【恋なんかじゃない】~恋をしらなかった超モテの攻めくんが、受けくんを溺愛して可愛がるお話。

星井 悠里

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◇同居までのetc

「一人の世界」*優月

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「――――……」

 玲央が部屋を出て行って、少し経ったのだけれど、オレはまだピアノのところで、ぼー、としながら、音を響かせていた。

 連弾が終わった後、抱き締められて、しばらくはそのままくっついてたのだけれど。シャワー浴びてくるから待ってて、と玲央が言って、軽く頬にキスして離れていった。

 玲央って。
 ――――……あんな風に、ピアノ、弾く人なんだ。

 学園祭のイケメンナンバーワンになってた時とか、出会った時の印象からしたら、なんだか全然違う。
 派手で目立つ人。色んな人の真ん中で、騒いで、楽しそうで。
 ……今も別に、見た目が変わってる訳じゃないけど。

 ……優しいのはもう知ってたんだけど。 
 ――――……玲央のピアノ。……良かったなあ。

 さっき。
 玲央と演奏したのも。
 ……気持ちよかった。

 ふ、と気持ちが和らぐ。

 連弾、いっぱい弾いたことあるけど。
 ……本当に、今までで一番、気持ちよかった。

 さっき弾いた曲のメロディーを、ゆっくりと弾いてみる。
 一人で弾いても、もちろんちゃんと曲なんだけど。玲央と一緒に弾いた重なった音たちが綺麗すぎたから、どうしても、物足りなく感じる。

 玲央と、弾く呼吸が合うっていうのが。
 すごく嬉しい気がする。
 波長というか……無理に合わせることのできない、元の部分ていうか。そういうのが合ってる気がするのって、なんだかとってもとっても、嬉しい。

 ……玲央といると、それだけで楽しいからなあ……。
 ――――……なんか、引き寄せられてしまうみたいに、好きになったっけ。

 玲央が弾いてくれた方は、メロディを弾く時もあるけど、大体は音を重ねる方だから、一人で弾くにはちょっと難しい。右手だけで練習してみる。

 オレのと上手に合わせてくれたのは、玲央がうまいから。
 ……曲作ったりでピアノ弾いてるから、上手なままなのかな。

 久しぶりに弾くピアノの音に、なんだか気持ちよくて、覚えている曲を続けて弾いていると、不意に、玲央が隣に立った。

「あ。玲央。おかえり」
「ただいま」

「気づかなかった」

 ピアノを弾くのを止めて、玲央を見上げると。
 肩に、玲央の手が乗って、ぽんぽん、と叩かれた。

「最後まで弾いて?」

 そう言って、玲央が離れて、ソファに腰かけた。
 ん、と頷いて、続きを弾き始める。

 ピアノって、弾いてると、無心になれる。
 絵を描いてる時もそうだけど。
 そういうのが、オレは好きみたい。

 ピアノも絵ももちろん誰かが教えてくれて、見てもらったり、誰かと一緒にしてきたし。表に向けて弾いたり描いたりもするんだけど――――……でも一番大事なところは、一人ですることが多くて。自分の中と向き合うみたいな感じ。

 そんなのが好きで、ずっと出来たらいいなあなんて、思って。 
 これに関しては、一人で無心、が好きだったんだけど。


 ――――……玲央を描いたり、玲央と弾いたり。

 なんかこの二日間。玲央に絡んでそれらをするのが楽しすぎて。
 玲央がすんなりとオレの世界に入ってきて、自然と居てくれるのが。

 というか、玲央だけじゃなくて、自分以外の誰かが。
 オレのこの大事な部分に居ることを、こんなに好きだと思う日がくるなんて、思いもしなかった。






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