【恋なんかじゃない】~恋をしらなかった超モテの攻めくんが、受けくんを溺愛して可愛がるお話。

星井 悠里

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◇同居までのetc

「自分から」*優月

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 曲を弾き終えて、振り返る。
 まっすぐ玲央を見つめると、玲央がにっこり笑った。

「優月の音は、優月だなって感じがする」
「……」

「――――……素直。聞き心地いいよな」

 優しい口調で言う玲央に、なんだか、我慢できなくなって。
 オレは立ち上がって、玲央に近付いた。

「優月?」
 近くに立ったオレを見上げて、優しい声で、名を呼んでくれる。

 ……なんかオレ。

 …………この人が、本当に好き、だなぁ……。

 ソファに座ったままの玲央に、そー、と顔を近づけて。
 唇に、キス、した。

「――――……」

 ――――……ん??

 ……あれ。オレからするの、初めてじゃない……よね?? 
 初めてだっけ? 玲央に言われてしたことはあるけど……。
 あんまり自分からしたことはないかもだけど……。

 とにかくなんだか、玲央がびっくりした顔をしてオレを見てて。

 ――――……なんだかとっても恥ずかしくなって、少し離れようとした瞬間。

 腕を掴まれて、引き寄せられて、そのまま後頭部を押さえられて、キスされる。オレがした、触れるだけのキスとは全然違う、舌が触れてきて、ぞく、と背筋が震えてしまうような、キス。

 気づいた時には、ソファに腰かけてた玲央の上にオレが乗っかって座ってる、みたいな感じの体勢になっていて。

「……っん……」

 呼吸が、ままならなくなって。
 ――――……声が、息とともに、漏れる。 

「……玲、央……」

 長いキスが解かれて、でも触れてしまいそうな位近くで、オレを見つめると。

「――――……やらしい、顔してる」
「……え」

「かわい」

 くす、と笑う、玲央。
 後頭部を押さえていた手を、耳から首筋を通って、それから頬に触れる。そんな軽い接触にも、なんだか、ぞくっとして肩をすくめたら。

「……今どんな気分?」

 下から、玲央が、熱っぽい瞳で見上げてくる。

「――――……どんな、て……」
「オレと、何、したい?」

 頬に触れたまま、親指で、唇をなぞる。
 胸が――――……痛い位に、ドキドキ、する。

「……オレ……」
「うん」

「――――……玲央と……シたい……」
「――――……」

 そのまままっすぐ言ったら、玲央は、少し、黙ってしまった。

「……そのまんま、直球、だな」

 クスクス笑い出して、玲央がオレを下から見つめる。 

 少し下から、見上げられる感じ。
 玲央をちょっとだけ見下ろして。

 上向いてる玲央の前髪が少しだけ左右に散って、おでこが可愛いな、とか。
 そんなことにすら、なんだか胸が、ときめく。


「まず、何がしたい?」
「――――……キス……したい」

 もう、触れそうな位、近かったけれど。
 そう言ったら、優しく唇が、触れてくれる。

 けど、触れるだけのキスだけ。


「キスして……あとは?」

 そう聞かれるけど。

「――――……もっとちゃんと、したい」

 なんか――――……顔から火が出そうって、こういうことだろうって思う位、顔が熱いけど。
 なんだかすごくすごく、玲央と、したくて。

「――――……」

 玲央の首にきゅ、と抱きついて。
 自分から、唇を近づけて、重ねた。

 舌を触れさせるの、いつもしてるけど、自分からするのがこんなに緊張するんだと思い知る。
 でも、なんだか、ほんとに、どうしても、触れたくて。

 玲央の口に、舌を入れて――――……玲央の舌に、触れてみる。


「――――……」

 ちゅ、と音が出ると。
 ――――……うわわ。恥ずかし……。我に返って思わず引こうとしたら。

「……続けて?」

 玲央が笑みを含んだ声で言いながら、オレの項を押さえる。


「――――……っ……」


 したいんだけど。
 自分からするのは、めちゃくちゃ恥ずかしいってことに。

 今更、改めて、気づいた。






(2022/10/10)

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