【恋なんかじゃない】~恋をしらなかった超モテの攻めくんが、受けくんを溺愛して可愛がるお話。

星井 悠里

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◇希生さんちへ

「数分」*優月

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【side*優月】


 紅茶を飲んだ後、そろそろ希生さんたちもお風呂に入ったりして、寝ようかなということになった。


「オレ達、あの部屋でいい? でっかいベッドの」
「ああ」

 玲央と希生さんが話してるのを聞いていると、優月いこ、と玲央に言われて、ソファから立ち上がった。
 玲央が希生さんの近くに行って、こそっと何かを言ってる。希生さんはなんか笑いながら適当に頷いてる感じ。

「おやすみなさい」

 玲央の後に続いてオレもあいさつして、三人の居る部屋を出た。玲央について二階に行き、奥の方の部屋のドアを玲央が開けてくれたので、中に足を踏み入れると――――。

「わーすごい」

 ものすごい大きなベッドが置いてある。昼間、ドアのところからのぞいたけど、近づくとより大きく感じる。オレのサイズなら、四人くらい余裕で寝れそう。歯を磨いた後、二人で、一緒にベッドの上に座った。

「ふかふか……」
「ん」

 くす、と笑って、玲央がオレを見つめる。
 もぞもぞと布団の中に入ると、玲央も一緒に布団に入った。

 びっくりするくらい広いベッドの真ん中に、玲央と並んで座ってるこの感じがなんだか楽しい。

「――――なんかね、玲央」
「ん?」
「……玲央と、あそこで会わなかったら……ここには絶対来てないじゃん?」
「ん、まあ。……そうだろうな」
「例えば、オレが先にクロのところについてて、普通に餌をあげてたら、玲央はきっと、あそこに座らなかったでしょ?」

 そう言うと、玲央は少し考えてから、そうだな、と頷いた。

「多分猫にエサやってる奴がいる……て思って、あそこ通り過ぎて、バンドの練習に行ってたかな」
「うん」
「そしたら、遅刻して、勇紀とかに文句言われることも無かったかもな?」

 玲央がクスクス笑いながら、そんな風に思いだしてる。

「何してんだって勇紀から電話きたの、覚えてるか?」
「電話来て、バンドの練習に行くって言ってたのは、 覚えてる」
 
 そうだったなあ、とオレも思い出して、あれが勇紀だったのかーと思うと、なんかおかしい。

「なんかさ、あそこでほんの数分オレが早かったらさ。オレ、多分ここにいないし、玲央の側にも居なかったんだよね。そう思うと、数分だけど、すごいよね?」
 
 ふとそんな風に思って、思ったままに口に出したら、何だかマジマジと玲央に見つめられた。

「……たしかに。そうだな」

 んー、と玲央が少し首を傾げる。

「そしたら、多分オレ、今も色んな奴と遊んでたし。朝も起きてないし、一限の時間に学校に居ないし? ここにもこんな風に来てないし、蒼さんとかにも会ってないし、優月んちにも行ってないし……優月思って作った曲もできてないし……夏休みも、地方回ろうなんて言ってない」

 あとからあとから出てくる玲央の言葉に、何だか感動してくるし、でもなんだか可笑しくなってきたりもして。
 ふは、と笑いながら、オレは移動して、玲央にぎゅう、と抱きついた。


「なんか……玲央、大好き」

 笑いながら、そう言ったら。 
 オレの背に触れた玲央が、優しく、きゅ、と抱き締めてくれる。


「良かった。そこ、優月が遅く来て」
「うん、玲央が早くて良かったー」

 お互い言い合った後、少し離れて見つめ合う。
 お互い顔がほころんで、なんだかすごく、幸せな気分。
 

「ほんとはこのまま、色々触りたいとこだけど……」
「ん」

 ちゅ、と頬にキスされて、見つめられる。


「大丈夫、じいちゃんちでは何もしないからって、さっきじいちゃんに言ったしなぁ……」


 その言葉に、えっと目を見開いたオレ。

「あ、えっ、さっき、希生さんに何か言ってたの、それ?」
「そう」
「ええええーもー玲央ってばーなんか恥ずかしいよー」
「何が?」
「だって、普段はしてるって、言ってるみたいだし」

 そう言うと、玲央はクスクス笑って、オレの頬をすりすり触れる。


「オレがしてないとは思ってないから、一緒」
「……そんなこと言ってもー」

 そういうことじゃないようなー?と困ってると、玲央は可笑しそうに笑った。




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