【恋なんかじゃない】~恋をしらなかった超モテの攻めくんが、受けくんを溺愛して可愛がるお話。

星井 悠里

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◇「周知」

「負けず嫌い」*優月

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 やっぱり、玲央の歌は、声は、特別だと思う。


 ――――……ただ、うまく歌える人ならたくさん居るのだろうけど。
 うまいとかそういうのじゃない。

 聞こうとしてなくても、耳に飛び込んできて、いつのまにかその歌の世界に閉じ込められてしまうみたいな。

 オレが玲央を大好きすぎるからかなとも思う部分はちょっぴりあるけど、でもそれだけじゃないと思う。

 いつもバンドで一緒にやってる3人だって、まっすぐ玲央を見てる。
 稔も話さないし。智也も黙って見てる。

 カラオケに大勢で来ると、誰かが歌って、誰かが合わせて歌って、誰かは喋ってて。て感じなのに。今は皆が玲央の歌を聞いてる。


 ほんと。
 出来るなら――――……ずーっと、歌っててほしい。

 ずーっと、聞いてられそうな気がする。


 間奏に入った所で、智也がオレを見た。

「……すげーな」

 と言うので。「うん」と笑んでしまう。

「こんなとこで歌ってんのに、何か、特別ステージみたい」
 クスクス笑いながら智也が笑う。頷いて、また玲央に視線を向ける。


 玲央、ほんと、カッコいいなぁ。
 ――――……この人と恋人。とか。
 ……こうして見てると、なんか嘘みたいだなーなんて、またまたいつものように、頭の隅の方で思ってしまうけど。

 玲央がふ、とオレを見て目が合うと、歌いながら、くす、と笑う。
 そんな風に優しく笑われてしまうと。

 自分でも不思議な位に一気に、心臓がドキドキしだす。


 ドキドキしたまま、ずっと聞いていると。
 玲央が1曲を歌い終えて、マイクを画面の横に引っ掛けて置いた。


 皆が拍手で歓声ではやし立てて、玲央のステージが終了。


「じゃあー優月、感想ー」

 稔が急にオレに振ってきて。

「……ずっと聞いてたい、よね」

 そう言うと。はー、と稔がため息をついて。


「玲央、優月ずーーっと聞いてたいって、ずっと歌ってろー」

 
 玲央は「よかったってこと?」とオレに聞きながら戻ってきて、椅子に座る。オレはうんうん、と頷いた。

 イイに決まってるし。
 ていうか、全員そう思ってると思うし。

「玲央達は、プロになんねえんだっけ?」

 稔がそう聞くと。

「まあ今も曲は出してるけど――――……メジャーデビューって事だよね?」

 勇紀が稔にそう聞き返した。「そう」と稔が頷くと、玲央は「まだ分かんねえよな」と皆に言って。

「まあとりあえず、去年負けた大学のやつに出るから、新曲作ってライブやって……だよな」

「プロとかの話じゃなくて、玲央、ほんと負けず嫌いだもんな」
「まあ去年負けた人達はもう居ないからなあ。戦えなくて、残念だろ、玲央」

 甲斐と颯也のセリフに、玲央がちょっと嫌そうに頷く。

「……勝ち逃げされた感じだもんな」
「まあ逃げた訳じゃないけど。卒業したただけで」

 颯也が苦笑いで玲央に言う。



 ――――……玲央、負けず嫌い。

 そう、だよね。うん。負けるの嫌いそう。
 涼しい顔してるのに。心の中、熱くて。
 


 ――――……やっぱり、カッコイイな。玲央。







 

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