【恋なんかじゃない】~恋をしらなかった超モテの攻めくんが、受けくんを溺愛して可愛がるお話。

星井 悠里

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◇希生さんちへ

「玲央の鯉」*優月

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 玲央がちっちゃい頃、ここに立ってたんだー、なんて思いながら、池の近くに立つと。
 餌をくれると勘違いしてるのか、遠くからも、どんどん、たくさんの鯉が、すーーー、と泳いできて、集まってくるのが見える。
 オレの目の前は、もう鯉で渋滞してる。渋滞と言うか……密集??

「ひ。ひゃーなにこれ、すごいんだけど」

 思わず、一歩二歩、後ずさり。

「優月、なんか引いてる」

 玲央が面白そうにクスクス笑ってる。
 だって、と言いかけた時、何やら暴れん坊の鯉が、飛び跳ねた。

 ひえ!
 思った瞬間、水しぶきが腕に飛んできた。

「あんまり近くに居ると、水しぶき、めちゃくちゃすごいから、下がってた方がいいかも」
「先に言ってよー」

 そう言うと、玲央が可笑しそうに笑う。
 その時、後ろからかかってきた声。

「優月はまた、すごいことになってるね」

 前ばかり見てて全然気付かなかった。
 振り返ると、久先生が笑いながら立ってて、隣に蒼くん。

「あ、先生。こんにちは!」
「こんにちは。鯉に水掛けられた?」
「はい。なんかめちゃくちゃ跳ねて」
「すごいよね、元気で」

 クスクス笑われる。少し後ろから、何かを持って、希生さんがやってきた。

「優月がはしゃいで鯉のところに行ったって、蒼が言うからね。餌をやらせてあげたらっていう話になって」

 久先生がそう言って、笑いながら希生さんを見る。

「こんにちは、希生さん。あ。先に鯉のとこにお邪魔しちゃってすみません」

 そう言うと、希生さんは、可笑しそうに笑う。

「こんにちは、優月くん。はい、餌ね。後で見せようと思ってたからいいよ。そんなに楽しそうにしてもらえると、嬉しいし」

 そう言ってくれるので、お礼を言いながら餌を受け取っていると。

「じいちゃん、鯉自慢始まると長いから、気を付けて」
 玲央が笑う。
 鯉自慢? ってなんだろ。されたことないけど。鯉のお話??
 思いつつ、餌をあげてると、ますます鯉がすごいことになってる。

「れおー」
「んー?」

 鯉の跳ねるばちゃばちゃ音がすごくて、声が聞こえにくい。

「食べられそうって、分かるー」
「ああ……落ちんなよ?」

 落ちたら食べられるってこと?
 ……さすがにそれはないよね? ピラニアじゃないんだから。

 と思いながらも、ものすごく激しくて、落ちたら怖いので、一歩引いたら、蒼くんに。

「お前、今マジでビビってるの?」

 苦笑いで、ツッコまれた。

 く。
 ……だって、なんかほんと、とびかかられそうな勢いを感じるんだもん。

「あの金色の鯉、見える?」

 希生さんが、オレの横で、少し遠くを指さす。

「あ、はい。金の鯉なんて初めて見たかも……」
「あれね、玲央が生まれた時に病院に行って、その帰りに買ってきたんだよ」
「えっそうなんですか?」
「いつ生まれたかは知らないけど、まだ稚魚から飼ったから、玲央と同じ年ってことにしてるんだ」
「わー。すごいー! 玲央の鯉なんですねー!」

 それはすごいー!
 なんか、尊く見えてくる。


 玲央を見ると、玲央は、また言ってる……と、苦笑いをしてる。

 玲央のあの様子だと、皆に話してるのかな。
 でも話したくなるよねー。玲央の鯉! いいなぁ。






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