【恋なんかじゃない】~恋をしらなかった超モテの攻めくんが、受けくんを溺愛して可愛がるお話。

星井 悠里

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◇同居までのetc

「ぽけっと…」*優月

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 家に電話すると、母さんが出たので、少しだけ顔見せに帰るね、と伝えた。

 母さんは、二人の喧嘩? と聞いてから、「長いよねー、今回」なんてクスクス笑ってる。やっぱり知ってて放置してるんだなあと思いつつ、まあ、それで双子がオレに頼るんだから、それはそれで、なんとなくうまくいってるんだと思う。
 少し話した後、友達を連れてくね、とだけ伝えた。

 運転してくれる玲央に視線を向けて、「玲央、よかったの? 曲作るの」ともう一度聞いてしまうと、玲央は前を見たまま、平気、と笑った。

「平気っつーか。行きたいんだよ」

 クスクス笑う。

「とりあえず一曲は出来てる。もう一曲、昨日から作ってる方が少し詰まってるから、気分転換したかったし」
「あ、もう一曲はできたの?」
「そう。だから、往復一時間と話してる間くらい、全然平気」

 そう言われて、そっか、と少しだけ安心。

「もともと締め切りがある訳じゃないし。なんとなく早めにってことでこの二日間、使ってるけど」
「そっか。 あとで、できた曲、聞かせてもらえる?」
「まだ歌詞はないから曲だけな?」
「うんうん」

 めちゃくちゃ楽しみ。
 うんうん頷いてから、プリンの紙袋を覗く。

「美味しそう、プリン」
「一樹、が好きなんだろ?」
「ううん、樹里も好き。二人とも、プリンが一番好きなおやつかも」
「そっか。――――……機嫌直って、すぐ仲直りするといいけどな」

 そう言われて、ちょっと考える。

「もしかしたら、一緒に来てもらっても、そうなるかもしれない」
「ああ、そんな感じ?」

「……分かんないけど、あの子たち、あるかも。そしたらわざわざ一緒に来てくれてるのにごめんね」

「何で、ごめん? その方が良いじゃん。そしたら、仲良くプリン食べて、帰ろうぜ」

 ちら、と一瞬オレを見てから、笑いながらそんな風に言う玲央。
 ……大好きすぎて、思わず、じっと見つめてしまう。

 信号で止まると、ん?とオレを見つめ返しながら。
 よしよし、と頭に手が触れる。

「今日はさ、じっくり話す時間もないし、恋人とかそっちは話さないけど……」
「うん」
「引っ越しのことは話せたら話そ」
「うん」
「すぐオッケイでなくても、また次回でも良いし」
「オッケイがでないってことはないと思うんだけど……」

 そう言ったところで、信号が青になって、玲央の手が離れる。

「あ、玲央、その道、入って」
「ん」

「そしたら、あの信号、右折で……」

 家にどんどん近づいていく。
 ……今日は、関係をばらす訳じゃないから。別に緊張する必要はないとも思うのに、何でだか、ものすごく、ドキドキする。

「ここだよ。父さんは仕事だから、駐車場停めて良いって」
「分かった」

 玲央が、後ろを振り返って、ミラーを見ながら、バックで車を停車させる。

「――――……絵になるね……」

 思わず言った言葉。玲央は、オレをふっと見つめて。それからプッと吹き出した。


「駐車してるだけだし……」

 笑いながら、車を止めて、サイドブレーキをかけてから、エンジンを切る。

「……それでもこんなに絵になる人、居ないよね」

 しみじみうんうん頷いてると。
 
「ぁ、優月。外」

 え、とそちらに視線を向けると。

「あ」

 樹里が覗いてて。一樹はちょっと下がったところに居る。
 母さんは、玄関から出てきたところで、待機してる。

 玲央と顔を見合わせて、何となく笑いあってから、シートベルトを外して、車の外に出る。

「ゆづ兄」

 笑顔の樹里と、ちょっとふて腐れてるけど、やっぱり嬉しそうに顔がほころぶ一樹。

「ただいまー」

 言うと、ますます笑顔になる二人。 一樹ももう笑っちゃってるし。

 ……かわい。
 こっちまで、笑ってしまう。

「母さん、ただいま」
「おかえり、優月」

 そう言って。隣に来た玲央を、オレが振り仰ぐと。
 三人も、玲央のことを見て。

 はー、と、言葉を失ってる。

 ……分かるけど。

 分かるけど、皆……。
 ぽけっとしないで。

 思った瞬間、ふ、と吹き出してしまった


 
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