【恋なんかじゃない】~恋をしらなかった超モテの攻めくんが、受けくんを溺愛して可愛がるお話。

星井 悠里

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◇希生さんちへ

「オレも補給」*優月

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「あ。そうだ。玲央?」
「ん?」

 玲央の腰に手を触れさせたまま、玲央を見上げる。

「あとでね、玲央にここでお茶立ててもらうのと……あと、ピアノで連弾することになったの」
「……んん?」

 ちょっと不思議そうに見下ろされる。

「お茶を立てるとこは、オレがすっごく見たいっていうのと……あとピアノは、希生さんが、玲央が弾いてるとこ、みたいんだって」
「ふうん……?」
「……嫌?」

 まっすぐ見つめて聞くと、玲央の瞳が、ふと細められる。

「嫌じゃないよ。ただ」
「……ただ?」
「じいちゃんと、オレの話をしてたんだろうなーって、思って。なんか、不思議でさ」
「あ、そうだよね。オレも、不思議だった」
「優月も?」
「うん。でも、すごく、楽しかったよ」

 たまに、玲央を見てるみたいな錯覚もあって。
 優しい感じが、そっくりで。

「玲央」
「ん?」
「希生さん、素敵だね」
「……そう?」
「うん。大好き」

 もうそのまんま、思ったことを告げたら、玲央が、なんだか苦笑した。

「その感じで、じーちゃんと居たの?」
「ん?」
「……居たんだろうな」

 オレが返事をしていなくても構わず、玲央は一人納得したように呟いて、クスッと笑った。

 そのまま、引き寄せられる。

「……じいちゃんが大好き?」
「え。……うん」

 じっと玲央を見上げると。

「オレとどっちが?」
「え」

 希生さん、そういう好きじゃないけど。と、一瞬思ったけど、絶対そんなのは分かってると思うので、言わず。
 ただ、玲央を見つめて、なんとなく微笑んでしまう。

「玲央のことが一番、好き」
「ん。……正解」

 クスクス笑いながら、玲央がオレの両頬を、両手で優しく包む。

「正解だった?」
「ん、正解」

 言いながら、玲央の唇が触れてくる。

「――――……」

 優しい優しい、キス。
 ……玲央のキス、好き。

 ちょっと離れてたから。……一時間だけど。
 希生さんと、玲央の話をしながら、離れてたから。

 こうしてくっつけて、嬉しい。

「――――……」

 玲央が少し笑った気配がして。
 舌が、入ってきた。

「……ん、ぅ」

 希生さんちだから、触れるだけのキスなのかと思ってて、油断してて。 
 絡んで、噛まれて、ぞく、と震える。

「……ん……っふ」
 ぎゅ、と瞳を閉じて、玲央の背中に、すり、と手を這わす。

 深く深く、キスされて、んん、と声が漏れた時。
 絡んでた舌が外れて、ゆっくりと離れて、最後にもう一度唇に触れた。

「……っ」

 目を開けると、涙でもう滲んでて、視界がぼやける。

「……ごめん、可愛くて」

 むぎゅっ、と抱き寄せられて、すごい至近距離のまま、涙をふき取られる。

「んん。……へいき……」

 涙をふきふきしてくれてる玲央に、ふふ、と笑ってしまう。


「オレも、玲央補給したかったみたい……」

 そう言ったら。


「……そんなこと言われると、もう、思いきっり補給させてあげたくなるな」
「――――……っっ」

 なんだかあやしげな雰囲気で、ニヤ、と笑う玲央に、ぷるぷるぷると首を振ると。ぷは、と笑って、嘘だよ、と玲央がオレの頭を優しく撫でる。


 …………大好きすぎるんですけど。ほんとに。
 目の前で、楽しそうに笑ってる玲央が……。

 んー。もうほんと「尊い」。





(2023/12/1)
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