと振り仰ぐと、キスされて。
 舌がすぐ入ってきて。なんか。ものすごく本気の、キス。


「……ん、んン――――……っ」

 抱き締められて、キスされて、息、乱されて。



「――――……れ……」

 呼びかけた名前を塞がれる。


「――――……ん、ふ……っ」

 あ、また、足に、力――――……はいんない……。
 思うけど、むぎゅ、と抱き締められていて。


「……はー」

 キスがゆっくり離れて。玲央が、オレをまっすぐ見つめる。


「――――……なんかお礼だって言ってンのは聞こえたし。お前が断れないのも分かったし……貰ったからって、なんだっつー話なんだけど」
「――――……」

「……ナニコレ。こんな事で、すっげーモヤモヤするとか……はー、やば」
「……玲央……」

 なんかちょっと困ってるっぽく言うのが可愛く見えてしまって、クスクス笑ってしまう。


「――――……オレ、お前のこと、好きすぎだなー……」


 そんな風に言う玲央に、ぎゅー、と抱き締められて。
 だめだな、もうなんか、めちゃくちゃ幸せで。


 
 その後。
 オレがチョコを渡したら。
 玲央からは、なんだかものすごーーく高級そうなチョコケーキを貰って。

 2人で、めちゃくちゃ美味しいチョコを、堪能した。


 あ。それから。
 土曜は、チョコを買いに行ったんだよ、と話したら。
 納得はしてくれたんだけど。


 今度からは、やっぱ一緒に行く、と言われて。
 うん、と頷きながらも。

 玲央と2人で、あのチョコ売り場に行ったら、
 本当に注目の的になりそうだなーと思って。

 とりあえず、来年のバレンタインデーまでに、考える事にした(*´ω`)♡


 
 
 
(2022/3/14) 

 



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