【恋なんかじゃない】～恋をしらなかった超モテの攻めくんが、受けくんを溺愛して可愛がるお話。

◇同居までのetc

「大事に」＊優月

　……もっとカッコよくなっちゃうのかぁ。
　…………それは大変。

　玲央のサングラス姿。……なんか、世の人全部に見せたい。

　んん。でも。
　……見せたい、ような。見せたくないような……。
　不思議な気持ちがする。

「ね、玲央」
「ん？」
「写真、撮っていい？」
「――――……いいけど」

　少し沈黙の後、笑いながら、玲央がそう言う。
　ありがと、と言いながら、スマホのカメラを起動する。

「普通に運転しててくれていいよ」

　カメラのフレームに収まる玲央に、ふふ、と嬉しくなりながら言うと、玲央も、はいはい、と頷く。

　――――……カッコいい。

　カシャ、と、なんだか大事にシャッターを押す。
　一枚。撮り終えて、ありがとう、と言って、写真を確認。

　スマホの中に収まった、絵みたいなカッコいい人に、ふ、と顔が綻ぶ。

「大事にするね」
「…………」

　少しの沈黙があって、玲央が笑いを含んだ声で「初めて言われたかも。写真大事にするって」と言う。

　そう？　まあでも言わないかな。なんか、もう、ずっと大事にしたいなと思ってしまうんだよね。

「……玲央って、綺麗」
「ん？」

「……なんかもう、全部のパーツが、綺麗」
「んー……？　喜ぶとこ？」

　クスクス笑いながら、玲央がチラッとオレを見てくる。

「……絵を描くからかもしれないんだけど……バランスとか、肌とか髪とかの質感とか、手の形、とか……すごく見ちゃうんだけけど」
「ん」
「……誰のことも、自然と見ちゃうかも。皆違うから、誰が良いとかじゃなくて……今まではそうだったんだけど」
「……今は？」

「……玲央って、オレの理想の形なのかもしれない」
「……だから、それ、喜ぶとこ？」

「喜ぶとこかは、分かんない」

　笑いながらの二回目の問いに、クスクス笑って答える。

「カッコいいから好きとかじゃないよ？　勇紀たちだってカッコいいしさ、蒼くんも超イケメンとか言われてるしさ。でも……オレ、玲央のことは……見惚れちゃうんだよね」
「――――……」

「ずーっと、見てられる気がする……って。……きもちわるい……？？」

　はっと気が付いて、そこで恐る恐る聞いてみると。
　チラッとオレを見た玲央が、はは、と笑う。

「つか、オレが優月のこと、気持ち悪いとか、あると思う？」
「……あんまり言ってると、すこし気持ち悪いかなって……」

　まだ大丈夫ってことだよね、と、少しホッとしながら。

「オレも、優月に可愛いって死ぬほど言ってると思うんだけど。……ていうか、オレの方が言ってると思うけどな」

　そう言われて、しばらく考える。
　……オレ、思った回数全部口に出してたら、絶対負けないと思うんだけど、全部は言えてなくて。玲央はたくさん言ってくれるから。確かにそう、なのかもだけど……。

「とりあえず、気持ち悪くないってことで、いい？」
「当たり前」

　クスクス笑って、玲央が頷く。「じゃ良かった」と答えると、顔が綻んでしまう。

「オレ、この写真、大事にするね」

　ふふ、と笑いながら言うと。


「それもいいけど……本物の方、大事にしろよな？」

　そんな風に言われて。えっ？　とびっくり。


「……それは当たり前だよ」

　笑いながらそう言うと、玲央はオレをちらっと見つめて、「じゃあいい」と笑んだ。玲央のマンションについて、地下の駐車場に降りていく。


　…………もう着いた。
　

　なんか。
　……玲央、カッコいいって言い続けてる間に着いちゃったような。



　なんか。
　……ほんと、よっぽどだなぁ。オレ。