635 / 856
◇同居までのetc
「見てれば」*優月
しおりを挟む食事を終えて、皆より一足先に、出かける準備を済ませた。
「じゃあな」
「いってきまーす」
玄関に送りに来てる皆に手を振って、家を出る。そのままエレベーターに乗って、駐車場まで下りた。
「玲央、眠くない?」
「今は平気だな……どうだろ、授業中眠くなるかな」
「結構遅かったもんね? 朝早いし。ごめんね、玲央、一限無いのに」
いつもいつも付き合ってくれて、申し訳ないなと思いながらそう言うと、玲央はオレの頭をくしゃくしゃ撫でた。
「オレが勝手に一緒に居るのに謝るなよ」
クスクス笑って、オレを見つめる。
……好きすぎるんだけど……。
きゅんて、するこの心臓の感じを、玲央にも、感じさせたいなあ。
毎日どれだけ、胸の中が賑やかか。
「こんなに朝起きるの得意だと思わず生きてきたけどな」
玲央は可笑しそうに笑いながらそう言う。
「オレ、朝、苦手なんだと思ってたから」
車をリモコンキーで開きながら、玲央が笑う。
ドアを開けて、助手席に乗り込んで、隣に並ぶ。それだけで嬉しいなと思ってしまう。
運転する玲央、カッコよくて、すごい好き。
ご機嫌でシートベルトを締めると、なんだかじっと見つめられる。
「今何考えてんの」
「え? ……あ。オレ?」
「うん」
笑いながら、玲央もシートベルトを締める。
「え、どうして?」
「……嬉しそうな顔してるから。どうしたのかと」
「…………」
バレバレすぎて、自分でも、少しどうかと思いながら。
エンジンをかけた玲央に視線を向ける。
「……車運転する玲央、カッコいいなーて」
そう言ったら、玲央は、ん?とオレを見てから。クスクス笑い出した。
「運転してる時だけ?」
「……ちがうよ」
ぷるぷる首を振って、「いつも」と言いかけた時。
腕を引かれて、ふ、と笑んだ玲央が近づいてきて……。
玲央の唇が、オレの唇に、触れた。
ほんの一瞬だけ触れて、離れた唇が、形よく笑みを作る。
「なんなのほんと。朝から、可愛いし……」
くしゃくしゃと髪の毛を混ぜるみたいに撫でられて、玲央が離れる。
乱れた髪を軽く整えながら、もう、一瞬で跳ね上がった心臓を落ち着かせようと頑張っていると。
「オレ、もっとカッコよくなるかもな?」
クスクス笑いながら、玲央がハンドルに手をかけた。
え? もっと?
それはもう嬉しいけど、これ以上カッコよくなっちゃったら、オレの心臓が持たないかもしれないのだけど。でも玲央がカッコよくなるのは、もうずっと、見ていたいような……。
静かなエンジン音で、走り出して、地上に上がると、ゆっくり道路へと合流して走り出した。
「朝日、眩しいな……大丈夫か?」
「うん、オレは平気……」
確かにちょっと眩しいけど、と思いながら、玲央の方を見ると、横のポケットから取り出したサングラスを、かけるところだった。
「――――……」
ひゃー……。
かっこいい。
……なんか。
…………なんていうんだろう。……芸能人みたい。
いや違うな、芸能人だもんね、玲央。なんていうんだろう。何みたいって……えーと。
……すごくすごく整った、絵、みたい。
ぽけー、とずーっと玲央の方を見ていたら、少し後、ぷ、と笑われるとともに一瞬視線を流されて、はっと気づいた。
オレ、見すぎだよね。
でも、カッコよすぎて。
……カッコいいというか。ほんと。
完成された絵みたい、だなあ。
「……優月」
信号で止まった玲央が、クスクス笑う。
「そんなにさ、見つめられると、さすがに照れる」
「……っご、ごめんね」
わー、ごめんなさい、オレも分かってた、見すぎだって。
でも言われた言葉に、どんだけ見てたんだろうと改めて気づいて、もうまた赤面。すると、玲央の手が、ふ、と頬に触れた。
「熱いし……」
クックッと笑いながら、すり、と撫でて、またハンドルを持ち直す。
「だからさ」
「……??」
「そんなにカッコいいって顔で、ずーっと見られてるとさ」
「……ごめん、やだよね、見すぎるの気を付け」
「違うって」
ちら、とオレを見てから、また前を見て、車を発進させながら。
「ずーっと横でそんな風に見られてたら、オレ絶対、もっとかっこよくなると思うんだけど。どう思う?」
クスクス笑いながら、聞いてくる玲央。
「オレが、優月に、可愛いって言い続けてると、可愛くなる気、しない?」
「……なる……かな??」
「嬉しいだろ?」
「うん」
「多分、可愛くなると思うんだよな」
そうかな?と首をかしげていると。
「オレもそうなる気がする」
可笑しそうに笑う玲央に。
「玲央は、オレが見ても見なくても、絶対どんどんカッコよくなると思うよ」
そう言ったら、また、可笑しそうに笑われた。
「そういう根拠のないこともさ、キラキラした目で見られてると、そうなりそうな気がする」
玲央は笑いながらそう言った。
オレは少し考えてから。
「オレが見てれば玲央がカッコよくなるなら……見るだけならずーっとできるよ。ていうか見てたいし」
ふふ、と笑って答えると、「じゃあ見てて」と玲央がまた面白そうに笑った。
346
あなたにおすすめの小説
【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
全8話
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
【完結済】「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。
キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ!
あらすじ
「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」
貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。
冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。
彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。
「旦那様は俺に無関心」
そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。
バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!?
「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」
怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。
えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの?
実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった!
「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」
「過保護すぎて冒険になりません!!」
Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。
すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
若頭の溺愛は、今日も平常運転です
なの
BL
『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』続編!
過保護すぎる若頭・鷹臣との同棲生活にツッコミが追いつかない毎日を送る幼なじみの相良悠真。
ホットミルクに外出禁止、舎弟たちのニヤニヤ見守り付き(?)ラブコメ生活はいつだって騒がしく、でもどこかあったかい。
だけどそんな日常の中で、鷹臣の覚悟に触れ、悠真は気づく。
……俺も、ちゃんと応えたい。
笑って泣けて、めいっぱい甘い!
騒がしくて幸せすぎる、ヤクザとツッコミ男子の結婚一直線ラブストーリー!
※前作『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』を読んでからの方が、より深く楽しめます。
隣国のΩに婚約破棄をされたので、お望み通り侵略して差し上げよう。
下井理佐
BL
救いなし。序盤で受けが死にます。
大国の第一王子・αのジスランは、小国の第二王子・Ωのルシエルと幼い頃から許嫁の関係だった。
ただの政略結婚の相手であるとルシエルに興味を持たないジスランであったが、婚約発表の社交界前夜、ルシエルから婚約破棄するから受け入れてほしいと言われる。
理由を聞くジスランであったが、ルシエルはただ、
「必ず僕の国を滅ぼして」
それだけ言い、去っていった。
社交界当日、ルシエルは約束通り婚約破棄を皆の前で宣言する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる