【恋なんかじゃない】~恋をしらなかった超モテの攻めくんが、受けくんを溺愛して可愛がるお話。

星井 悠里

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◇「周知」

「いーにおい」*玲央

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 食事の下準備を大体終えて、優月、起こそうかなと思っていたら、急いで歩いてくる足音。

「玲央、おはよ」
「はよ。そろそろ起こそうかと思ってたんだけど」

「一緒に起こしてよー」
 困った顔をしながら、優月が近づいてくる。

 ……困った顔、可愛い。

 そのまますっぽり抱きしめて、「昨日疲れただろうから。ちょっときつかっただろうし」言いながら、抱き締めたまま頭を撫でていたら。
 じっと、下から見つめられて、笑ってしまう。

「だけど……一緒に準備したいし。あ、玲央もう、シャワー浴びたの?」
「ん、さっき浴びた」
「何時に起きたの?」
「30分位前」
「……明日から起こしてね??」
「ん。分かった」

 額にキスして頷くと、優月がやっと、ふ、と笑む。

「シャワー浴びといで」
「うん。ごめんね」
「謝んなくていいよ。行ってきな」
「うん――――……」
「ん?」

 離れずに見上げられてるので、見つめ返すと。
 ちゅ、と頬にキスされた。

「いってきます」
「……ん」

 する、とあっという間に離れて、部屋を出て行った。
 頷いてから――――……キスされた頬に、なんとなく触る。


 こんな風に、優月からするキスって。
 オレ以外には、今までした事ないんだろうし。

 自然としたんだろうなと思うと、なんか、すげえ、可愛い。


 そんなにキスが好きだと思ってた訳じゃないけど、別に行為の一環でキスはしてたし。
 ――――……オレは、慣れてるのに。

 ちょっと頬にキスされた位で、何だか照れくさいような、こんな感覚って。意味わかんね。

 そう思いながらも、、何だか、顔が綻んでしまう。


 そうだ、今日は優月の物、うちにもってくるんだ。
 ――――……本格的な引っ越しは、また別だけど。

 昨日約束した目玉焼きを焼く準備をしながら。
 優月の家族、思い浮かべたりする。

 あんな風に育ったのは、優月が持って生まれた性質ももちろんあるんだろうけど。やっぱり家族が一番、影響あるんだろうなと思うと。

 早く会ってみたい。
 優月にも言ったけど、すごく興味がある。
 あと、双子の弟と妹にも。

 どんな中で優月が育ったか、知りたいとか。
 今だけじゃなくて、昔の優月も見てみたいとか。


 どんだけだよ、って感じ。


 ――――……とりあえず。
 今日荷物、運んで。優月、ここに連れてきて。
 じいちゃんとこに、行って。

 そしたら。
 優月んち、行こう。

 で、引っ越してきてもらう。


 ――――……て、急ぎすぎか?

 そんな事を考えていたら、コーヒーメーカーの終了音。
 カップに入れて、少しコーヒーを口にする。


 今まで欠片も思わなかったような事を、
 そんなに急いでやってしまって。
 その内後悔とかする、だろうか。

 未知の感覚だから、自分でも、この先どうなるかなんて、はっきりは言えないっていう、そんな事も、思ったりはするけど――――……。


「ただいまー」

 のんきな声がして、ほかほかあったかそうな優月が、髪を拭きながら現れた。


「コーヒー、すごく良い香り」

 嬉しそうに笑う顔を見た瞬間。
 

「優月」
「うん?」

 呼んだオレに近付いてきた優月を、またぎゅ、と抱き締めてしまう。

「……いーにおい」
「うん、ほんとに」

 優月はクスクス笑うけど。

「コーヒーじゃなくて、お前」

 そう言うと、え、と赤くなる。

「れ、玲央のシャンプーが良い匂いなんだけど」

 と、言いながらうろたえてるのが可愛くて。

「オレから匂っても、こんないい匂いって思わないから」

 クスクス笑いながら、言ってると。


「匂い、かがないで」

 と、なんだか恥ずかしそうにされると。可愛くて笑ってしまう。





 
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