【恋なんかじゃない】~恋をしらなかった超モテの攻めくんが、受けくんを溺愛して可愛がるお話。

星井 悠里

文字の大きさ
648 / 856
◇同居までのetc

「運命?」*優月

しおりを挟む

「最初はどうなるかと思ったけど……なんかいいよね」

 美咲はそう言うと、オレをまっすぐに見つめてくる。

「なんかさ、価値観とか全然違うっぽいのに……そういうの、全然気にしないで、一緒に居たいなーと思える人と恋出来るっていいね」

 そう言って、ふふっと微笑む美咲。

 価値観、か。
 ……改めてそう言われると、オレと玲央の価値観って。……ていうか、価値観どころか、もう全部。
 なにもかも、全然違ったのかも。
 周りの人たちも、生き方も、考え方も、してることとかも、全部。

「価値観とか……って、会う前は、どんなに違ってもいいと思うんだけど」
「うん」
「……でもなんか今は、すりあわせてる感じがする、かなぁ……?」
「すりあわせてる?」

 面白そうな瞳で、オレを見つめる美咲に、んー、としばし考える。

「玲央ね、前は夜遅かったから朝も遅くて、朝ごはんとか食べなかったし、だから一限もとらなかったんだって。オレはさ、夜は割と早く寝てたし、朝抜いたことなんか無いし、一限多いし」
「正反対だな」

 隣で智也が、ぷっ、と吹き出す。

「玲央は付き合ってた人、多いけど、オレ、付き合うの初めてだし、そういうこと全部初めてだし」
「そこも両極端よね」

 三人で、うん、と苦笑いで顔を見合わせる。

「バンドとか……そこらへんだけでも、住んでる世界とか、周りの人達が、全然違うし」

 んー……あと何だろ。

「あ、玲央、なんかすっごく桁違いにお金持ちだと思うし……」

 んーあとは……。

「あと、カッコよすぎるというか。派手?というか……どう考えても、釣り合わないなーと思うというか……」

 言ってたら、ふと気付くと、智也と美咲が口元押さえてクスクス笑っていた。

「もー優月……」
「優月……」

 美咲と智也に同時に名を呼ばれて、ん? と二人を見比べていると。

「どんだけ出てくるのよ?」
「まあ最後のは別にそんなことないだろうけど」
「えーあるよ? 玲央ってすごくキラキラしてるもん……」

「それは優月が思うだけじゃないの?」
「そうだよ。玲央はんなこと言ってないんだろ?」

 二人の言葉に、まあ確かに言ってないけど、と、うんうん頷くと。

「確かにじゃないでしょ」
 美咲が笑いながら言って、少し考えてから。

「でもなんかそんな風に違うとこが多くても出会って、何でかずっと一緒に居るんでしょ? 不思議だね」

 美咲にそう言われて、ん、と頷く。

「そうだね……今オレ、バンドの人達とかとも一緒に過ごしたり、玲央の家に入ったりして……玲央は夜中遊ぶとかなくなって、早起きして朝ごはん毎日一緒に食べてるし。しかも作ってくれちゃうし……なんとなく、合わせながら……一緒に居る感じかなぁ……」
「それって、さ」
「うん?」
「疲れないの? 価値観違う人に無理して合わせてると、疲れちゃうってある気がするんだよね」
「疲れる? ……ううん。疲れてはないかな。楽しい」
「優月はね。優月はなんでも楽しいって思うよね……神月の方は?」
「んー……玲央は、どうだろ。オレ、朝はね、玲央は一限起きる必要はないから、ちょっと申し訳ないなって思うんだけど……」
「けど?」

 智也が可笑しそうにオレを見て、先を促す。

「……なんか、オレと居るようになって、健康になってる気がするって。自分が朝、得意なんだなーって、初めて知ったって言ってた」

 玲央が言ってた言葉を思い出しながらそう言うと、智也と美咲は、あはは、と笑い出して、それから、なんだかニヤニヤしながらオレを見つめる。

「もーなんか……なんて言うの、こういうの」
「そうだなー……なんだろな」

「……? 何??」

「んー……」
「うーん……」

 智也も美咲も、二人して、んー、としばし考えてから。


「あー……もう、運命、なんじゃない?」


 美咲が言ったその言葉に、智也が、それでいいかも、と笑った。








しおりを挟む
感想 830

あなたにおすすめの小説

【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 全8話 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

隣国のΩに婚約破棄をされたので、お望み通り侵略して差し上げよう。

下井理佐
BL
救いなし。序盤で受けが死にます。 大国の第一王子・αのジスランは、小国の第二王子・Ωのルシエルと幼い頃から許嫁の関係だった。 ただの政略結婚の相手であるとルシエルに興味を持たないジスランであったが、婚約発表の社交界前夜、ルシエルから婚約破棄するから受け入れてほしいと言われる。 理由を聞くジスランであったが、ルシエルはただ、 「必ず僕の国を滅ぼして」 それだけ言い、去っていった。 社交界当日、ルシエルは約束通り婚約破棄を皆の前で宣言する。

ヴァレンツィア家だけ、形勢が逆転している

狼蝶
BL
美醜逆転世界で”悪食伯爵”と呼ばれる男の話。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

【完結済】「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。

キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ! あらすじ 「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」 貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。 冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。 彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。 「旦那様は俺に無関心」 そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。 バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!? 「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」 怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。 えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの? 実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった! 「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」 「過保護すぎて冒険になりません!!」 Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。 すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

若頭の溺愛は、今日も平常運転です

なの
BL
『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』続編! 過保護すぎる若頭・鷹臣との同棲生活にツッコミが追いつかない毎日を送る幼なじみの相良悠真。 ホットミルクに外出禁止、舎弟たちのニヤニヤ見守り付き(?)ラブコメ生活はいつだって騒がしく、でもどこかあったかい。 だけどそんな日常の中で、鷹臣の覚悟に触れ、悠真は気づく。 ……俺も、ちゃんと応えたい。 笑って泣けて、めいっぱい甘い! 騒がしくて幸せすぎる、ヤクザとツッコミ男子の結婚一直線ラブストーリー! ※前作『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』を読んでからの方が、より深く楽しめます。

処理中です...